↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第七章 勇者地固め編・貴族動乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

183/284

第172話 ケイカ村の宴(第七章エピローグ)

 ケイカ村の夜。

 日が暮れると一段と寒さが身に染みる。

 俺は和服の前を合わせつつ、道を急いだ。


 向かう先は旅館。

 外の寒さとは裏腹に、浮かれたような華やかな雰囲気があった。

 侯爵がやってきたので、宴会が開かれていた。

 


 旅館に入る。

 大広間では、侯爵一行とケイカ村の人々が酒を酌み交わしていた。

 もちろん、獣人たちもいる。

 

 大広間正面の舞台では、人魚のクリスティアと、クラゲ子供のマーリンとプルラが合唱していた。

 綺麗な三重奏の歌声は、波のように静かに優しく、時には荒々しく。

 宴の空気を盛り上げた。



 俺は侯爵のところへ行く。

 手には料理長のクラリッサに作らせた特別な料理を持っていた。


 宴会場の一番奥、エトワールや元村長などがいるビップ待遇の場所。

 侯爵は血のように赤いワインの入ったグラスを傾けていた。

「ケイカか。遅かったな」

「ちょっと作るのに手間がかかってな」

「ほう?」

 俺は侯爵の前にソーセージを置いた。赤黒い色をしている。

 作りたてなので湯気が立ち昇っていた。


 侯爵は、ふむっと頷いて一本摘んだ。

「これがケイカの言っていた、我輩を楽しませられる食べ物か? 色が悪いだけの腸詰めではないか」

「まあ、食べてみろ」


 侯爵は犬歯の伸びた口で、パリッと小気味良い音を立てソーセージにかじりついた。 

 一口かんだ瞬間、侯爵が目を見開いた。

「んんっ! この濃厚な血の味! なんだ、これは!」

「ブルートブルスト。家畜の血をレバーやハーブとともに腸に詰めて茹で上げたソーセージだ。血は凝固するからな」


「そのような方法があったのか! この生臭い香り、たまらぬうまさだ!」

 侯爵は顔を輝かせて、ソーセージを食べた。すぐに食べ終えて2本目へと手を伸ばしていた。

「基本的には貧しい庶民の食べ物だからな。侯爵は食べたことがないだろうと思っていた」

「くっ……っ! 庶民の暮らしまで知り尽くしておるとは! さすがケイカ、ただものではないな!」



 俺はにやりと笑う。

「ふふん、俺の勝ちだな」

「むう……よかろう。しかし! 我輩に教えたことを必ずや後悔させてやろう! この次、我が領地を訪れた時は、血の饗宴を見るであろう! ふははっ!」

「本気で血ばかりの料理を出されても困るぞ」

 俺は顔をしかめて言ったが、侯爵は酒に酔っているのか、少し赤い顔をしながら高らかに笑うばかりだった。



 隣に座るエトワールが言う。背の開いたドレスを着ていた。さすが王女だけ会って気品を感じさせる。

「侯爵さまも領地経営にはなかなかの手腕を発揮しているようですわ。いろいろ勉強になりました」

「いやいや、ケイカの悪辣さには舌を巻いた。我輩も負けてばかりはおられん! 必ずや越えてみせよう!」

「おー、頑張ってな」

 別に俺は極悪でも悪辣でもないはずだ。

 言葉は悪いが、侯爵の視点から絶賛されているので苦笑いするしかない。



 ――と。

 ぐにゃ、と背中に柔らかな感触が押し付けられた。

 耳元に熱い息がかかる。

「ねぇ、ケイカぁ。アタシって、そんなに魅力ない~?」

 サキュバスのステラだった。

 酔いが回っているのか、半脱ぎの和服姿のまま俺にしなだれかかってくる。火照った肢体が艶かしい。


「どうした、ステラ? 酔ってるようだな」

「もうさぁ。夜が寂しくて大変よぉ。添い寝でもいいからしにきてよぉ」

「寂しいなら、彼氏でも作ったらどうだ?」

 俺が言うなり、かぷっと耳たぶを甘噛みしてきた。

「やー! アタシの始めては勇者じゃなきゃ、ダメなのー!」

「そういうこと、でかい声で言うな」


 侯爵がワイングラスをくゆらせながら笑う。

「ふんっ。サキュバスを色仕掛けで落とすとは、さすがケイカだな。並の男には真似できまい」

「まあ、勇者の評判を落とすようなことはできないからな」

 信者獲得が第一だから。


 するとステラが、ふーっと熱いと息を耳に吹きかけてきた。

「何でアタシと寝たら、悪評が立つのさ~! むしろ英雄的行為じゃんっ! どんなに凄いプレイ内容だったか、みんなに説明して回ってあげるんだから!」

「余計ダメだ」

「ぶふ~」

 ステラは頬を膨らませつつ、酒を飲んだ。


 エトワールが吐息を漏らしながら言った。

「ステラさん、少しはしたないですわよ」

「なによ~? 嫉妬しちゃってんの? エトワールもケイカを好きなんだから、ぐいぐいいかなきゃっ! あの金髪に勝てないよん。特にあの胸に」

「す、好きだなんてっ……アタクシは勇者さまとして尊敬しているだけで……」

 エトワールは耳まで赤くなって、わたわたと手を振った。ウェーブのかかった赤い髪が慌ただしく揺れる。


 するとステラがぬるりと動いた。俺から離れてエトワールへ這い寄る。

「え、ちょっとっ」

「今さら取り繕ったって、昔はひどかったの知ってるんだからぁ~」

 ステラが華奢な肢体に絡みつく。エトワールの気品のあるドレス姿が乱れて柔らかな曲線が露わになる。


「な、なにをするのよっ! ――た、助けてくださいませ、ケイカさまっ」

「まあ、無礼講だから構わないだろう」

「そ、そんなぁ~! ひゃあっ!」

「ここかな? ここもでしょ?」

 ステラに全身をまさぐられて、エトワールはか細い悲鳴を上げて身をよじった。ドレスがますます乱れて、白い肌がのぞく。ささやかな胸が見えそうになっていた。


 侯爵が顔をしかめる。

「これだから夜魔はけしからんな。貴様の親父とやってる事は変わらん」

「ぶふ~。ケイカへの気持ちをプッシュしてあげてるだけじゃん」

 ステラは手を止めて不満そうに頬を膨らませた。父親と似てるという言葉がイヤだったらしい。



 俺は疑問に思ったので尋ねる。

「エトワールを襲って手助けになるのか?」

「ケイカの目を釘付けにできたでしょ? ライバルは多いほうが楽しくなるってものだし!」


「サキュバスの考えはわからないな」

「別に考えすぎたって意味ないじゃん。まずは行動しなきゃ、何もしないのとおんなじよん」

 ステラはエトワールのドレスの中に手を入れながら答えた。

 しなやかに動く指先を必死に捕まえようとするエトワールだったが、ステラの動きは巧みで止められない。

 エトワールは食い縛った歯の隙間から「あぁっ、だめっ」と、か細い喘ぎ声を漏らした。



「言ってることは分かるが、その行動はどうかと思うぞ――まあ、ステラは侯爵と同じぐらい人生を楽しんでそうだ」

「とーぜん! 結局、自分を一番楽しませられるのは自分だと思う! そりゃ、素敵な異性もいいけどさ~。過程も楽しまなきゃ損じゃん!」


 しかし侯爵は顔をしかめた。

「不埒な小娘と同列に扱うでない! 我輩はこの世を死よりも恐ろしい地獄に変えるという、おぞましい目標を掲げておるのだ! 今回の村訪問でさらなる恐怖を与える方法を思いついたぞ、くくくっ」

「ほう、どんな方法だ?」


「良くぞ聞いてくれたケイカよ! 独身の男女は別々の場所に住まわせる! 風呂は混浴を廃止し男女別別に入らせる! 付き合う場合もなしくずし的にはさせず、しっかりとお互いの意思を確認させてから認可して付き合わせる! 早く仲良くなりたいのになれない、生き地獄を味あわせてやる、ふははははっ!」

 侯爵は胸を反らして高笑いした。宴会場に小気味良く響く。


「それって――」

 ステラが言いよどんだ。言葉の続きは高笑いする侯爵の耳には入らなかった。

 まさぐられて喘ぐエトワールも聞いていない。

 ただ俺だけはしっかり聞き取った。

『たんにモラルを向上させてるだけじゃん』と。

 ――なんか、侯爵の村がどんどん進化していくな。いつか本当に、聖君と呼ばれる日も来るかもしれないな。ヴァンパイアなのに。



 侯爵の高笑いに反応してか、大広間のどこからか「恐ろしいです侯爵さま!」という村人の叫びが聞こえた。

「ケイカさまもすごいぞ!」「ケイカさま、ばんざい!」「侯爵さま、エトワールさま、ばんざい!」

 酒の勢いのためか、万歳コールが巻き起こった。


 その後も賑やかな宴は続き、夜遅くになって、お開きとなった。


       ◇  ◇  ◇


 星空の下。

 深夜の村道を歩いて、セリカとともに屋敷に帰る。

「それではケイカさま、おやすみなさいませ」

 彼女は一礼すると、自分の部屋へ戻っていこうとする。


 俺はその背を呼び止めた。

「セリカ、ちょっと待った」

「なんでしょう?」

 セリカが金髪を広げて振り返った。


「今度、新しい客が屋敷に住むことになった」

「え? どなたでしょう?」

「海邪神のリヴィアだ」

「まあ! 危なくはないのでしょうか?」

「俺がいないと生きていけない状態だから大丈夫だ。それより――」

「はい」


「リヴィアの部屋がないから、今のセリカの部屋をリヴィア用とする。セリカは俺の部屋で寝るといい」

 セリカは口に手を当てて息を飲むなり、なだらかな頬を赤く染めた。

「そ、それは、一緒に住む、ということでしょうか?」

「嫌か?」

 俺が問いかけると、セリカは上目遣いになって、う~と唸った。


「そんなはずはありません……言わせるなんて、ずるいですわ」

「じゃあ、決まりだな。荷物を持ってくるんだ」

「わかりました、ケイカさま」

 セリカはそそくさと部屋へ戻っていった。


 ――というか、リヴィアはどこまで行ったんだ?

 まだ戻ってきていなかった。

 儀式の中止なんて時間がかかるものだろうか?

 やはり手元に置いて、監視する必要があるなと思った。



 俺は自室に入ってベッドへ横たわる。

 セリカは急いで自室に戻り、荷物を簡単に纏め上げて俺の部屋へ来た。

 荷物を適当に置くと、耳まで真っ赤に染めて言う。

「……ふつつかものですが、よろしくお願いします」

「気にするな。いつもどおりだろ?」

「そうですね、最初の頃はずっと二人きりでしたから……」


 俺はベッドの横を、ぽんぽんと叩いた。

「今日はもう遅い。寝るぞ」

「はい……」

 セリカは衣擦れの音をさせてゆるゆると上着を脱ぎ、ベッドの中へ入ってきた。


 手を伸ばし、華奢な肢体を抱き締める。引き締まった体だけれど、なだらかな曲線を感じさせる。

「夜中に、こうするのも久しぶりだな」


「あうぅ……寝られなくなります、ケイカさま」

 セリカは、か細い声で喘ぎながら言った。

 大きな胸が震えるように弾む。温かな感触。密着した肌に心地よい。


「俺は慣れたから大丈夫だ。――おやすみ」

「……ずるいですっ!」

「わかった。寝かせてやる」

 言い終わるなり、柔らかな体をぎゅっと抱き締めたら「ひゃあっ」と可愛らしい声を上げて、セリカはぐったりと動かなくなった。


「……セリカ?」

 弛緩した体を優しく撫でる。大きな胸に細い腰。すらりとした足に指先を這わせる。

 しかし反応がない。


「予想より早すぎるんだが……まあ、いいか」

 俺は抱き枕に絡みつくように、ぎゅっと抱き締めた。

 びくっと、彼女の体が無意識に震える。


 寒い冬の夜に、彼女の体温が心をとても落ち着かせてくれた。

 賑やかな宴の後だけに、静寂が心地よい。

 ――やっぱり傍にいてくれるのはセリカが一番だな。


 そんな事を考えながら、俺も夢路へと旅立っていった。



  第七章・貴族動乱編 終

------------------------------

【ステータス】

名 前:蛍河比古命

性 別:男

年 齢:?

種 族:八百万神

職 業:神

クラス:勇者 剣豪 神法師

属 性:【浄風】【清流】【光】


【パラメーター】

筋 力:169万8400(+15万+2万9200+146万9200)

敏 捷:164万1400(+8万+2万2200+146万9200)

魔 力:179万3600(+22万+1万4400+146万9200)

知 識:160万3700(+10万+1万4500+146万9200)

信者数:約2万2002(ラ1+セ1+{光200+ナ100+エ500+処2000+普7300})

{}内:100万+10万+15万+20万+1万9200=146万9200


生命力:1669万9000

精神力:1698万6500


攻撃力:339万6800

防御力:328万2800

魔攻力:358万7200

魔防力:320万7400


【スキル】(ケイカの魔法や技は省略)

  回復(キュア):味方を回復させる。

  幻惑(ブラード):体をぼやけさせて攻撃を当たりにくくする。

 雷火破(サンダーフレイム):火と雷の混合魔法。小範囲。

  魔消(サイレント):魔法を封じる。

雷炎光破(ライトニングブレイズ):炎と雷の混合魔法。中範囲。

真空爆光(ソニックフレア):空間を圧縮して爆発させる。光属性の範囲攻撃。

 全回復(オーヒール):最大HP分を回復させる。


【勇者スキル】

 無効一閃《マグヌスウェーブ》:光の波動を飛ばして効果を打ち消す。敵に使用すると能力上昇効果を打ち消し。味方に使用すると能力低下効果を打ち消し。

 聖導切り《ジャスティススラッシュ》:正しいものは傷つかず、悪いものだけ切る。魔族へのダメージ2倍。

【慈愛聖域《アルテマガーデン》】自分とパーティーの周囲に絶対安全地帯を作る。敵攻撃無効。味方移動&技発動不可。味方HP半快。


【パッシブスキル】

妖精の加護:即死無効 状態異常無効 幸運+30% 妖精界移動許可


【装 備】

武 器:神威の太刀  攻2倍 魔攻2倍

防 具:神衣の紺麻服 防2倍 魔防2倍

    神木の下駄  行動時敏捷2倍 鼻緒が切れない 勝手に脱げない

装身具:水守のひょうたん たくさん水が入る 腐らない 聖水になる

第七章終わりです。時間かかり過ぎました。

第八章のプロットは難航しているので、少し時間をください。

ケイカのステ数値はもう合ってる自信がないので、だいたいこんな感じとお考えください。

それでは、また。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GAノベルより1月15日に3巻発売します!
何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
勇者のふりも楽じゃない
勇者のふりも楽じゃない書籍化報告はこちら!(こちらはまだ一巻)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。