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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第七章 勇者地固め編・貴族動乱

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第148話 百獣王ミーニャ!

本日2話目。

 俺は城門をくぐって砦の外へ出た。

 そこには千人以上の見物客が集まり、輪を作っていた。

 中には倒された獣人たちが寝転がり、その中心には巫女服を着たミーニャが顎をあげて佇んでいた。

 風が白衣と黒袴を揺らしていく。


 ミーニャが見つめるのはただ一人。

 同じ輪の中にいる青年だった。

 肌は鱗に覆われて、背中には竜の翼を持つ。尻尾もある。

 《真理眼》で見た。

--------------------

【ステータス】

名 前:シャンドラ

性 別:男

年 齢:48

種 族:貴竜人族

職 業:竜人族族長

クラス:剣豪Lv70 幻獣Lv48 魔法使いLv31

属 性:【風】【火】


【スキル】

剣士・剣豪のスキル


【竜技】

竜咆哮:各種属性の息を生み出す。

高速飛行:空を飛ぶ。翼が必要。

竜轟牙(ドラゴンスラッシュ):攻撃に竜の力を乗せる。

竜撃(ドラゴンドライブ):一定時間肉体に竜の力を宿して攻撃する。


肉体強化(ハイパワー)

限界突破(リミットブレイク)

--------------------

「ほう。竜のスキルを持つのか」

 見た目よりも年を取っている。長命な種族なのかもしれない。

 倒れた獣人たちが観客によって運び出された。



 シャンドラが剣を抜きながら言う。

「百獣王に挑戦する資格を持つ猫の娘よ。覚悟は出来ているか?」

「いつでも。私は、負けない。ケイカお兄ちゃんのために」

「よかろう。貴殿の力、試させてもらおう」

 その言葉が終わらないうちにミーニャが動いた!

 迅速な先制攻撃。


 シャンドラがバサッと翼を広げた。剣を顔の横の高さで構える。

 地を蹴って駆け出したミーニャに、切っ先を向ける。

「喰らえ! ――竜咆哮《ドラゴンブレス》!」


 ゴゥッ!

 剣から炎が噴き出した。火炎放射のように横へ伸びてミーニャを襲う。

 ――ブレスは口じゃなく剣から出せるのか。


 直進していたミーニャに直撃する!

「にゃぁっ!」

 苦しげな彼女の悲鳴。両肩を抱くように体を丸める。


 さらにシャンドラはその場で剣を振り下ろして追撃した。

 鋭い牙のような衝撃波が生まれて地面を割りながら直進する!

 ――竜轟牙(ドラゴンスラッシュ)か。

 燃えるミーニャを肩から腰まで切り裂いた。



 ――が、しかし!

 突然シャンドラが横に吹き飛ばされる!


 ミーニャの蹴りだった。白衣がたなびき、黒袴からすらりとした脚がのぞく。

 舞闘師スキルの【不思議舞】による幻影で惑わし、盗賊スキルの【隠密】で気配を立って隙を突いたのだった。

 


 俺の横にいたマハルが驚愕の声を上げる。狐の尻尾がブワッと膨らむ。

「な、なんという速さ! 私が戦ったときとは桁違いの強さだっ! この短期間でいったいどうして……」

 11万匹のアンデッド倒して一気にLvアップしたからな。


「まあ、それだけ勇者の冒険は過酷だってことだ」

「そうですか……さすがですね。ケイカさまも、みなさんも」

 マハルは戦いを眺めながらしみじみと呟いた。



 一方的な決闘が始まっていた。

 ふらついたシャンドラにミーニャがしなやかに襲い掛かる。

 包丁二刀流から生み出される、滝のように流れる乱れ斬り。

 シャンドラは竜の力をたびたび放って猫を追い払おうとするが、紙一重でかわされていた。

 一撃は強いが隙が大きい。


 技を外した隙を突かれて、突きや蹴りを打ち込まれる。

 皮膚の鱗がとても硬くて傷が付くだけだが、蹴りの打撃は内部に届く。

 ただでさえ速さが違うのに、ダメージが溜まってますます動きが遅くなっていく。



「くっ!」

 シャンドラが最後とばかりに、顔を苦しげにゆがめつつ、持てる力のすべてを込めて剣を振った。

 ミーニャは踊るような体捌きで、彼の剣に包丁を合わせる。


 キィンッと澄んだ音がして、シャンドラの持つ剣が根元から折れた。

 超震動包丁の武器スキル【武器破壊】が成功したようだ。


 折れた刀身がくるくると回りながら弧を描き、シャンドラの後方に突き刺さった。

 ミーニャは素早くもう一方の包丁を彼の喉元に突きつけた。


 シャンドラが、首を振った。

「私の負けだ。剣を下げよ」

「わかった」

 ミーニャは素直に包丁を腰の鞘に戻す。

 無表情だが、尻尾は嬉しそうにゆらゆらと揺れていた。


 シャンドラは手をミーニャの額に当てる。

「すべての獣人を従えし猫、ミーニャよ。これより百獣女王……いや、百獣王姫のほうが良いか」

「ん。姫がいい」

 ミーニャが答えたとたん、彼女の体が光った。

--------------------

【ステータス】

名 前:ミーニャ

種 族:猫人族

職 業:神楽剣舞巫女(上級) 百獣女王(上級)

クラス:舞闘師Lv59 盗賊Lv29 料理士Lv47 

属 性:【静嵐】

所 属:勇者ケイカパーティー


パッシブスキル【百獣王の威光】すべての獣人が従う。能力値上昇。

称号【百獣王姫】獣人族を統べる証。王や女王に変更可。

--------------------

 上級職なのか。

 さらに強くなっていた。 



 シャンドラはミーニャに尋ねる。

「さて、百獣王になってどうする? 国を作るか?」

 ミーニャは首を振った。黒髪がサラサラと流れた。

「頑張ったのは――来て、ケイカお兄ちゃん」

 ミーニャが手招きしたので、俺は輪の中へ入っていった。


 隣に立つとミーニャが言う。

「獣人たちにケイカお兄ちゃんを信じさせる。いずれ神様にする」


 シャンドラは頷く。

「なるほど。勇武神にさせるのが願いか。勇者のために生きるというのだな」

「そう。大切な人のためだから、私は強い。誰にも文句、言わせない――それで、ケイカお兄ちゃん……」

 ミーニャが心なしか切ない声で言った。



 おや? と思って顔を向けると、ミーニャが背伸びをして俺の首に腕を回してきた。

 近付いて来る黒い瞳と可愛らしい顔。

 ミーニャは背伸びをして、俺の唇に赤い花弁のような唇を重ねてきた。


 果実のように柔らかく、湿っている体温。

 細い腰に腕を回して、不安定なミーニャを支えた。

 猫のように柔らかな体がぴったりと密着する。服を通して、ミーニャの心臓の鼓動が伝わってきた。


 ミーニャはそっと唇を離すと、俺にしなだれかかったままシャンドラへ言った。 

「ケイカお兄ちゃんが私のすべて。――わかる?」



 シャンドラが頷くと、声を張り上げる。

「80年ぶりに百獣王の誕生である。皆のもの、新たな若き姫と勇者に従え。獣人たちに幸あらんことを!」 

「「「おおおおお!」」」

 空が割れんばかりの喝采が起きる。

 

 ミーニャが俺の胸に顔を埋めたので、喉元に尖った猫耳が触れた。ピッピと動くのでくすぐったい。

 そして、溜息のように小さな声で呟いた。

「ようやく……ケイカお兄ちゃんの役に立てた……」


 彼女の華奢な体に両手を回して抱き締める。

「いいや、今までだってずっと役立ってくれてたよ。よく頑張ったな。ありがとう、ミーニャ。それでこそ俺の――」

「俺の――2番目?」

 胸元から見上げる黒い瞳が、じーっと俺を見つめる。


 艶やかな黒髪を撫でつつ微笑む。

「みんな一番だ」

「それ、ずるい。でも、これでセリカに並んだ……ケイカお兄ちゃん」

「ん?」

「……好き」

 ぎゅっと抱きついてきた。

 俺が抱き締めてやると、尻尾が嬉しそうに、ぱたり、ぱたり、と足を叩くように揺れた。



 周りの喧騒はますます激しく。

 獣人たちは俺とミーニャを王と妃のように称える。


 そんな中、妙に甘えてくるミーニャを撫でて抱き締めた。顔をこすりつけ、喉をゴロゴロと鳴らしてくる。

 細く引き締まった肢体が健康的なだけに、崩れた姿態に色気があった。


 百獣王になることができて興奮しているのかもしれない。

 ――回りに関係を見せ付けるという意味もあるか。

 王女のセリカと並び立つ地位になれたことも影響してそうだ。


「百獣王になってまで俺の信者を増やそうとしてくれて。偉いぞ、ミーニャ」

「ん。だったら、もっと――」

 ミーニャが背伸びしてまた可愛らしい唇を差し出すようにしてきた。子供のように浅いキス。

 今日だけはと思いつつ、腰に手を回して抱えるように優しく応えてやった。



 その後、獣人地区は独立を宣言して、俺とミーニャの保護下となった。

 ――そして獣人たちに信奉されたことにより【信者数】1万人を越えた。

 【剣豪】だったスキルが【剣聖】へと変化した。


 ついに1万の大台か。

 魔王を倒すのに必要な信者数は3万だったか、5万だったか。

 日々増え続けているから、あと9ヶ月ぐらいもあるなら、なんとかなりそうな気がしてきた。

 ただ油断は出来ない。

 もっと増やせるよう頑張ろう。


 そんなことを思いながら、俺はケイカ村へと帰った。

「第11話 挑戦! 試練の塔(1層目・前編)」を改稿しました。

 この変更による話の影響はありません。ちょっとだけコミカルにもふもふしてみただけです。

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GAノベルより1月15日に3巻発売します!
何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
勇者のふりも楽じゃない
勇者のふりも楽じゃない書籍化報告はこちら!(こちらはまだ一巻)
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