第148話 百獣王ミーニャ!
本日2話目。
俺は城門をくぐって砦の外へ出た。
そこには千人以上の見物客が集まり、輪を作っていた。
中には倒された獣人たちが寝転がり、その中心には巫女服を着たミーニャが顎をあげて佇んでいた。
風が白衣と黒袴を揺らしていく。
ミーニャが見つめるのはただ一人。
同じ輪の中にいる青年だった。
肌は鱗に覆われて、背中には竜の翼を持つ。尻尾もある。
《真理眼》で見た。
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【ステータス】
名 前:シャンドラ
性 別:男
年 齢:48
種 族:貴竜人族
職 業:竜人族族長
クラス:剣豪Lv70 幻獣Lv48 魔法使いLv31
属 性:【風】【火】
【スキル】
剣士・剣豪のスキル
【竜技】
竜咆哮:各種属性の息を生み出す。
高速飛行:空を飛ぶ。翼が必要。
竜轟牙:攻撃に竜の力を乗せる。
竜撃:一定時間肉体に竜の力を宿して攻撃する。
肉体強化
限界突破
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「ほう。竜のスキルを持つのか」
見た目よりも年を取っている。長命な種族なのかもしれない。
倒れた獣人たちが観客によって運び出された。
シャンドラが剣を抜きながら言う。
「百獣王に挑戦する資格を持つ猫の娘よ。覚悟は出来ているか?」
「いつでも。私は、負けない。ケイカお兄ちゃんのために」
「よかろう。貴殿の力、試させてもらおう」
その言葉が終わらないうちにミーニャが動いた!
迅速な先制攻撃。
シャンドラがバサッと翼を広げた。剣を顔の横の高さで構える。
地を蹴って駆け出したミーニャに、切っ先を向ける。
「喰らえ! ――竜咆哮!」
ゴゥッ!
剣から炎が噴き出した。火炎放射のように横へ伸びてミーニャを襲う。
――ブレスは口じゃなく剣から出せるのか。
直進していたミーニャに直撃する!
「にゃぁっ!」
苦しげな彼女の悲鳴。両肩を抱くように体を丸める。
さらにシャンドラはその場で剣を振り下ろして追撃した。
鋭い牙のような衝撃波が生まれて地面を割りながら直進する!
――竜轟牙か。
燃えるミーニャを肩から腰まで切り裂いた。
――が、しかし!
突然シャンドラが横に吹き飛ばされる!
ミーニャの蹴りだった。白衣がたなびき、黒袴からすらりとした脚がのぞく。
舞闘師スキルの【不思議舞】による幻影で惑わし、盗賊スキルの【隠密】で気配を立って隙を突いたのだった。
俺の横にいたマハルが驚愕の声を上げる。狐の尻尾がブワッと膨らむ。
「な、なんという速さ! 私が戦ったときとは桁違いの強さだっ! この短期間でいったいどうして……」
11万匹のアンデッド倒して一気にLvアップしたからな。
「まあ、それだけ勇者の冒険は過酷だってことだ」
「そうですか……さすがですね。ケイカさまも、みなさんも」
マハルは戦いを眺めながらしみじみと呟いた。
一方的な決闘が始まっていた。
ふらついたシャンドラにミーニャがしなやかに襲い掛かる。
包丁二刀流から生み出される、滝のように流れる乱れ斬り。
シャンドラは竜の力をたびたび放って猫を追い払おうとするが、紙一重でかわされていた。
一撃は強いが隙が大きい。
技を外した隙を突かれて、突きや蹴りを打ち込まれる。
皮膚の鱗がとても硬くて傷が付くだけだが、蹴りの打撃は内部に届く。
ただでさえ速さが違うのに、ダメージが溜まってますます動きが遅くなっていく。
「くっ!」
シャンドラが最後とばかりに、顔を苦しげにゆがめつつ、持てる力のすべてを込めて剣を振った。
ミーニャは踊るような体捌きで、彼の剣に包丁を合わせる。
キィンッと澄んだ音がして、シャンドラの持つ剣が根元から折れた。
超震動包丁の武器スキル【武器破壊】が成功したようだ。
折れた刀身がくるくると回りながら弧を描き、シャンドラの後方に突き刺さった。
ミーニャは素早くもう一方の包丁を彼の喉元に突きつけた。
シャンドラが、首を振った。
「私の負けだ。剣を下げよ」
「わかった」
ミーニャは素直に包丁を腰の鞘に戻す。
無表情だが、尻尾は嬉しそうにゆらゆらと揺れていた。
シャンドラは手をミーニャの額に当てる。
「すべての獣人を従えし猫、ミーニャよ。これより百獣女王……いや、百獣王姫のほうが良いか」
「ん。姫がいい」
ミーニャが答えたとたん、彼女の体が光った。
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【ステータス】
名 前:ミーニャ
種 族:猫人族
職 業:神楽剣舞巫女(上級) 百獣女王(上級)
クラス:舞闘師Lv59 盗賊Lv29 料理士Lv47
属 性:【静嵐】
所 属:勇者ケイカパーティー
パッシブスキル【百獣王の威光】すべての獣人が従う。能力値上昇。
称号【百獣王姫】獣人族を統べる証。王や女王に変更可。
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上級職なのか。
さらに強くなっていた。
シャンドラはミーニャに尋ねる。
「さて、百獣王になってどうする? 国を作るか?」
ミーニャは首を振った。黒髪がサラサラと流れた。
「頑張ったのは――来て、ケイカお兄ちゃん」
ミーニャが手招きしたので、俺は輪の中へ入っていった。
隣に立つとミーニャが言う。
「獣人たちにケイカお兄ちゃんを信じさせる。いずれ神様にする」
シャンドラは頷く。
「なるほど。勇武神にさせるのが願いか。勇者のために生きるというのだな」
「そう。大切な人のためだから、私は強い。誰にも文句、言わせない――それで、ケイカお兄ちゃん……」
ミーニャが心なしか切ない声で言った。
おや? と思って顔を向けると、ミーニャが背伸びをして俺の首に腕を回してきた。
近付いて来る黒い瞳と可愛らしい顔。
ミーニャは背伸びをして、俺の唇に赤い花弁のような唇を重ねてきた。
果実のように柔らかく、湿っている体温。
細い腰に腕を回して、不安定なミーニャを支えた。
猫のように柔らかな体がぴったりと密着する。服を通して、ミーニャの心臓の鼓動が伝わってきた。
ミーニャはそっと唇を離すと、俺にしなだれかかったままシャンドラへ言った。
「ケイカお兄ちゃんが私のすべて。――わかる?」
シャンドラが頷くと、声を張り上げる。
「80年ぶりに百獣王の誕生である。皆のもの、新たな若き姫と勇者に従え。獣人たちに幸あらんことを!」
「「「おおおおお!」」」
空が割れんばかりの喝采が起きる。
ミーニャが俺の胸に顔を埋めたので、喉元に尖った猫耳が触れた。ピッピと動くのでくすぐったい。
そして、溜息のように小さな声で呟いた。
「ようやく……ケイカお兄ちゃんの役に立てた……」
彼女の華奢な体に両手を回して抱き締める。
「いいや、今までだってずっと役立ってくれてたよ。よく頑張ったな。ありがとう、ミーニャ。それでこそ俺の――」
「俺の――2番目?」
胸元から見上げる黒い瞳が、じーっと俺を見つめる。
艶やかな黒髪を撫でつつ微笑む。
「みんな一番だ」
「それ、ずるい。でも、これでセリカに並んだ……ケイカお兄ちゃん」
「ん?」
「……好き」
ぎゅっと抱きついてきた。
俺が抱き締めてやると、尻尾が嬉しそうに、ぱたり、ぱたり、と足を叩くように揺れた。
周りの喧騒はますます激しく。
獣人たちは俺とミーニャを王と妃のように称える。
そんな中、妙に甘えてくるミーニャを撫でて抱き締めた。顔をこすりつけ、喉をゴロゴロと鳴らしてくる。
細く引き締まった肢体が健康的なだけに、崩れた姿態に色気があった。
百獣王になることができて興奮しているのかもしれない。
――回りに関係を見せ付けるという意味もあるか。
王女のセリカと並び立つ地位になれたことも影響してそうだ。
「百獣王になってまで俺の信者を増やそうとしてくれて。偉いぞ、ミーニャ」
「ん。だったら、もっと――」
ミーニャが背伸びしてまた可愛らしい唇を差し出すようにしてきた。子供のように浅いキス。
今日だけはと思いつつ、腰に手を回して抱えるように優しく応えてやった。
その後、獣人地区は独立を宣言して、俺とミーニャの保護下となった。
――そして獣人たちに信奉されたことにより【信者数】1万人を越えた。
【剣豪】だったスキルが【剣聖】へと変化した。
ついに1万の大台か。
魔王を倒すのに必要な信者数は3万だったか、5万だったか。
日々増え続けているから、あと9ヶ月ぐらいもあるなら、なんとかなりそうな気がしてきた。
ただ油断は出来ない。
もっと増やせるよう頑張ろう。
そんなことを思いながら、俺はケイカ村へと帰った。
「第11話 挑戦! 試練の塔(1層目・前編)」を改稿しました。
この変更による話の影響はありません。ちょっとだけコミカルにもふもふしてみただけです。




