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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第六章 勇者冒険編・北(仮)

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第128話 温泉の手触り!

 ケイカ村の温泉設備が完成したので、俺は屋敷に帰った。足取りが軽い。


 廊下で出会ったセリカが不思議そうに尋ねてきた。

「どうされました、ケイカさま? とても楽しそうですが」

「セリカ、喜べ。温泉に入れるようになったぞ」

「まあ、本当ですか!? ドラゴンさまのところで入ったお風呂ですよね」

「そうだ。かなり効果の高い温泉だ。一緒に入るか?」

「え!? そ、そんな……あっ!」

 セリカがはっと息を飲む。


「どうした?」

「わ、わかりました。一緒に入らせてもらいます」

 顔を真っ赤にして答えるセリカ。

 ――あれ、冗談だったのに。

「まあまあ無理しなくていいからな」



 俺はタオルなどを用意をして風呂に向かった。

 食堂から渡り廊下で裏庭の風呂へと行く。

 脱衣所で和服を手早く抜いて、中へ入る。


 浴室は湯気で白く霞んでいた。

 湯船の隅にミニチュアのドラゴン石像があり、牙の並ぶ口から、どぉぉっ! と白い湯気と激しい流れを迸らせていた。

「おーすごい湯気だ……少し薬品臭い……しかもこれ、60度ぐらいありそうだな。気をつけないと」

 俺とラピシアは大丈夫でも、他の人たちが茹でダコになったら洒落にならない。


 温度調節をしてからお湯の流入を減らした。ハーヤ製の魔道具なので、かなり便利に作られている。ドラゴンの右目を押せばちょろちょろと出る。左目を押せば止まる。

 両目を目潰しするように押すと、最初のように大量に出る。手間がかかるのは誤作動による火傷防止のためであり、よく考えられていると思うが、毎回目潰しされるドラゴンが可哀想でもある。



 体に湯をかけ、体を洗う。

 少しぬるぬるしたお湯。温泉独特の香りがする。

 石鹸が泡立たない。

 おお、思ったとおり成分の高い、良質な温泉だ。


 洗い終わって石鹸を流すと湯船に入った。

 6人ぐらい入れる広い浴槽。

 温泉は少し濁っている。


 湯船へ寝そべると、肌よりも体の芯から温まった。

 じわじわと体がほぐれていくような安らぎを感じる。



 ――と。

 脱衣所で衣擦れの音がした。

 本当にセリカがやってきたらしい。

 嫌がられるかと思ったのに、意外と大胆だ。


 扉が開いて、大きなタオルを巻いて体を隠したセリカが入ってきた。

 湯気の向こうに見え隠れする白い肌。金色の髪。

「来ました、ケイカさま……この香り、本当に温泉なんですね」

「病院や旅館でも提供するつもりだが、入るのは俺たちが一番だ」

「ありがとうございます、ケイカさま」


 セリカは背を向けて洗い場に座った。

 背中まである金髪を洗う。濡れた髪が美しく光る。

 張りのある肌が水を弾いていた。

「あ、あまり見ないでくださいませ」

「ああ、すまん。あまりに綺麗だったから」

「もうっ、ケイカさまったら……」

 頬を染めてうつむくセリカ。


 俺は背中を向けた。

 壁は木の板。何の装飾もない。

 富士山でも書けばよかったな。



 そんな事を考えていると、後ろでタオルを取る音がした。

 ざあっと水が流され、体を洗う音がする。

 華奢だけど胸だけは大きなセリカが、全裸で体を洗っている。

 水に濡れた肢体はどれだけ美しいだろうか。

 千里眼を使おうかと思ったが、やめにした。


 洗い終わって、湯船へと足音が近付いて来る。

「……では、入らせていただきます」

 ちゃぷっと水に浸かる音。

 もういいだろうと思い、振り返った。



 肩まで沈めている。頬を染めて微笑むセリカ。恥ずかしいのか、温泉の湯に当てられて上気したのか。

 華奢な首や細い腕が、いつもより綺麗に見える。

 温泉で洗われた金髪は、輝くように光っていた。


「どうだ、温泉は?」

「はい、とても気持ちがいいです。肌がすべすべになっていますわ」

「いつも以上にか? ――どれ」

 俺は湯船の中を移動してセリカの手を掴んだ。

 グイッと引き寄せる。


「きゃっ」

 すぐ隣までセリカが来た。勢い余って俺へ倒れ込むような形になる。

 肌と肌が触れ合った。確かになめらか。絹よりもすべすべした肌になっていた。

 大きな胸が圧し掛かるように潰れる。押し付けられる柔らかさ。



 ――が。

「こ、これは、水着!」

 セリカはドルアースで買った、ビキニタイプのセーラー水着を着ていた。

 紺の襟とスカート、赤いネクタイが湯の中で揺れている。白いビキニが大きな胸を隠している。ビキニタイプなのでお腹や背中は大きく開いていた。

「はい。ケイカさまが買うように言われた水着です。このためだったのですね」

「えっ!? ――ああ、まあな」

 温泉では裸のお付合いが普通だろうと思ったが、言葉を飲み込む。


 セリカが俺へもたれながら、感心した声で言う。

「この季節に水着を買われるなんて、いったいどういうお考えだろうと思っておりましたが、まさか一緒に入るためだったとは。さすがです、ケイカさま。この水着可愛いですし、一緒に入れるのは嬉しいです」

「そうだな。俺も楽しい」

「大切にしますね」

 隣に並ぶと大胆に俺の腕を抱き締めてきた。大きな胸に挟み込まれる。いつもなら重く柔らかい感触が水の中ではふわふわと軽い。



 少し腕を動かして、きめの細かい肌と密着させるとセリカがビクッと肢体を震わせた。

「うぅ……あ、あまり動かさないでくださいませ」

「どうした? ――しかし、ここまで綺麗になるのか。すごい温泉掘り当てたな」

 確かめるために、空いた手を彼女の細い足や腰にすべらせた。やはり、どこもかしこもすべすべだった。


「やぁ……くすぐったいです、ケイカさま……」

 青い瞳を潤ませて逃げるように体をひねる。でも俺の腕は離さず、より強くぎゅっと抱き締めてきた。

「肌が敏感になるのか」

「そうかもしれません。――こんな感じに」

 セリカが俺の体に細い指を這わせた。


「おおっ」

 指先の動きが良く分かる。いつもより肌が紙一枚分薄くなったかのように、感覚が鋭くなっている。

 声を上げた俺を見て、ふふっとセリカが笑った。並びの良い白い歯が光る。なんだか、やり返してやった、みたいな印象を受けた。

 

「やったな、こいつ」

 俺は細い腰に腕を回してから思いっきり触った。背中や太もも、脇に首筋。胸も触ってみる。柔らかいのにすべすべ。ピンク色に上気した白い肌。

「だめ、だめです、ケイカさまぁ……っ」

 喘ぐような悲鳴を上げてセリカがか弱く暴れた。が、逃げようとはせず、俺にしなだれかかるような形で肩に頬を乗せてくる。金髪からは湯の香りがした。ギュッと目をつむっている。指の動きに合わせて、はぅぅ、と震えるような声を出す。



 ――と。

 バタンッと扉を豪快に開けて、白い塊が飛び込んできた。セリカが慌てて離れる。

「おんせん! ――ひゃ!」

 ラピシアだった。全裸を惜しげもなく晒している。

 入ってきたとたん、俺の姿を見て立ち止まった。飛び込んだままの大股開きの姿。

 どうやら、俺がいるとは思わなかったらしい。脱衣所に服があっただろうに。


 するとラピシアは、細い手で体を隠しつつ、そのまま湯船に走ってきた。

 村の子供と遊んできたのか、泥だらけの髪のまま、湯船に飛び込んでこようとする。



 慌てて立ち上がって、入ろうとするラピシアを押し留めた。

 華奢な肢体にもかかわらず、大地母神のフルパワーに負けそうになる。足を踏ん張って押し返した。

「まずは洗え!」

「やっ! 恥ずかしい!」

 ラピシアが顔を真っ赤にして俺を見上げる。金色の目に涙が浮かんでいた。細い手がおざなりに体を隠している。

 どうやら裸を見られるのが恥ずかしいので、湯船に入って隠れようとしたらしい。


「だめですわ、ラピシアちゃん」

 セリカが水音を立てて湯船から上がると、自分のしていたタオルを拾った。俺と揉みあうラピシアに掛ける。

「う……ありがと」

 ラピシアの華奢な体から力が抜けた。でも顔は真っ赤だ。



 セリカはラピシアを連れて洗い場へ行った。

 座らせようとするが、ラピシアは首を傾げていた。


「水着?」

「ええ、ケイカさまと一緒に入れますので」

「じゃあ、ラピシアも着てくる!」

 タオルを巻いたままの姿で出て行こうとする。


 俺は冷静に呼び止めた。

「ラピシアの水着は魔法が掛かってないからだめだぞ」

「そうなの?」

「温泉は生地が色落ちするんだ。成分によっては変な色になるかもな」

「へぇ~。わかった。やめる」

 ラピシアは素直に洗い場に座った。ツインテールの青髪が元気良く垂れた。



 セリカがラピシアの髪を洗った。

 ラピシアは気持ちが良いのか、きゃあきゃあ喜んでいた。


 次第に裸に慣れたのか、その後は3人で湯船に入って肩まで浸かった。ラピシアがセーラー水着の襟やネクタイをいじりながら言う。

「ラピシアもこれほしい」

「俺がいないとき入ればいいじゃないか」

「セリカとだけ、ずるい! 一緒に入る!」

「ああ、わかったわかった」

 ラピシアがここまで恥ずかしがるようになるなんて思わなかった。成長しているようだった。精神的に。


 このぶんだとミーニャも欲しがるかもしれないと思ったが、なんとなく彼女は全裸でも気にしないような気がした。


 こうして初温泉はにぎやかに終わった。

 肌がすべすべになって気持ちよかった。

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