表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

僕がヤンデレ雨女に告白する話

「みんな、頼みがある。」


「協力してほしい。」


「ヤミコさんに告白したいんだ。」


そう、これは僕がヤンデレ雨女に告白する話。



ヤミコさんが逃げ出した後。

全然追い付けなかった。

普段あんなにスポーツ苦手そうなのに、とんでもない足の速さだった。

正直舐めてたな。

まぁいい。明日がある。

若い僕には夢がある。


そう考えていた、次の日。

梅雨明け。

外は雲ひとつない青空で、蒸し暑い。

いつもの駅の出口。

いた、ヤミコさんだ。

「おはよう、ヤミコさん。」

「おはよう、ヒロトくん。」

え?

「じゃあ、学校に行きましょうか?」

「あ、うん。」

何か、変。

「ふふ、ヒロトくんったら。」

「あのさ、ヤミコさん。」

「そういえば朝の番組で・・・」

不遜な言い方になるけど、


ヤミコさんってこんなにあっさりじゃなくない?

「ヤミコさん!」

大きな声をあげると、ビクッとする。

「話があるんだ。」

「わ、私は、ないもん!!」

いつものヤミコさんが垣間見えたと思った瞬間。

「あ、待ってよ!!」

両手で耳をふさいで、逃げてしまった。


道に残された一人。

汗がひとしずく伝って落ちた。


学校でも

「ヤミコさん!」

「次の授業!」


「ヤミコさん!」

「キョウコちゃんとお昼食べなきゃ!!」


「ヤミコさん!!」

「乙女の秘密!!」

トイレじゃねーか!!


取りつく島、ゼロ。

漂流してんのか僕は。


登下校は一緒にしてくれる。

でも、前よりさっぱりした関係になってしまった。

分かりやすく言うと、

ヤンデレじゃなくなってしまったような。


そして、僕が告白しようとすると、逃げてしまう。


「ヤミコさん!」

「乙女のひ」

「僕のこと、飽きちゃったの?」

ヤミコさんはピタリと動きを止める。

我ながら、意地悪な質問だとわかっていた。

すると、ヤミコさんは振り返る。

「そうだったら・・・こんなに苦しまなくてすむのに。」

梅雨は明けたはずなのに、

ヤミコさんにだけ雨が降っているみたいだった。







「どうすれバインダー」

自室の机で伸びながら、バインダーをパカパカする。

こんな調子で、ダラダラと日々が過ぎていってしまい、明日はもう終業式。

つまり、もうすぐ夏休みだ。


恐らくヤミコさんは僕のことをまだ好きで居てくれる。

でも、告白しようとすると避けられる。

・・・このままでも一緒にはいられる。

このままでいいのかも



このままで・・・



・・・いいわけないよ。

僕はあの、ちょっとおかしくて、でも一生懸命で、ヤンデレなヤミコさんとちゃんと恋人になりたい。

今の状況、下手するとフられるかもしれない。

ヤミコさんがわからない。

ぶっちゃけ怖い。

でも、


それでもヤミコさんが好きなんだ。




「みんな、頼みがある。」

終業式後の、休み時間。

「協力してほしい。」

「なんだよヒロトー。」

「改まって、もう夏休みの話かー?」

夏休みモードの友人たちに告げる。

「ヤミコさんに告白したいんだ。」

ぶっ

『わはははははははははは!!』

「な、なんだよ!」

「だって、そんな真剣な顔して何言うかと思えば」

まったく、失礼な奴らだなぁ。

「こっちは真剣なんだよ!」

「お前、結局病み子に惚れちまったんだなぁ。」

「悪いか!」

「悪かねぇよ。やっと覚悟決まったかって思ってさ。」

すると、皆で立ち上がり教室の隅で円陣を組み始める。

「夏休みに入る前に、一肌脱いじゃいますか・・・?」

「やりますか・・・!」

「男になれヒロト。」

「逃げんなよ?」

「わかってらぁ。」

そこそこの人数だけど、あくまでこっそりと。




そう。

これは僕がヤンデレ雨女に告白する話。





放課後。

早速行動開始だ。

「ヤミコさん、大事な話がある。」

ガタッ

「さ、さよなら!」

ヤミコさんは席を立ち、一目散に逃げる。

計画通りっ!

思わずニヤケてしまう。




「お、病み子すまん。」

「っ!」

ヤミコさんは方向を変える。


また逃げ込もうとしたところで

「おう、病み子、どしたん?」

「っ!」

ヤミコさんは方向を変える。


「すまんな、病み子。」

「おう、ちょっと待ってくれ」

「今着替えてんだ!」

「工事中です。」




「っ工事中なわけないじゃない!!」




どんどんヤミコさんの逃走経路が狭まっていく。

誘導されているとも知らずに、ニヤニヤ。

ヤミコさんはどんどんどんどん走り、最後にたどり着いた場所は、

学校の屋上。

真夏の青空と積乱雲が舞台か、上出来。


「はぁ、はぁはぁ、」

「や、ヤミコ、さん。」

バタン!と屋上のドアが閉められる。

そのままカギも閉められた。


ヤミコさんはドアノブをガチャガチャするが、開かない。

こっちをうらめしそうに睨む。

計画通り・・・!

「ヤミコさん、大事な話があるんだ。」

「聞きたくない。」

また両手で耳を塞ぐ。

どうしてか、震えている。

「終わりたくない、終わりたくない、終わりたくない・・・」

「終わりたくない?」

何を言ってるんだろう。

首を傾げていると、ヤミコさんは震えた声で




「ヒロくんと別れたくないよぅ・・・」




はい?




「え、いや、ヤミコさん?」

「ヒロくん、ナオコちゃんとお付き合いするんでしょ?」

「いや、しないけど。そもそも、」




「僕達まだ付き合ってなくない?」

ヤミコさんは熊にでもあったかのような顔をする。


「え?だって、入学式の日、付き合ってあげるって・・・」




「・・・あっ」

そこで思い出した。


確かに言った。 


でもあれって、

「職員室の場所がわからないから、そこまで付き合ってあげるって意味だったんだけど・・・」


入学式の日、上履きに履き替えたすぐの場所でヤミコさんは立ち尽くしていた。

困っていたようだったので声をかけると、職員室に用があるのだがどう行けばいいのかわからないのだという。

そこで、一緒に行こうという話になったのだ。

幸い、僕は入学式前に職員室に提出するものがあったので場所を知っていた。

「えええええええええ!?」




じゃあ、ヤミコさん、そこからずっと僕とお付き合いしてるつもりで居たのか。

・・・僕、あんなに冷たくしてたのに。




「ずぅーん・・・」

口に出すほど落ち込んでいるようだけど、好都合。


兄さん曰く、

こういうのは男から言うもんなんだから。




「雨ケ崎ヤミコさん。」

僕はヤミコさんの手を引き、立ち上がらせる。







「あなたが好きです。一緒にいたいです。」

「僕と付き合って下さい。」



ポツ


ポツ


「え?」


ポツ


ポツ


こんなに晴れてるのに、なんで雨が?


ポツ


ポツ




「私、普通じゃないんだよ?」

「とっくに知ってる。」


「喧嘩したら、雷落ちちゃうかも」

「ゴムのカッパ着ておこうかな。」


「寂しくなったら、雨降っちゃうよ?」

「じゃあまた相合傘しようよ。」


「また、映画に行ってくれる?喫茶店は?アクセサリーショップは?お祭りは?」

「20万は出せないけどね。」






「私も、入学式のあの時から、ずっとあなたが好きでした。」


「それも知ってるよ。」




僕達の関係、ずっと勘違いだったなんて嘘だろ。

バカみたいだ。


だからここから、ちゃんとはじめよう。







「あいつら、やりやがった!!」

「ほら、あーしが屋上の鍵返すからお前らさっさと帰れ。」

「・・・なぁ、キョウコ、俺達も」

「はぁ?勘弁だし。」







二人で雨のなか駅に向かう。

青空と積乱雲が眩しいのに、何故か大雨。


「狐の嫁入りだねぇ。」

「そう、嫁入り♡」


ヤミコさんが僕の腕を抱き、楽しそうに答える。


「末長く、よろしくお願いします♡」

「嫁入りはちょっと気が早いかな・・・」




その時が来たら、きっと僕から言うから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ