隠し事はすぐバレる ⑧
そんな彼を安堵させるようにゼファは小さく笑う。
「顔を上げろアイビー。むしろ、よく話してくれた。これで色々と繫がったのだからな……あ?」
自分で口に出してから、ふと、ゼファの脳裏にある疑問が浮かんだ。
戦争に対してここまで余裕だった国王だったのに、どうして各国と「話し合い」なんて平和的に解決しようとしたのか、ということだ。
あれほど召喚術に絶対的な力を感じていたのだから、すぐその力でひれ伏せようするだろうに。
「もしかして……まだウィスタリアの力は不十分なのか?」
行きついた仮説にアイビーも「おそらく」と首を縦に振った。
だが、まだわからないことはある。
ウィスタリアがどこまで召喚術を物にしているか、ということだ。
少なくともアッシュに封印術をかけることができるくらいまでは習得しているのは間違いない。
そしてグライス家を抹殺するくらいなのだから、彼も何かしら動き出している。
もしかすると、彼が思っているほど時間はないのかもしれない。
「アイビー……俺はどんなことをしてでもウィスタリアを止める。そのためにはあいつらの力も必要だ。だから、あいつらにもこのことを話させてもらうぞ」
あいつら……ゼファが名指ししなくてもアイビーは誰のことかわかっていた。
アッシュと、シエナのことだ。
「……ゼファ様が信頼できる人ならば」
アイビーは静かに口角を上げてコクリと頷く。
その反応に、ゼファも思わず頬を綻ばす。
「けれども……私も一つわからないことがあるのです。どうしてそこまでシエナ君のことを信頼できるのですか?」
唐突に問われ、ゼファも思わず「え?」と素っ頓狂な声をあげた。
シエナと出会ったのはたったの二日前。
それなのに、ゼファは幼なじみのアッシュと同じくらいシエナのことを信頼している。
それは、彼らとのやり取りを数回しか見ていないアイビーでもわかっていた。
だからこそ、アイビーは謎だった。
人の倍警戒心が強く、慎重なゼファだから、なおさらだ。
彼の問いにゼファはしばらく考えた。
しかし、彼が出した答えはとてもあっさりしていた。
「なんとなくだよ」
「なんとなく……ですか」
「ああ。なんだろうな……あいつの目を見ていると――なんとかしてくれそうな気がするんだ」
小さく笑ったゼファにアイビーは驚きで一瞬目を見開いた。
だが、その言葉に妙な説得力を感じ、アイビーも釣られて笑った。
「……いいお友達ができたようで私も嬉しく思います」
――となれば、私も全力で彼らのサポートをしなければ。
そう続けて、アイビーはフフッと微笑んだ。
しかし、その笑顔もすぐに消える。
「ゼファ様……どうか生きて――この国を救ってください」
自分でも酷なことを言っているとアイビーは思っていた。
だが、もうこの国でウィスタリアを止められるのは、他でもないゼファだ。
そんな彼を安心させるようにゼファは真剣な表情でコクリと頷いた。
この国の公爵として。
そして、ウィスタリアの従弟として。
ゼファ・フィルン・セレストはーー大きな覚悟を決めた。




