第九十八話 海といえばBBQ。
アリスと一緒に昨日スラム街の子供と衝突した場所へときた。
今日は突っ込んでくる影は見当たらないが、まだお昼にもなってないから活動していないのかもしれない。
「じゃアリスてきとうにここら辺にいる子供達全員後で連れてきてよ」
「何人?」
「しらん! とりあえず連れてこなかったらアリスのご飯抜きね」
「……」
そんな目で見られても人数どころか名前も男女比も知らないんだもん。思い付きで行動してるからね下調べとかしてませんよ?
「昨日の奴が美味しいものくれるよって言えばきっと集まるだろうし大丈夫大丈夫」
「ん……」
「そんな心配そうな顔しなくても……。ローゼがいたらローゼの役目なんだけどねー」
「アリスもできる」
ローゼで出来るならってこと? 妙な敵対心が芽生えてるみたい。まぁ仕事してくれるならありがたいけど。
「じゃ、任せたよ」
アリスの頭を撫でて、海へと向かう。後ろでアリスが子供じゃないと反抗していたが見なかったことにした。見た目は子供だしね!
遊んでいる子供達から離れたところで調理の準備をはじめる。まずは砂に穴を掘って火口を作る。石で囲って鍋をセット。
「あとは火をつけるだけ……っと」
鍋に水を入れて昨日の余った出汁を少し。そこに昨日砂抜きしておいた貝を豪快に入れて煮込む。
その間に肉を焼く用の火も熾して、網もセットする。
鍋の水が沸騰してきたら野菜を入れて更にじっくりと火を通す。
「おや? 先日のマキビシの方じゃないですか?」
「え? あーどうもお久しぶりですね」
久しぶりというほど日が経ってないのだが、つい口に出てしまった。
「無事逃げきれましたかな?」
「おかげさまで大満足でしたよ」
この人のおかげで大量の雲丹が食べられるんだからすごい感謝してもしきれない。まだ全然使ってないけど……。
「それは良かった。それで今回は何を?」
「あぁ、これですか? 今日はそこら辺の人にご飯でも振る舞おうかなと思いまして」
温まった網の上に昨日苦労して捌いたアリスが昔獲ってきた大蛇のお肉と野菜の串を並べていく。
これのせいで寝不足だよ。少し肩も痛いし人間が裁くもんじゃないよこれ。お陰で串が200本くらい作れたからいいけどさ。
「ほう。なかなか珍しいことしますな」
「えぇ、暇なもので。良ければどうです? まだ完成しませんが…」
鍋に魚醤や塩などで味を整えて味見をする。
貝の出汁がきいていて美味しく出来上がってる。これで完成かな。
「この老体でも食べれるものですかね」
「さっぱりしたものですよ。少し味見してみてくださいよ」
器にスープを少しよそい、差し出す。
「熱いので気をつけてくださいね」
「ありがとうございます。では……」
息を吹きかけ少し冷ましてから、静かに口へと運んで喉を鳴らす。
ローゼとかアリスとかなんでも美味しい組はさておき、どんな感想が来るか少し緊張する。
「……これは美味しいですね」
「お口にあって良かったですよ。良かったら知人などと後でお昼ご飯としてでも食べに来てください。見ての通りたくさんありますから」
アリスどころか大人でも入れそうなラーメン屋にあるような寸胴の鍋です。足りなくなる心配はないだろうけど、余りすぎるとちょっと食べるのが大変だな。
最悪ローゼに全部あげればいいか。
「そうですね。また後でお邪魔させていただきます」
「はい。お待ちしてます」
笑顔で去っていくおっちゃんに手を振りながら、串を焼いていく。
ちょっと味見してみようか。火が通ってるかちゃんと確かめないといけないもんね。
焼きたての白焼きに豪快にかぶりつく。身がぎっしり詰まっていて、なのにふわふわで美味しい。
「でもなんか物足りないな……。炭火で焼きたい」
あとは醤油でもつけたら美味しい気がする。魚醤塗ってみるか? でも臭いでみんな居なくなっちゃいそうだなぁ。まぁまだ人いないし少し試しておこうか。
「ん?」
のんびりと串を焼いていると、遠くの方で遊んでいた子供達がこちらへ近づいてじっとこっちを見ている。
気になるけど話しかけられない奴?
「良かったら食べる?」
子供達の方へ串を差し出して話しかける。子供達はお互いに頷きあってこちらへと駆け出してくる。
「ありがとう! お兄ちゃん」
「遠慮しないでたくさん食べていいよ。でも食べるときは『いただきます』だけ言おうね」
「いただきます?」
「食べる前の挨拶です」
「はーい! いただきまーす!」
よし、いただきます党の普及に成功した。いや別に特に俺が広めてるわけじゃないんだけども。
「これ美味しー! なんのお肉?」
「これは蛇さんだよ」
「蛇って食べれるんだ」
「なかなか食べれないだろうから沢山食べてね」
人数分のスープもよそってあげる。子供だけど野菜もちゃんと食べてもらおう。アリスみたいに育っては困るしね。
「はいこれ、スープもどうぞ。野菜もちゃんと食べてね?」
「ありがと! 串まだ食べたい!」
「ちょっと待ってね」
配り終わってから焼けた串を手渡す。これ串足りないのでは。
そんな普通に子供達とワイワイはしゃいでいると、次第に通りがかった野次馬や子供の親が何事かとこちらへと集まりだした。
「あ、ままー! これおいしーよ!」
「何食べてるの?」
「なんかおいしー奴! やさいもおいしーの!」
子供の親が不思議そうな目でこちらを見た。まぁ、そりゃ子供がよくわからん人から食べ物もらってたらそうなるよね。
「こんにちわ。よかったらご一緒にいかがですか? とっても美味しいですよ」
「え、えぇ……いただくわ」
少し戸惑いながら受け取ったスープを口にするお母さん。
「あ、美味しい」
「でしょー! おいにちゃん料理上手なんだねー」
「ありがとう。火傷しないようにゆっくり食べるんだよ」
「うん!」
こんなもので美味しいと言ってもらえるのはありがたいものだ。
「私もおひとつもらってもいいですか?」
通行人たちも気になったのか食べたいと言ってくる。漸くそれらしくなって来た。アリス来る前に串補充しておかないといけないなぁ。





