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第九十二話 雲丹。


「いい匂いがしますね」


「あ、どうも」


「なにか焼いてるんですか……って何ですかこれ!」


 木の板に広げられたテングサを見て驚く宿娘さん。やっぱり邪魔かな?


「あ、邪魔でしたらどかしますが……」


「大丈夫ですよ。驚いただけです。べつにここを使うような用事もありませんから」


「ありがとうごさいます。良かったら食べますか?」


 そう言って雲丹を少しスプーンに乗せて差し出す。

 隣でアリスが羨ましそうによだれを垂らしている。貪欲なやつめ。


「いいんですか? ……これなんでしょうか」


「海で採れるものですから大丈夫ですよ」


「私ずっとここに住んでますけどこんなの初めて見ましたよ……」


 スプーンを受け取って口に運ぶ。


「っ!? 美味しいですね。もしかしてこれあのトゲトゲですか?」


 あっさりばれちゃいました。まぁ運んでる所見られてるし当たり前なんだが。


「そうですよ。なかなかいけるでしょう」


 強請るアリスの口にスプーンごと突っ込んで大人しくさせる。

 ただ貝から取り出しただけで満足できるなんて楽な食材だね。


「ん」


 口からスプーンを取り出して網の貝たちを指差す。

 おっとそうだった。そろそろ焼ける頃かな?

 軍手をはめて熱々の貝を掴み竹串でくり抜く。


「はいアリス。とりあえず普通のやつね」


「ん」


 もう1つ宿娘さんにも用意してあげる。

 ちゃんとウロも外してっと。


「どうぞ」


「ありがとうございます」


 こっちは別に屋台で食べるのと同じだから別になんもない。

 次に貝に作った魚醤を垂らす。

 溢れた汁が貝殻を伝い網に落ちて火に消える。ツブの出汁と魚醤が焦げるいい匂いが辺りに充満する。


「はい。今度は魚醤ね」


 2人に同じように竹串に刺して渡す。この味は未体験なはずだ。


「ん?」


「ありがとうございます」


 一口で食べるアリスと対照的に熱いからか、ちまちまとリスのように食べる宿娘。


「こっちのが好き」


 どうやらアリスは気に入ってくれたようだ。

 宿娘さんのほうは……。

 口に手を当てて驚きの顔を浮かべている。


「この貝がこんな味になるなんて」


 魚醤すら始めてだろうから無理はない。でも大袈裟な気がするけど……。


「まだいきますよ」


 次は魚醤にバターだ。貴重な乳製品だが少量だし。

 ツブに合うのかは分からないがこういう時はバター醤油だもんね。


「それは何を入れたんですか?」


「企業秘密です」


 既に興味深々な宿娘さんに地球スラングをぶち込んで誤魔化す。

 誤魔化すというよりも説明しづらいし面倒なだけだけど。


「きぎょう……?」


「あぁ、気にしなくていいですよ。秘密ってことです」


 先ほどの魚醤のだけの時よりも濃厚で香ばしい匂いが広がる。

 やっぱりBBQで貝を焼くならバター醤油だよね。味もだけど匂いが犯罪的。

 バターの焦げる匂いに魚醤が加わるだけでご飯が食べられそうだ。お米がないけれど……。



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