第六十九話 貴族の料理を。
外はふんわり、中はとろりと柔らかい熱々のたこ焼きに自家製のたこ焼きソースを刷毛でたっぷり塗ってマヨネーズを引く。その上で芳ばしい削りたての鰹節が躍る。
「終わったー!」
「疲れた」
たこ焼き完売しました。何個売れたかはわからないけど後で計算しよう。
買えなかった人はごめんなさい。レシピ近日公開なので……。カミングスーンです。
「ローゼのとこ行く?」
「そうだね。寄ってこうか」
お偉いさん帰ってるといいけど。
屋台を片付けてローゼの屋敷に向かう。門の中には数台の馬車と従者がおり、いかにもって感じがする。
「これは今行くと確実に異世界成り上がりのルートを組まされる。帰ろう」
「いせかいなりあがり?」
「あぁ、アリスは気にしなくていいよ」
めんどくさい事はしたくないのである。貴族に巻き込まれるのはごめんだ。
また明日来ればいいや。ごめんねローゼ……。たこ焼きは無しで!
立ち止まって引き返そうと踵を返すと門番さんに見つかってしまう。
「少年」
「あ、こんにちわ」
「今日は入らないのか?」
「えぇ、ちょっとお客さんも来ているようですし。また明日にでも……」
「そうかそいつは残念だ」
残念? 何か食べ物欲しかったのかな。何かあったかな、たこ焼きでいい?
そんなことを考えていると門番さんに腕を掴まれた。
「え?」
「あんたがきたら連れて来いってこの家の者に言われてるんだ。悪く思わんでくれよ?」
「えぇ……。見逃しは」
「ない」
「さいですか……」
仕方ないので門番さんに連れられ屋敷へ。
「それでこの後はどうすれば?」
「特に言われてないから自由にしておけばいいんじゃないか? 俺は連れてくれば、それで仕事は終わりだからな」
門番さんって意外と無責任? 門番さんなりの気遣いだったりして。
用が済んだと門の前に戻っていってしまった。
「どうしろと?」
「ローゼ」
アリスがぼそっと小さな声で呟いた。
ローゼのところに行こうにも多分ローゼは貴族の相手してるんじゃないのかな。勝手にローゼの部屋に入って待つのも気が引けるし……。
「困った。厨房に行ってみる?」
「ん」
アリスはお腹減ってるぽいね。つまみ食いしてたのに。
とりあえず厨房に移動して中を覗き込む。
すると何やらルネさんとみんなが集まって話し合いをしていた。
ここも取り込み中ぽい。どこ行こうか……。そう考えて扉をそっと閉めようとするとルネさんに見つかってしまった。
「あ、ユウタさま?」
「どうも」
「どうしたんですか?」
「なんか門番さんに連れ込まれて……」
「みんなお客様に対応してると思いますが……」
「みたいですね。だから暇を潰せるところをと回ってたんですよ」
まだ1個目だけどね。
「暇でしたらお手伝いしてくれませんか?」
「なんのですか?」
「夜のご飯の献立で迷ってまして……。お客様が珍しいもので、と仰ってまして」
たこ焼きだしとけばいいんじゃない?夜ご飯たこ焼き単品はだめか。
「たこ焼き食べたんじゃないんですか?」
「たこ焼きを食べて夜ご飯も見たことのないものが〜。みたいな事を……」
もしかして俺のせい?
「なんかすいません……。それで何を作るつもりなんですか?」
「なんも決まってません」
「何品くらい作れば」
「コースでだすので……」
コースなら5品くらいか? それなら割とちょろそうだけど。
「何人分作るのですか?」
「お客様とローゼお嬢様達合わせて6人ですね」
「思ってたより楽そうですね」
「作るぶんにいいんですが、内容が……」
「なんでもいいならてきとうに考えますけど……」
「是非お願いします! 私達だけだとどうにもならなくて……」
久々にコース料理なんて作るなぁ。
ちゃんとできるかな?
「アリスー」
「ん」
「暇そうだから仕事頼んでいいかな?」
「おけ」
「じゃあ川に行って魚取ってきてくれない?」
「ほい」
会話に入らないで暇そうなアリスに仕事を頼む。あとでちゃんとお礼にご飯を作ってあげよう。
「ルネさん。じゃがいもと海老とトマトありますか?」
「はい。こちらに」
「それじゃじゃがいもは1つ残して茹でて潰してもらえますか?海老も殻と身で分けてください」
「わかりました」
「あとメインのお肉とかって何使えばいいんですか?」
「鳥ならありますが違うのがよければ買わせに行かせますが」
「鳥で大丈夫ですよ。出しといてください」
さてと、楽しい料理の始まり始まり。
たこ焼きで疲れてるのになんでこんなことしてるのか。





