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第六十八話 本日限りのたこ焼き屋さん3。


「てなわけです」


「たらふくたこ焼き食べてるじゃないアリスちゃん。どこが地獄なの?」


「たこ焼きの打ち止め」


 贅沢をいうんじゃありません。


「ねぇユウタ。これいつまで売るの?」


「無くなるまで?」


「いつ無くなるのさ!」


「今まで売ったやつの5倍くらい売ればなくなるけど……」


「遠いね……」


「正直こんなに大変だとは思わなかった」


 恐るべきたこ焼きパワー。


「いらっしゃいませー。3つですか? 銀貨1枚です」


 ローゼもちゃんと接客とかできるんだね。物凄い意外だ。


「トッピングですか? ユウタ〜トッピングってなにー」


「ソースとマヨネーズと鰹節のことだよ」


「りょーかいっ! ソースと。え? テリた……? いや無いですけど……。マヨネーズと鰹節になります!」


 ローゼのやつ混んでるのに何をお客さんと話し込んでるんだ?

 こんなに忙しいというのに。

 暫くお客さんを捌いていると見知った顔がやってくる。


「あれ? キースくん? なにしてるのこんなところで」


「それはこっちのセリフですよ……。みんな探しておられましたよ? 私はニズリ様に頼まれてたこ焼きを買いに来たのです」


「だからって暢気に並ばなくても……」


「いえ、ローゼ様。たとえ貴族でも庶民でもルールは守って平等にしないといけませんから」


 おお、流石はキースさん。言うことが違うね。


「でもキースくん貴族じゃ無いよね」


 ローゼの屁理屈攻撃。


「はい。ですがニズリ様の使いとしてきてますので」


 しかしキースさんには効果がなかった。


「もうどうでもいいけどローゼ詰まってるからそこらへんにしといてよ?」


「あ、ごめんごめん。キースくん何個ほしいの?」


「30個ほどください」


 え。30個も? ニズリさんそんなに食べる気なのかな。

 ローゼも気になったのか確認している。


「30個もいるの?」


「はい。今来ているお客様にも出すそうでして」


 なるほど。それなら納得はいく。いくが食べたこともない物を出しちゃっていいのかな?


「じゃ、30個で……。銅貨150枚だから銀貨10枚で金貨1枚です」


 偉い偉い。ちゃんと計算できました。


「アリス180個出来たら教えてー」


「ん……」


「キースさん少し横で待ってて貰えますか? 量が量ですのでちょっとかかっちゃいます」


「わかりました。それと申し訳ないんですがローゼ様も連れて帰っても……」


「正直辛いけどいいですよ。貴族の役目を全うさせてやってください」


「辛いならなんで見捨てるの! 嫌だぁ〜!」


 わがまま言うんじゃありません。それが仕事でしょう?


「出来た」


 出来上がったたこ焼きを竹に入れて上からもう1つ被せて蓋をして紐で縛る。

 これで溢れないでしょ。30個作ってキースさんに渡す。


「箱とか無いんですが……」


「手で持ちますから大丈夫ですよ」


 そう言ってピラミットを作り手で抱えて持つ。

 凄いな。落としそうだけど。


「残りはローゼ様もって貰えますか」


「いくの確定なんだね……」


 諦めてとっとと言ってくればいいのに。


「早くしてくださいね。先行ってますので」


「ちょっと! 待ってよ!」


 構わずに先に歩き出すキースさんとその後をたこ焼きを持って追いかけるローゼ。

 屋敷の方も大変そうだなぁ。終わったらたこ焼き持って顔だそう。


「待ってる」


 アリスに言われて接客に戻る。ローゼが居なくなったからまた1人でやらないといけない。


「1つくださいー!」


 子供が3人で買いに来ていた。3人で1個なのかな。

 子供からしたら銅貨5枚は高価すぎるか……。なけなしのお金を集めてみんなで買いに来たのかな?

 よく見ると転移した時に飴をあげた子供たちだった。


「銅貨5枚になりますよー」


「はい! これ!」


 必死に手を伸ばして銅貨を渡してくる。

 それを受け取って特別に3個たこ焼きを渡す。

 本当はこういうのは駄目だけど最初のころ色々教えてくれたからお礼ってことで。


「あれ3個? 1個じゃ……」


 子供たちが顔を見合って困惑している。


「サービスだよ。今回だけね?」


「いいのー?」


「ありがとう!」


「大好き! 飴のお兄ちゃん!」


 あ、覚えてたんだ。子供の記憶力ってなかなか侮れないな。

 1人1個ずつ持って横に移動する3人。仲が良くて微笑ましい。

 次のお客さんの注文を取る。列もだいぶ減って来たしそろそろゆとりが出そうだ。

 たこ焼きを詰めていると少し横がざわざわとしてきた。


「なんかあったのかな?」


 ちらりと横を見るとさっきの子供たちと鎧を来た厳ついおっさんが何やら言い合っていた。

 なんだ?よくあるアイスクリームを服に付けちゃってクリーニング代払えってやつ?

 耳をすませば微かに会話が聞こえてきた。


「返してよ!」


「金なら払っただろ。それでもっかい買えばいい」


「た、食べたいなら……じ、自分で並べば……」


 どうやら並ぶのが嫌で子供から恐喝してるぽい?


「別に俺が食べたいわけじゃない。貴族様が食べるんだよわかるか?」


 子供たちは何も言えずに半泣きで睨みつけている。


「知るか。貴族だろうが王族だろうが欲しけりゃ並べばいいさ。アリス」


「ん」


 名前を呼んだだけで意図を理解してくれた。

 隣から一気に距離を詰めて鎧のおっさんに飛びつく。

 相変わらず凄いなぁ……。暢気にそんなことを考えながら子供たちの方へゆっくりと歩いていく。


「なんだお前! ふざけ……」


 アリスは男のセリフなど一切無視して首元にナイフをあてがう。

 容赦ないなぁ……。シリアスな感じとか戦闘とかできれば無い異世界生活送りたいんだけどなぁ……。


「死ぬ? 返す?」


 アリスのいつものテンションで口数が少ない感じだと怖すぎる。あんなのされたら漏らしちゃうかも。


「はぁ? 何言って……」


 それでもきちんと抵抗の姿勢を見せるおっさんもなかなか度胸がある。本当に切られるとは思ってないぽい。

 アリスはお構いなしにナイフを押し付けて首の皮1枚が切れて血が滲む。

 ちょっとアリスさん? 本当にやったらダメだからね〜? わかってる? ちょっと不安になって来たよ……。

 子供たちもポカーンとしてるよ。


「どっち」


 アリスの本気具合が伝わったのか鎧のおっさんは諦めて手を伸ばす。


「わかったよ。返しゃいいんだろ? ほらガキどもとっとと受け取れ」


 子供たちは恐る恐るたこ焼きに手を伸ばし奪い返す。

 ふぅ。これで何事なく一件落着……。だといいけどね。さっき貴族とか言ってたし後でめんどうなことにならないといいけど……。


「アリスーたこ焼き焦げちゃうから戻るぞ〜?」


「ん」


 おっさんから離れてこちらに戻ってくるアリス。


「それじゃ気をつけてね。ばいばい」


 子供たちに挨拶してアリスと一緒に屋台へ戻る。


「焦げた……」


「火を消し忘れたからね。仕方ないよ」


「不覚」


 不覚って。武士みたいなこと言って。

 並んでいるお客さんに一言謝ってたこ焼きを焼き直す。

 このペースだと後1時間もすれば完売かな?

 終わったらローゼのところでゆっくりしよう。



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