表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/114

第四十九話 アリス2。


 命の恩人だし出し惜しみしないでフルコースでいこう。


「ねぇ、アリス。入れ物とかあるの?」


「ん」


 洞窟に入って戻ってくる。手には大きな葉っぱが握られていた。

 まじで?葉っぱすか。


「これに乗せるの?」


「便利だよ?」


 まぁ確かに良いかもしれないけど汁物は入れられないよね……。


「カップとかないの?」


「ない」


 あとで竹使ってカップでも作るか。

 とりあえず鍋にお湯を沸かしておく。もう1つ別の鍋にリストの中からお米を取り出して軽く洗い流し米を炊く。

 秘蔵の食材だよ?久々の米だ。今から楽しみで涎が止まらない。


「とりあえず竹使って容器を作ろうか」


「ん」


 刈り取った一本を取り出して地面に寝かせる。


「この節の所を使って入れ物にするんだよ」


 中華包丁を節の下に当てて石で叩いて削っていく。

 これ時間かかるし疲れるなぁ……。


「楽しそう。貸して」


 中華包丁を奪い取ってぶんぶんと振り回す。


「ちょ、危ないって!」


「ここ?」


 切りかけた部分を指差して首をかしげるアリス。


「そうだけど……」


 するとそれを聞いた瞬間に思いっきり中華包丁を振り上げて、切り口目掛けて鋭く振り下ろした。


「怖えぇぇ……」


 ヒュッ。って言ったよ。ヒュッ。って。人間くらいなら真っ二つに出来そう。


「はい」


 一発で切断すると綺麗な切り口で見栄えばいい。


「ありがと。反対側も切れる?コップみたいにしたいから」


「ん」


 パカパカ、パカパカと次々に切断していく。

 あっという間に6個の容器が出来上がった。


「ありがと」


「ん。これいい武器」


 武器じゃないからね? 包丁だから料理に使うんだよ。

 切って貰った竹を水でよく洗う。これって生のままでいいのかな? 焼いたり乾燥させたりしたほうがいいんじゃない?


「火に突っ込んでみるか」


 燃える前に取り出せば大丈夫だよね?

米を炊いてる火に竹を放り込む。


「せっかく切ったのに」


「いやちゃんと使うから!心配しないで。燃える前に取り出しておいてよ」


 その間に魚を捌いていく。とりあえず3枚に下ろしてアラは出汁用にとっておこう。今後絶対使うし。

 切り身を刺身にカットしていく。それを葉っぱの上に乗せてチューブのワサビを横に添える。大根があればツマが作れるんだけど、なくても別にいいか。

 盛り終わったら机代わりの切り株の上に置く。


「これどうするの?」


 アリスが竹を取り出して枝でつついていた。


「水で冷やそうかな」


 ボウルに水を張って熱々の竹を入れると、じゅう〜。といういい音が響く。

 冷めたら乾かして完成。和食っぽいな。竹はやっぱり風情があるね。

 2つだけ残してあとは仕舞い、インスタントの味噌汁を入れてお湯を注ぐ。

 ちょうどご飯も炊けたから蓋を外して木べらでよくかき混ぜて盛り付け……。


「茶碗がない」


「んっ」


 当然のように葉っぱを寄越してくるアリス。

 さいですか。まぁ容器なんて盛れれば同じだよね。気にしたら負けだ。

 しょうがなくご飯も葉っぱに盛り付け切り株に運ぶ。


「出来たよ」


 なかなかシュールな食卓になってしまった。なんかサバイバル生活しているような感じがする。記念に一枚撮っておこう。

 写真を撮りながらアリスに話しかける。


「フォークでいいの?」


「素手じゃだめ?」


「流石に無理だと思うよ……?」


 味噌汁とか熱いし。


「ならフォーク使う……」


 しょんぼりとしながら渋々といった感じでフォークを選択するアリス。

 アリスって何者なんだ。森に住んでる原住民みたいな感じだけど、1人なのかな?


「冷める前に食べよっか」


「ん、いただきます」


 フォークを使って器用にご飯を掬って口に運ぶ。

 え、今いただきますって言わなかった? もう森の奥まで浸透してる?


「いただきますってどこで知ったの?」


「秘密」


 ご飯を頬張りながら笑顔でそう答える。

 秘密って。まぁ可愛いからいいや。


「気にしてもしょうがないか。とりあえず食べよっと」


 それにしても久々のお米だ。それに味噌汁も。こんな和食が食べられるなんて思ってなかったなぁ。


「あぁ、お米が美味しい……。フランスパンもどきよりも数段こっちの方が素晴らしく美味しい。精白米植えたら米生えないかな……」


「無理」


 無理ですよねー。胚を取り除いちゃってるし……。

 ってなんてアリスが答えてるんだよ。


「知ってるのこれ」


「お米。久々に食べたよ?」


 え、どゆこと? アリス実は日本人だったりする??


「こっちでも食べられるの!?」


「ずっと遠くにいけば」


「まじかよ。いつか行ってみよう」


「ん」


 ローゼの言ってたことは本当だったんだ。正直疑ってました。ごめんなさい。


「でもこれは初めて」


 竹の器に入った味噌汁をフォークでくるくると混ぜながら眺めている。


「流石にこっちには味噌の文化はないか。味噌汁って言って和食に欠かせない汁物だよ」


「美味しい」


 よかった。口にあったみたいだ。あとは刺身だけど、いつも生でなんでも食べてるみたいな感じだったから抵抗はないと思うけど。

 あ、醤油を出してなかったな。


「刺身も美味しいよ? こうやって醤油に付けて食べるんだ」


 一切れつまんで山葵をのせて醤油をつけて食べる。

ん〜。タコの時もそうだけどやっぱり刺身は美味いな。マグロとかサーモンが食べたくなってきた。似たやつでもいいなら今度海に行って探してこないと。


「辛い……」


 山葵をつけすぎたのか涙目で舌を出して手で扇いでいる。

 そういうところは子供っぽいんだな。


「山葵つけすぎだよ。もっと最初は少なめにしないと」


「先に言うべき!」


「ごめんごめん。忘れてたよ」


 家庭で子供と一緒にご飯を食べてような時間を過ごした。

 まだ結婚もしてないし子供もいないから味わった事ないけども。多分将来家庭を持ったらこんなほのぼのとした食卓になるんだろうなぁ。ここに奥さんが加わって3人で。

 景色が樹海じゃなきゃ完璧なのにね。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ