第二十七話 ローゼの1日2。
家に着くとユウタが川で釣りをしていた。
釣れてないみたいだけど。
「ユウター! 遊びに来たよ」
「あ、ローゼ。とどなた?」
「この人は私の護衛って名目の労働力なのです」
え? って顔してるけどそのために連れて来たんです。ごめんね。
「どうも警備の仕事をしてます。キースといいます」
「どうも、お若いのに凄いですね。祐太と言います。敬語じゃなくて結構ですので」
お互いにペコペコし合って貴族じゃないんだから。
「それでローゼはなにしに来たの?」
せっかく遊びに来たのにいつも冷たいよね。
もう少し優しくてもいいのに。
「遊びにきたっていったじゃん。はいこれお土産ね」
コウのお肉の塊をユウタに渡す。
「お寿司?」
「お寿司ってなによ。コウのお肉だよ! それでなんか作ってね。あと前に作った煮干しってどうなったの? もうできた?」
「それなんだけどね……」
え? もしかして失敗したの? 私があんなに頑張ったのに。
「出来たは出来たんだけど。あの後外に2日干してから部屋の日陰に移したんだけどね?外に干してる間になんか量が減っちゃって……鳥にでも食べられたのかな?」
なんだそれ……。あの苦労も無く鳥は盗んでいったとは許せない。
「何か取られないようにしないといけないね。それでどれくらい残ったの?」
「40くらいかなぁ」
半分以上もとられちゃったの!? 盗ったやつ絶対に許さないんだから!!
「あんなに苦労したのに」
「ごめんねローゼ。まさかとられるとは」
「仕方ないよ。次取られないようになんとか考えないとね」
「そうだね。とりあえず出来たやつ食べてみる? 本来は出汁取るために使うんだけどそのまま食べても美味しいっちゃ美味しいんだよね」
ユウタからもらった煮干しを齧ってみる。
結構硬いなぁ。しかも苦い。でも美味しいかも? 癖になりそうだ。
キース君もユウタから貰って食べようか迷って口元でウロウロさせている。
まぁ知らなかったら得体の知れないものだから仕方ないんだけど、君はこれからこれを大量に作るんだよ。
腹をくくったのか1口で口の中に突っ込んだ。苦そうな顔してその後に『あれ?意外といけるかも』って顔になっている。私もあんな顔してたのかな?
「なんだか癖になるね」
「おやつとしても一応食べられるからね。キースさんはどうですか?」
「なんというか苦いけど口の中でずっと味がするというか……?」
気に入ってもらえたようでなによりだね。これからたくさん作るから頑張ろうね?
「出汁としてその味がする部分を取るんですよ。まぁかなり減ったのでまた作らないといけないんですけどね」
「それは安心していいよ」
「え? どうして?」
「この煮干しのために今日は来たんだからね」
勝ち誇ったような顔で宣言する。
「え、まさかローゼ様……」
キース君は気づいたみたいだね。自分が持ってきた小魚の使い道が。
「さあ煮干しを作ろう! てことでユウタまずこれ茹でて? 茹で終わったら私とキース君で並べるから」
そう言ってキース君が運んで来た木の箱を差し出す。
よいしょっと。
「本当に作りに来たんだね……」
呆れてるけどその箱開けてもまだそんなこと言ってられるのかな?
「げっ。何これ……。何匹いるんだ」
「1000匹だよ」
「え?」
そうそうこの驚く顔が見たかったの!
やっとユウタから一本とれた! もうこれだけで満足。
「1000だって」
「1000? は? まじで?」
「嘘ついてどうする」
「茹でる身にもなれよ!!」
手伝うって言ったじゃないのよー。約束は守らないとね。
「並べるのと扇ぐのはやるから茹でてくれたらそのお肉でなんか作っていいよ」
「はぁしょうがないか。すぐ終わるし茹でちゃうから外に網を並べておいてね?」
「はーい。キース君やっちゃうよー」
「はい……」
数分で茹で終わっちゃうから急いで準備しないと。
川から石を持って来て網を乗せる。
ユウタが二つの鍋に分けた大量の小魚を持ってくる。一人500匹くらいかな? 前回の10倍かぁ……。
ユウタの作るご飯を楽しみにいっちょやっちゃいますか!
結局ユウタの準備がすぐに終わって手伝ってもらいました。ひとまず日光で乾かしてユウタのご飯を食べよう。
家に入ってげんなりしたキース君と一緒に完成を待つ。
「元気ないね? 大丈夫?」
「まあなんとか……こんなことさせられると思ってなかったですから」
確かに大変だけどユウタの作ったもの食べたらすぐ元気になるよ。