第十二話 昼食たいむ。
メイドさんに案内された部屋には既に長テーブルを囲うようにローゼの家族たちが座っていた。
ローゼの後を追い隣の席に座る。
入った時から凄いずっと見られてるんだけど?
この人たちみんなローゼみたいな性格だったらいいんだけど。
すぐにメイドさん達が料理を運んできてお皿が並べられる。配膳が終わるとルネさんと年配の執事だけその場に残り後は部屋を後にする。
沈黙が辛い。誰も手をつけずにこちらを伺っている。
ローゼだけがその状況に気付いてない様子だ。あれはなんでこうなってるのか分かってないだろうな。
連れてきた張本人から説明していただきたいんだが?
すると一番奥に座っていた少し小太りの男性が声をあげた。
「とりあえず冷めちゃうから食べちゃおうか」
それを聞いてみんながお皿に手をつけ始める。
ひとまず助かった……。当事者のローゼを横目で睨みつつ手を合わせる。
「いただきます」
するとまたしてもみんながこちらに目を向ける。
いただきますすら許されないの!?
「いただきますってなに?」
唯一気軽なローゼがいつも通り尋ねてくる。
「ご飯食べる時の挨拶みたいなものだよ。食材になった動物とかに感謝の気持ちを込めて言う言葉」
いつもはそんな事なんて考えずに習慣として言ってるが。
「へぇ〜。偉いのね。私も真似しよっと。いただきます?」
同じように手を合わせて台詞を真似る。そんなローゼに小声で耳打ちをする。
「ねぇ、とりあえずみんなを紹介して欲しいんだけど……」
せめて話し始めるきっかけを作ってくれないといつまでたってもこの気まずい空気から解放されそうにない。
しょうがないなぁ。と渋々という感じで教えてくれた。
「奥に座ってるのがお父様でここの領主。その横がお母様で私の隣がお兄様、絶賛婚活中」
最後の要らないんじゃないか? ほらお兄さん怒ってこっちみてるじゃん。
ローゼからの説明を受けてローゼのお父さん、領主が開く。
「どうもはじめまして。ローゼの父のエルドナード・ニズリです。あなたのお名前は?」
「はじめまして。座ったまま失礼します。私は祐太と申します。本日は急な同席を許していただきありがとうございます」
敬語って苦手なんだよね。ちゃんと使えてるか凄く不安だ。
「ご丁寧にどうも。ユウタさんですか、今日はどうして?」
ここに同席してるのかと言う事だろう。
それは俺が決めたんじゃなくて隣にいる貴方の娘さんなので本人に聞いて頂きたいね。
「成り行きでして……。ローゼさんの提案で」
「え? 私に振る?」
会話も御構い無しに1人黙々と食べ進めるローゼに説明を求める。
説明責任があると思うよローゼには。全うしてもらおう。ていうかおなか一杯じゃなかったの?
「街に遊びに行ったらユウタがいて面白そうだから連れてきた」
うん。その通りだ。でも略しすぎじゃないか?
いや、もしかして本当にそんな感じで連れてきたのかもしれない……。
「ローゼもうちょっと詳しく説明しなさい?」
ここで初めてローゼのお母さんが口を開く。
「だってこれ以外に説明のしようがないよ……」
困った様子でお肉を食べ続ける。
とりあえず食べるのを辞めたらどうかな?
結局俺が一から説明しないといけないのか。異世界とか誰が信じてくれるっていうんだ。
まったくもう。
「埒があかないので私の事からお話ししますね。私、フルネームで小向祐太って言いまして」
「コムカイ?聞いた事ない家名ですな。しかも名前の前にくるので?」
「家名といえば家名なんですけど……。言っても信じて貰えるかわからないんですが、実はここじゃない世界から飛ばされてきまして……」
広場でローゼに話した事をそのまま伝える。
話終わるとまたしても沈黙が発生する。
「えーとつまりユウタさんはその別の世界、異世界? というところに暮らしていて、突然この街に来てしまったって事ですか?」
おお、さすが大人だ。ローゼとは違って物分かりがいい。
「そういう事ですね。それで困っていたところをローゼさんに会って今に至ってるわけです」
マヨネーズを作る代わりにご飯を貰う条件でね?





