第十話 スマホ。
「大丈夫かなあれ」
「なんとかなるでしょー」
「お昼っていつも何時に摂ってるの?」
ローゼはポケットから懐中時計を取り出して時間を確認する。
あ、懐中時計あるんだ。懐中時計って少しかっこよくて憧れるよね。厨二心くすぐられるというか。
「あと15分後くらい?」
「凄い申し訳ないことした気分だ」
「ルネならなんとかするよ」
なんだその根拠の無さそうな信頼感は。
「ところで何処に向かってるのこれ」
「私の部屋」
ローゼの部屋?
「何しに?」
「私の部屋なんだから理由とかいらないでしょ」
確かにそうか。
「なら俺は何処にいればいい?」
「一緒にきてよ。荷物とかも置かないといけないでしょ?」
出来れば持ち歩きたいんだけど、そういうわけにもいかないか。
ローゼと一緒に部屋に向かう。
「そこら辺に置いといてー」
ローゼは部屋に入るとそのままベッドにダイブ。行儀が悪いなぁ。
言われた通りに荷物を端の方にまとめる。スマホだけ持っておけばいいか。財布は別に使い物にならないし。
部屋は想像していた女の子の部屋って感じじゃなかった。
ベッドに机と椅子、本棚とかよくある家具が一通り揃ってるけど可愛いって感じとは程遠い。女子力溢れるような物なんてそもそもないのか?ヌイグルミくらいはあってもいいと思うけど。
「何?その薄っぺらいの」
そんなどうでもいい思考を遮って、携帯を見たローゼが質問してくる。
「これは携帯って言って割となんでもできる万能ツールだよ。あっちじゃみんな持ってるのが当たり前な感じ」
「へぇ、ちょっと貸して」
「はい」
スマホ受け取りがちゃがちゃと操作する。
「動かないよ?壊れてるんじゃないの」
そんなわけない。来るまでは使えてたぞ?
「横のボタン押すんだよ」
「押してるけどなんも起きないよ?」
え? そんなはずは……。
携帯を返してもらい電源ボタンを押す。
つかない。電源が切れてるのかな?
長押ししてみると普通についた。
「良かった……。壊れてなかった」
「どうやってつけたの? 私がやった時はなんもなかったのに」
「電源が落ちてたみたい。長押しで電源つけたんだよ」
「ボタン1つに2つも使い道があるの……。それで例えばなにができるのこれ」
「んーそうだなぁ」
電卓とか見せてもしょうがないだろうからカメラを起動してローゼ向ける。
「え? なに?」
いきなりスマホを向けられてわけがわからない様子のローゼ。
カシャ。とシャッター音が部屋に響く。
「びっくりした……。なんなの?」
「まぁまぁ。次は笑ってこの丸いところ見て」
カメラの部分を指差して笑顔の注文をする。
「じゃあ撮るよ〜。はいちーず」
カシャ。「だから」カシャ。「これなんなのか」カシャ。「説明し」カシャ。
「うるさい!!! せめて喋らせてよ!」
「ごめんごめん。これカメラだよ」
「カメラってなに? この小さいの?」
カメラもまだないのか? イラストや似顔絵のだけ?
「ほら、ちゃんと撮れてるよ」
先ほど撮ったローゼを表示して見せる。
「うわ、本当だ。私が写ってる……」
「ちなみに動画も撮れるよ」
「どうが? どんなの?」
「写真じゃなくて動いた写真というか。説明だと難しいから撮ってみるよ」