─3歳児への贈り物─
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
ヴァリエール邸の初夏の庭は、かつてないほど「熱い」空気感に包まれていました。
事の始まりは、14歳皇太子エドワードが今回のレオンを褒める為に頑張ったで賞という名のプレゼントを上げる事でした。
「泥石鹸」という世紀の発明と、天使の悪戯の罠の数々、それに対する王家の報奨が、いつの間にやら兄たち(同級生同士)による報奨合戦に発展したのです。
「レオン、これを君にプレゼントだ。すっごく頑張った子にご褒美をあげないとな」
エドワードは余裕の笑みで差し出したのは、王室御用達の職人が手掛けた「極上の手触りモフモフライオン」です。
指が沈み込むような黄金の毛並みに、レオンと同じ瞳が宝石のように輝いています。
「うわぁー! ライオンさん! おてて、ふわふわなの! いっしょにねんねするー!」
レオンがぬいぐるみに顔を埋めて悶絶しています。
大きさもほぼレオンと同じです。
それを見たエドワードは「勝ったな」と言わんばかりに、満足げな笑みを浮かべていました。
だが、その横で鼻で笑う少年が一人……。
「ふん……。エドワード殿下。そんな『柔らかいだけ』の代物でレオンの魂が、満足させられるとお思いですか?」
十四歳の騎士訓練生、アルベルトが重々しく一歩前に出ました。
「……レオン。真の男には、時を越えて語り継がれる歴史という重みが必要だ。……さぁ、ごらん!これが歴史そのものの姿だぁ!!」
アルベルトがどやぁ顔で差し出したのは、大人の顔ほどあるアンモナイトの化石でした。
茶褐色に変色し、見事な渦を巻いたその石の塊は、アルベルトが三ヶ月分のお小遣いを使い、手に入れた「男の至宝」です。
ですが……、ここから二人の絶望的なすれ違いが幕を開けました。
まず造形美の価値観!
アルベルト(14歳ロマンの主張)
「見ろ、レオン! この完璧な『黄金比の螺旋』を! 自然が万年の時を重ねても変わらなかった不変的な模様だぞ!」
レオン(3歳直感の感想)
「……にーちゃ。それ、クルクルの……なに?」
「なっ…………!?」
アルベルトの喉が、引き攣った音を立てます。
黄金比、螺旋美の極致。
それが三歳児の語彙力フィルターを通った瞬間、茶色いクルクルという、あまりに惨泩な名詞になりました。
永劫の時への理解!
アルベルト(14歳ロマンの主張)
「これは数万年前、海の覇者だった古代生物の証だ! 時の重みが石となって宿った『太古の記憶』なんだぞ!」
レオン(3歳直感の感想)
「…………。……にーちゃ。これ、はしやさんの、……うんちなの? ……カチコチなの。大丈夫かな?」
「……っ?!……海の覇者が、ただの便秘に化けた?!……そ、そんな!」
アルベルトの顔が愕然と青ざめます。
エドワードは口元を手で塞ぎ、必死に笑いをこらえます。かなり無理しているのか、顔がものすごく真っ赤です。
アルベルトは顔に手を当て考えます。
身体が震わせながら、どうすればレオンに、歴史的ロマン、太古の息吹を……、わかって貰えるのか考えるのです。
男の宝物とは?
アルベルト(14歳ロマンの主張)
「レオン、これは長い年月をかけて出来たモノなんだ。 これは時を停め石になって、存在価値を明確にしたんだ! どんな盾よりも硬く、歴史的重みと価値があり、男の部屋に飾るにふさわしい『重厚でオシャレな置物』なんだ!」
レオン(3歳直感の感想)
「……、にいちゃ、でも、それうんちなの」
「だから、これはうんちではなく……」
アンモナイトをレオンに近づけ良く見せようとするが……。
「……うわぁぁぁん! にーちゃが、おかしい!おっきな、うんちさんはナイナイなの!お飾りしたらダメ、ぽいしゅるのー!!」
飛び跳ねて後ずさり、首をブンブンと嫌がるレオンです。
「あはははは! アルベルト、お前の『黄金比』も『海の覇者』も、レオンのフィルターを通せばただの『巨大なうんち』だ!」
エドワードは床を叩いて笑い転げ、アルベルトは化石を手に持ったまま、真っ白に燃え尽きてしまいました。
「……太古の息吹が…………。骨董商に三日も説得して譲り受けた海の王者が…………」
……すると、泣き止んだレオンが、エドワードの背後からおずおずと顔を出し、申し訳なさそうに言いました。
「……にーちゃ、泣かないで。その……、おっきなうんちさん、お庭の端っこに、飾ってあげるの。……ありさんの、お家にする……」
「……これ、アンモナイトなんだ…………化石、なんだよ…………」
アルベルトの震える声は、初夏の爽やかな風にかき消されていきました。
こうして、……アルベルトが選んだ「至高のロマン」は、ヴァリエール邸の庭の隅で、蟻たちが住まう「(自称)巨大な落とし物」という名のオブジェになり、静かに第二の人生を歩むことになったのです。
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