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小さな賢者は隠しごと 〜三歳のレオンは、のほほんと照らす〜  作者: マシュマロ羊


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38/38

─レオンの救済計画─

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

お待たせいたしました。

ひとときのほほんとよろしくお願いします。

不定期になりますが、のんびりお付き合い

いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)

 





 庭の隅に置かれた「太古のロマン(別名:巨大な落とし物)」を前に、三歳のレオンは小さな胸を痛めていました。

 隣では兄アルベルトが真っ白に燃え尽きたまま、彫像のように固まっています。

 あの力なく転げ落ちたアンモナイトの化石は、夕陽を浴びていっそう茶色く、さらにそれっぽく輝いていました。


「……にーちゃ。うんちさん、お外に出て、かわいそう。ボク、きれいきれい、してあげる」


 レオンは、短い足でパタパタと部屋へ走り、特製の泥石鹸を抱えて戻ってきました。



「うんちさん、がんばなの。ぴかぴかよ!」


 レオンは小さなバケツに水を汲み、一生懸命にアンモナイトを洗い始めました。

 泥石鹸のキメ細やかな泡が、数万年の時を経た化石の溝……アルベルトが「完璧な螺旋」と呼んだその隙間に、入り込んでいきます。


「こねこね、しゅるの! ぴかぴか、なの!」


 レオンの小さな手が、泥石鹸の洗浄成分と、のほほんな願いが注ぎます。

 するとどうでしょう!

 茶褐色だった石の表面が、みるみるうちに不思議な光沢を帯び始めました。


 翌朝……、日課の庭の散歩に出た侯爵ヴィクトールは、生垣のそばで立ち止まり、思わず二度見しました。


「……な、なんだ、あれは!」


 そこには朝日を浴びて、ヌラヌラと異様な光沢を放つ()()が鎮座していました。

 昨日のアンモナイトは、乾いた石の塊でした。しかし!レオンに磨き上げられたそれは!まるでたった今、生み落とされたかのように、生々しい艶と潤いを湛えていたのです。


「とーさま、 おはよう。見て、うんちさん、ちゅるちゅるよ」


 レオンが自慢げに指差します。

 その後ろでは、少し立ち直ったアルベルトが、複雑な表情でそれを見つめていました。


「……父上。レオンが磨いてくれたおかげで、化石の表面に隠れていた鉱物が露出し、真珠のような光沢を放つ『アンモライト』のような輝きに……」


「アルベルト、黙れ。……レオン、よく聞きなさい」


 ヴィクトールは眉間に深い皺を刻み、こみ上げる「何か」を必死に抑えて言いました。


「……お前の石鹸の効果は認めよう。だがな、これ以上それを磨くのはやめなさい。……リアリティが増しすぎて、すこぶる気持ちが悪い」


「えーっ! これ、にーちゃの、お宝さんよ」


「……ああ、わかっている。わかっているから、玄関には置かないでくれ。心臓に悪い……」


 ヴィクトールは、庭の隅で神々しく光り輝く「巨大な茶色の螺旋」を遠い目で見つめ、心の中で亡き妻に語りかけました。


(エレーナ……。我が息子たちは、『発光する排泄物(のような化石)』を……、それより前代未聞だ。数万年の時を越えた石すら、ここまで生々しく蘇らせる必要あるのか……?)


「にーちゃ、 ピカピカ、うんちさん」


「……ああ。そうだな、レオン。……うんちじゃないけどな」


 小さな弟に手を引かれ、苦笑いするアルベルト……。

 ヴァリエール侯爵家の庭には、平和で少しシュールな笑い声が響き渡ります。





「……ブッ、アハハハハハ! 傑作だ! まさか一晩で太古の覇者が、これほどのヌラメキ?で蘇るとは!」


 侯爵邸の庭園では、皇太子の品格をかなぐり捨てたエドワードの爆笑が響き渡りました。

 彼が指差す先には、レオンの泥石鹸で丹念に磨き上げられ、朝日を浴びてヌラヌラと生命力と煌めきに溢れた茶色の螺旋……。


「エドワード殿下! 笑いすぎです! 」


 顔を真っ赤にしたアルベルトが食ってかかりますが、エドワードは涙を拭いながら肩を揺らします。


「いや、失礼。だが、あまりに質感が……その、生々しくてな。侯爵家はいつ来ても飽きないよ。これほど愉快な光景……、ブハァ!王宮の退屈、な政務ではお、お目にかかれない……、クッ」


 エドワードはなんとか笑いが収まると、目を細めながら忙しなく動き回る、侯爵家の面々を見つめました。


(……変わったな。この家は)


 かつてのヴァリエール侯爵家といえば、誰もが息を潜め、硬く、冷たい空気が満ちていました。


 軍師として冷徹だったヴィクトール。

 規律の塊のようなアルベルト。

 そして……、母の死を背負いながら、完璧な人形であろうとしたカトリーヌ。

 それが今や、……どうだ!


「レオン! それを今すぐ片付けなさい! 衛兵が腰を抜かしているんだぞ!」


「ヤダ!! うんちさん、きれいきれい、したの! にーちゃの、お宝なの───!」


「父上! レオンを叱らないでください! そもそもこれは俺が……いや、俺のロマンが……っ!」


 ヴィクトールが必死に「螺旋」を撤去しようとし、レオンがその足にしがみついて阻止し、アルベルトがその間で、プライドと弟への愛の狭間で支離滅裂な動きをしている。


 その喧騒を少し離れた場所から見守っているカトリーヌは、静かに溜息をつきました。

 彼女の横でエドワードは、楽しげに語りかけます。


「カトリーヌ、君の父上も兄上も、随分と人間らしくなったな。全てはあの小さな賢者(レオン)のおかげだな♪」


「……ええ、それは重々承知しておりますわ。……ですが」


 カトリーヌは、ヌラヌラと輝くアンモナイトを見つめ、眉間をわずかに寄せます。


「……何かが、違うのです。私が夢見ていた『温かな家族の風景』は、もっとこう……刺繍をしたり、詩を詠んだり、穏やかな……お、お茶会を楽しむような、そんな優雅なものだったはずでは?……どうして我が家は、朝から『発光する排泄物(のような石)』を巡って、軍師と騎士候補生が幼児と格闘しているのでしょうか?」


「アハハハハ! それこそがレオンの魔法じゃないか。予定調和を全てぶち壊すんだ」




 騒ぎは収まるどころか、さらにレオンが「あ、エドにぃも、きれいきれいしゅる?」と、泡だらけの手でエドワードに突撃し、王太子が悲鳴を上げて逃げ回るという地獄絵図へと発展します。

 カトリーヌは、空を見上げてそっと呟きました。


「お母様。……家族が仲良くなったのは嬉しいですけれど、……これで本当に良かったのか私、時々わからなくなりますわ」


 その視線の先ではヴィクトールが、レオンをひょいと抱き上げ、アルベルトが泣きべそをかくレオンを宥め、エドワードが泥のついた服を笑い飛ばしています。

 カトリーヌの困惑をよそに、侯爵家は今日も騒がしく、泥臭くて、そして最高に生きた時間を刻んでいるのでした。








読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

たくさんのブクマやポイント

ありがとうございます( * ॑꒳ ॑*)

とても励みになり、がんばろうと思いです。

メールもとても嬉しいです。

ネタになることもあります♪

誤字脱字もありがとうございます。(о´∀`о)


ここで一旦完結致します。

つぎの話は夏へと向かいます。

少々お時間頂きます(。>ㅅ<。;)sorry…


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― 新着の感想 ―
レオンの可愛らしさが無茶苦茶伝わってきました。とっても面白かったです。 続編楽しみにしています。
いつも楽しく読ませていただいております。 続きもあわてませんので、マイペースでお願いします。
アンモナイトがアレに見えるなんて…。 会場で赤い平たい石を展示して肉屋さんみたくしていたお店も有りました。 アンモナイトや貝の化石はオパール化したり中が水晶の結晶群化したようなキラキラ系も有りますし、…
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