─レオンの救済計画─
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
庭の隅に置かれた「太古のロマン(別名:巨大な落とし物)」を前に、三歳のレオンは小さな胸を痛めていました。
隣では兄アルベルトが真っ白に燃え尽きたまま、彫像のように固まっています。
あの力なく転げ落ちたアンモナイトの化石は、夕陽を浴びていっそう茶色く、さらにそれっぽく輝いていました。
「……にーちゃ。うんちさん、お外に出て、かわいそう。ボク、きれいきれい、してあげる」
レオンは、短い足でパタパタと部屋へ走り、特製の泥石鹸を抱えて戻ってきました。
「うんちさん、がんばなの。ぴかぴかよ!」
レオンは小さなバケツに水を汲み、一生懸命にアンモナイトを洗い始めました。
泥石鹸のキメ細やかな泡が、数万年の時を経た化石の溝……アルベルトが「完璧な螺旋」と呼んだその隙間に、入り込んでいきます。
「こねこね、しゅるの! ぴかぴか、なの!」
レオンの小さな手が、泥石鹸の洗浄成分と、のほほんな願いが注ぎます。
するとどうでしょう!
茶褐色だった石の表面が、みるみるうちに不思議な光沢を帯び始めました。
翌朝……、日課の庭の散歩に出た侯爵ヴィクトールは、生垣のそばで立ち止まり、思わず二度見しました。
「……な、なんだ、あれは!」
そこには朝日を浴びて、ヌラヌラと異様な光沢を放つ何かが鎮座していました。
昨日のアンモナイトは、乾いた石の塊でした。しかし!レオンに磨き上げられたそれは!まるでたった今、生み落とされたかのように、生々しい艶と潤いを湛えていたのです。
「とーさま、 おはよう。見て、うんちさん、ちゅるちゅるよ」
レオンが自慢げに指差します。
その後ろでは、少し立ち直ったアルベルトが、複雑な表情でそれを見つめていました。
「……父上。レオンが磨いてくれたおかげで、化石の表面に隠れていた鉱物が露出し、真珠のような光沢を放つ『アンモライト』のような輝きに……」
「アルベルト、黙れ。……レオン、よく聞きなさい」
ヴィクトールは眉間に深い皺を刻み、こみ上げる「何か」を必死に抑えて言いました。
「……お前の石鹸の効果は認めよう。だがな、これ以上それを磨くのはやめなさい。……リアリティが増しすぎて、すこぶる気持ちが悪い」
「えーっ! これ、にーちゃの、お宝さんよ」
「……ああ、わかっている。わかっているから、玄関には置かないでくれ。心臓に悪い……」
ヴィクトールは、庭の隅で神々しく光り輝く「巨大な茶色の螺旋」を遠い目で見つめ、心の中で亡き妻に語りかけました。
(エレーナ……。我が息子たちは、『発光する排泄物(のような化石)』を……、それより前代未聞だ。数万年の時を越えた石すら、ここまで生々しく蘇らせる必要あるのか……?)
「にーちゃ、 ピカピカ、うんちさん」
「……ああ。そうだな、レオン。……うんちじゃないけどな」
小さな弟に手を引かれ、苦笑いするアルベルト……。
ヴァリエール侯爵家の庭には、平和で少しシュールな笑い声が響き渡ります。
「……ブッ、アハハハハハ! 傑作だ! まさか一晩で太古の覇者が、これほどのヌラメキ?で蘇るとは!」
侯爵邸の庭園では、皇太子の品格をかなぐり捨てたエドワードの爆笑が響き渡りました。
彼が指差す先には、レオンの泥石鹸で丹念に磨き上げられ、朝日を浴びてヌラヌラと生命力と煌めきに溢れた茶色の螺旋……。
「エドワード殿下! 笑いすぎです! 」
顔を真っ赤にしたアルベルトが食ってかかりますが、エドワードは涙を拭いながら肩を揺らします。
「いや、失礼。だが、あまりに質感が……その、生々しくてな。侯爵家はいつ来ても飽きないよ。これほど愉快な光景……、ブハァ!王宮の退屈、な政務ではお、お目にかかれない……、クッ」
エドワードはなんとか笑いが収まると、目を細めながら忙しなく動き回る、侯爵家の面々を見つめました。
(……変わったな。この家は)
かつてのヴァリエール侯爵家といえば、誰もが息を潜め、硬く、冷たい空気が満ちていました。
軍師として冷徹だったヴィクトール。
規律の塊のようなアルベルト。
そして……、母の死を背負いながら、完璧な人形であろうとしたカトリーヌ。
それが今や、……どうだ!
「レオン! それを今すぐ片付けなさい! 衛兵が腰を抜かしているんだぞ!」
「ヤダ!! うんちさん、きれいきれい、したの! にーちゃの、お宝なの───!」
「父上! レオンを叱らないでください! そもそもこれは俺が……いや、俺のロマンが……っ!」
ヴィクトールが必死に「螺旋」を撤去しようとし、レオンがその足にしがみついて阻止し、アルベルトがその間で、プライドと弟への愛の狭間で支離滅裂な動きをしている。
その喧騒を少し離れた場所から見守っているカトリーヌは、静かに溜息をつきました。
彼女の横でエドワードは、楽しげに語りかけます。
「カトリーヌ、君の父上も兄上も、随分と人間らしくなったな。全てはあの小さな賢者のおかげだな♪」
「……ええ、それは重々承知しておりますわ。……ですが」
カトリーヌは、ヌラヌラと輝くアンモナイトを見つめ、眉間をわずかに寄せます。
「……何かが、違うのです。私が夢見ていた『温かな家族の風景』は、もっとこう……刺繍をしたり、詩を詠んだり、穏やかな……お、お茶会を楽しむような、そんな優雅なものだったはずでは?……どうして我が家は、朝から『発光する排泄物(のような石)』を巡って、軍師と騎士候補生が幼児と格闘しているのでしょうか?」
「アハハハハ! それこそがレオンの魔法じゃないか。予定調和を全てぶち壊すんだ」
騒ぎは収まるどころか、さらにレオンが「あ、エドにぃも、きれいきれいしゅる?」と、泡だらけの手でエドワードに突撃し、王太子が悲鳴を上げて逃げ回るという地獄絵図へと発展します。
カトリーヌは、空を見上げてそっと呟きました。
「お母様。……家族が仲良くなったのは嬉しいですけれど、……これで本当に良かったのか私、時々わからなくなりますわ」
その視線の先ではヴィクトールが、レオンをひょいと抱き上げ、アルベルトが泣きべそをかくレオンを宥め、エドワードが泥のついた服を笑い飛ばしています。
カトリーヌの困惑をよそに、侯爵家は今日も騒がしく、泥臭くて、そして最高に生きた時間を刻んでいるのでした。
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つぎの話は夏へと向かいます。
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