─小さな賢者の世界─
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
レオンの決意を聞いた日、侯爵邸の面々はレオンが差し出した作戦図を囲み、真剣な面持ちで会議をしたのです。
しかし……、数日の無理が祟ったレオンは熱を出し、「ぴかぴか・ガォー作戦!」と宣言した途端、ヴィクトールの腕の中でパタリと倒れてしまいました。
ヴィクトールはレオンを部屋に連れて行った後、戻ってきません。
「……さて。小さな賢者の御心は決まった」
側近のマルクスは忙しい中、作戦に加わる事になりました。
ヴィクトールより「ぶち殺せ!!」と、指令は出ています。
「作戦名は、主の言葉を尊重しつつ、対外的には『天使の悪戯』と呼称する。……各員、異論はあるか?」
「『悪戯』は楽しいよな……」
マルコが不敵に笑い、殺る気です。
逆にブルーノは静かな覇気を垂れ流し……。
「……坊ちゃまが『ぴかぴか』にしたいと仰るのだ。一粒の塵敵も残さず、この邸から抹消して差し上げよう」
……殺る気でした。
マルクスがレオンの作戦図という落書きを広げ、少しずつ落書きを解読している中、邸内の使用人たちはレオンの絵にいたく感動していました。
3歳の幼子にしては、とても上手に描けていたからです。
「前はただぐちゃぐちゃと描くだけだったのに……」
「見ろ!これはバケツだな」
「丸も描いて、手足だ。線だけど、ちゃんと人と分かるぞ!」
もはや図面を前に作戦会議ではありません。
ただの親バカ披露会に成り下がりました。
******************
侯爵家の主寝室──。
いつもは威厳に満ちたヴィクトールが、今は一人の父親として、ベッドに横たわる息子の手を握りしめていました。
レオンの額には、冷たく絞ったタオルが置かれています。
数時間前……、不安そうな顔で作戦図を渡し、「ピカピカ・ガォー作戦」と誇らげに言った後、レオンは糸が切れた人形のようにパタリと倒れたのです。
「……すまない、レオン。お前にここまで不安を抱かせていたとは」
ヴィクトールはレオンの熱い手のひらを、自分の頬に当てました。
レオンは大泣きしながら「ボクのせいで、ごめんなさい」と謝り、泥石鹸のせいでみんなが危ない目に遭う、自分のせいだと……。
その言葉を聞いた時、ヴィクトールは胸が張り裂けそうになりました。
レオンはまだ3歳で、本来ならおもちゃを壊したとか、お菓子をこぼしたとか、そんな些細なことで泣くべき年齢です。
「……ん……。……ちち……」
うなされていたレオンが、かすかに目を開けます。
意識が朦朧としているせいか、「お父さま」と呼ぼうと背伸びするレオンが、本能のままに「ちち」と……。
「ああ、ここにいるぞ。レオン、大丈夫だ。誰も怒っていないし、誰もいなくなったりしない」
「……わな……。……ある、の……」
「わかっている。最高の作戦図だ。マルクスも、アルベルトも、あれを見て『これなら絶対に勝てる』と笑っていたぞ。お前はみんなを救う勇者だな」
ヴィクトールは優しく語りながら、レオンの髪を撫でます。
実際あの「ピカピカ・ガォー(締まらないな)」の図面を見たブルーノは、「さすがレオン様」と言ったので、理解したのでしょう。
哀しい事にヴィクトールには分かりません。
「……みんな……。……げんき……?」
「ああ。マルコは『坊ちゃまが起きたら最高のスープを出す』と張り切っているし、カトリーヌはお前のために新しい絵本を山ほど用意している。だから、レオン。もう一人で考えなくていい。お前は、のほほんと、笑っていればいいんだ」
ヴィクトールの低い、包み込むような声に安心したのか、レオンの呼吸が次第に深く、穏やかになっていきます。
(この子には叡智はあるが、心も身体もまだこんなにも幼い……)
ヴィクトールは決意します。
「利権争い」や「不穏な空気」を完全に収束させ、いつもの穏やかな侯爵家を戻そうと、その為に多少の危険は伴うだろう。
しかし長引けばバレるリスクが増え、体力や精神に負担がかかり、いつか隙が生まれる……。
レオンの考えたエグい罠を、大人が本気で徹底的に実行すれば、害虫は一人残らず駆除され、近づく気も起きない様にすり潰せないだろうか……。
「おやすみ、私の小さな軍師どの。……後のことは父に任せなさい」
ヴィクトールは、眠るレオンの額にそっと口づけを落とし、その瞳には父親としての慈愛と、家主としての冷徹な守護者の光が宿っていました。
……コンコン。
「……失礼します、旦那様。ただいまエドワード殿下がお見えですが、……いかがなさいますか。お会いにならないとお考えでしたら、私が適当な理由をつけ、お引き取り願いますが……」
そういえば懸念があり、お伺いしなければならない事があったのです。
「……いやお会いしよう。セバス、レオンを頼む」
……立ち上がり穏やかな寝顔にホッとしながら、この平穏を守りたい。
レオンを安心させるように、もう一度優しく頭を撫で、ヴィクトールは部屋を後にしました。
**************
王妃イザベラが独断で大聖堂へ乗り込み、教会との提携を取り付けてきたという報せは、すぐさま侯爵邸のヴィクトールのもとへ届きます。
国家と宗教の巨大な利権に巻き込まれたのではないか。愛する息子レオンがその渦中に引きずり出されるのではないか……。
憤りと不安を抱くヴィクトールに対し、邸を訪れたエドワードは、その「真意」を説明するために訪れたのでした。
侯爵邸の書斎。
ヴィクトールは届けられたばかりの親書を握りしめ、厳しい表情でエドワードを見据えます。
「エドワード殿下……。王妃様は一体、何を考えておいでなのですか。教会を生産拠点にし、諸外国へ出すなど……。これでは政治の道具と同じです」
ヴィクトールの懸念はもっともでした。
三歳のレオンが起こした気遣いが、大人の欲望に晒され、傷つく事を何よりも恐れているのです。
「ヴィクトール卿、落ち着いて聞いてほしい。母上が独断で動いた事は、本当に申し訳なく思う。ただ母上もいろいろと考え、レオンに鉄壁の盾を作る為に必要な事でした」
「……どういう意味ですか?」
「今この石鹸の噂はすでに欲深い貴族や他国の密偵の耳に届き、彼らは侯爵家をありとあらゆる角度から探りに来ています。本当の発明者がいないのか、居たなら連れ出そうと、この邸を包囲し隙を伺っています。そんな状態が長引く事は、三歳のレオンにとって良くない。もしその矢面に立たされることになれば、どうするおつもりですか」
エドワードの声には、レオンを守ろうとする強い意志が宿っていました。
王妃やエドワードもまた、今の状態をどうにかしようと足掻いているのです。
でも……、それ以上に彼らの動きが早すぎるから……。
「母上は大聖堂で、ベネディクト大司教にこう告げました。『発明者は、亡き母の遺志を継いだカトリーヌである』と……。そして生産を教会の孤児院という『聖域』に預けることで、この邸はただの住処……つまりレオンが誰にも邪魔されず、のびのびと自由に生きていられる『生活の場』、今までと何も変わりません」
ヴィクトールは絶句しました。
王妃イザベラはあえて冷徹な独裁者として動いたのは、親友エレーナの息子を歴史から隠し通す為ではなく、自由に生きるようにする為だったのです。
「教会が盾となり、カトリーヌ次期王妃が看板となれば、誰もこの奥庭のレオンまで辿り着けません。母上はエレーナ殿の『自由に生きてほしい』という願いを、国家規模の嘘で塗り固め守ろうとしているのです」
エドワードは、ふっと表情を和らげました。
「……レオンの今の状況は母上が一番懸念していた事です。今は自分の作ったものが世界を動かした事など知らず、この庭でのほほんと過ごす。母上はそれを、これから先も変わらない事がお望みなのです」
誰もが……、まだ3歳という小さな賢者を守ろうと、自分に出来る事を考え動いていたのです。
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