─小悪魔降臨─
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
商業ギルドの総代は、ヴァリエール邸から届いた「王家管理品につき、流通不可」という公文書を前に、深いため息をつきました。
「……やりおった、ヴァリエール侯爵。王家を巻き込んで『研究中』と言い張れば、我々は手も足も出せん」
「総代、裏ルートの探りを入れますか?」と部下が囁きますが、総代は首を振りました。
「馬鹿を言え。王妃様自ら『応援している』と仰ったらしい。今あそこに触れるのは、虎の尾を踏むより危険だ」
侯爵家がある方角を見つめ、少し思案に耽ます。
「……しかし、商人たちの中には、侯爵邸まで乗り込んだ者もいたとか」
「……の割には異様に静か過ぎる。以前は皇太子も毎日のように向かわれていたようだが……、ある意味不気味だと思わないか?」
総代は手紙の内容も踏まえて、考えました。
判断を間違えれば、取り返しのつかない事になりそうだからです。
「……今は静観しろ。カトリーヌ嬢が『完成』を宣言した瞬間、一番に頭を下げられるように、最高級の贈り物を用意しておけ」
たぶんこれが……、間違いない答えのようです。
ブカブカのゴーグルを付けたレオンは、鼻歌を歌いながら大きな鍋の前に立っています。
大きなヘラでグツグツ煮込むマルコは、ボコッボコッという凶悪なブツを前に笑いが止まりません。
「アハハハ、こりゃスゲーな!」
「……ドロドロ、いーぱい。……あ、これ!もっとしゅごい♪」
彼が小さな手で放り込んだのは、厨房の片隅にある廃油と、暖炉の灰でした。
鍋の中身は、次第に密色から黒に増しながら、糸を引けば天井まで届きそうなほどの、凶悪な粘り気を帯びています。
「できたの! 悪さんの『ベタベタ』♪」
3歳児は無垢な笑顔で、たくさんの凶悪なアイテムを作り出しました。
とても楽しそうに使い所を考えて、ワクワクとトラップを仕掛ける様子が伺えます。
「閣下……、無邪気って、……こういう事なんですね。今更ながら理解しました」
マルクスは遠い目をして言いました。
「……」
(……なぁ、エレーナ。これは養育としてどうなんだ?やらせていいのか?)
ヴィクトールは、今更ながら苦悩します。
その横で……。
「もっと濃くていいのですわ!もう原液でよろしくてよ。面倒が省けていいのよ!」
カトリーヌがゴーグルと手袋を付け、鼻と口を布で覆いながら、メイドたちと一緒に古布を漬け込んでいました。
「他に材料になるのあるかしら?」
なんだか段々と楽しくなってきた、カトリーヌ。
それはどうやらメイドたちも同じようで……。
「……唐辛子」
「予算オーバーですわ」
「……ワサビ」
「……アリですわ。レオン、ワサビならどうすべき?」
「うっ?……う~ん、……す?」
「だ、そうですわ。すぐに準備を!お兄様、ワサビ大量にお願いしますわ」
「えっ?!あぁ……、わかった!」
(なぁ……、これは教育としてどうなんだろうな)
状況も忘れ、思わず苦悩するヴィクトールでした。
「すぐできる」爆速レシピ(カトリーヌ流)
これを作れば、あなたも素敵な『最高の淑女』になれますわ♪作業時間は3分です。
刻む: ホースラディッシュ(西洋わさび)の根っこを、とにかく細かく刻むか、石で叩き潰します。
混ぜる: 瓶にそのワサビを詰め込み、安物の「強い酢(ワインビネガーの出来損ないなど)」を注ぎます。
振る: 1分間、親の仇のように振り続けます。
これで酢の中に刺激成分が溶け出し、「開栓禁止の化学兵器」が完成します。
「ねーたま、しゅごい!」
「オーホッホッホ、私にかかれば造作もない事ですわ!」
レオンはキラキラした目でカトリーヌを尊敬しました。カトリーヌが余りにも鮮やかに『悪戯アイテム』を作ったからです。
「……最近カトリーヌも、ストレス溜まってたからなぁ」
「すまない……、お前たちも大変だろう」
申し訳なさげにヴィクトールが言うと、アルベルトはフッと笑い、父親の背をバシッと叩きました。
「……ッ?!」
「弟の命に危険が伴うなら、今出来る事をとことんするのが、兄姉というものです」
ニヤリと唇の端を上げ笑うアルベルトに……。
(……っ、エレーナ!みんな立派に成長しているぞ)
「閣下……、でも作ったモノは劇物ですよ」
感動して涙ぐむヴィクトールに、マルクスは冷静にツッコミを入れました。
アルベルトはその後、落とし穴を愉しげに掘っていたのです。
侯爵家は確実に要塞として、変貌を遂げようとしていました。
深夜の静寂を破り、屋敷の重厚な正面扉がこじ開けられました。
「へへっ、お宝は目の前だぜ。野郎ども、一気に行くぞ!」
抜き足差し足で踏み込んだ賊たちは、目の前に広がる豪華なレッドカーペットを見て、勝利を確信しました。
絨毯に一歩彼らが体重を乗せた瞬間――異変が起きます。
ブッ、チュウゥ……。
「……ん? ぬ、抜けねえ。足が、……思うように、動かねえぞ!?」
先頭の男が焦って足を上げようとしますが、靴底が絨毯に吸い付いて離れません。
それどころか、もがけばもがくほど、カーペットの毛足に潜ませた『レオン特製ベタベタ』が、獲物に粘着の細い糸がまとわり付き、ヌチャッと足を固定しました。
「おい、何してやがる! 早くしろ!」
後ろの連中が苛立って突き飛ばすと、先頭の男は前のめりに転倒します。
「うわっ?!」
どっちゃっ……!!
顔面から絨毯にダイブした男の叫び声は籠もった呻きに変わり、絨毯と一体化しました。
助けようとした仲間も、また重なり合い、
どちゃぁぁあ……!!
「お頭! 手が、手が離れねえ! 肩までくっついてぇぇ?!」
……さらにその上へ後続が突っ込んでいきます。
……べちゃぁぁぁ、ずりりぃい!
「馬鹿野郎、俺に捕まるな! お前まで……ああっ、俺の背中に乗っかるなあぁあ!!」
あぁ……、美しき集団行動、仲間意識!
玄関ホールに広がるレッドカーペットは、今や巨大な『人間ハエ取り紙』と化しています。
十数人の屈強な男たちが、まるで芋虫のように重なり合い、ウゴウゴと蠢き、「あががが」と情けない声を上げていました。
そこへ二階の手すりの隙間から、ふわふわのパジャマ姿のレオンが顔を出し……。
「あっ!……いもむしさん? 」
首を傾げキョトンとしたレオンが「ウゴウゴ、ちてるの」と指を差して言うと、状況を把握した執事や使用人たちは、真っ青な顔で「……これ、どうやって剥がすんです?」と震えて言いました。
翌朝……、剥がされた後の賊たちの顔には、反抗すら思い浮かばない魂の抜けた虚無と、絶望に染まっています。
「お待ちなさい!」
カトリーヌがツカツカと賊の前に立つと、プシュゥゥゥ……?!
「ぎええええええええッ!! 目が! 鼻が! 酸っぱ痛いいいいいいい!!」
ワサビ酢の細かい霧が、賊の粘膜を直撃しました。
転げ回りながら、充血した目を見開き、顔を掻き毟るような動作をする仲間の姿に、圧倒的な恐怖を植え付けたのです。
その光景は余りにも無慈悲でした。
中には白目を剥いて気絶した仲間もいます。
次は自分の番かもしれない――。その根源的な恐怖に、彼らの膝は無様に震えます。
「……フフ、使えそうですわ♪」
恐怖を植え付けた次期王妃カトリーヌ10歳は、とっても明るい声で言い微笑んでいました。
試作品はまだまだ、たくさんあるのです。
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