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小さな賢者は隠しごと 〜三歳のレオンは、のほほんと照らす〜  作者: マシュマロ羊


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22/38

─小悪魔降臨─

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

お待たせいたしました。

ひとときのほほんとよろしくお願いします。

不定期になりますが、のんびりお付き合い

いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)

 





 商業ギルドの総代は、ヴァリエール邸から届いた「王家管理品につき、流通不可」という公文書を前に、深いため息をつきました。


「……やりおった、ヴァリエール侯爵。王家を巻き込んで『研究中』と言い張れば、我々は手も足も出せん」


「総代、裏ルートの探りを入れますか?」と部下が囁きますが、総代は首を振りました。


「馬鹿を言え。王妃様自ら『応援している』と仰ったらしい。今あそこに触れるのは、虎の尾を踏むより危険だ」


 侯爵家がある方角を見つめ、少し思案に耽ます。


「……しかし、商人たちの中には、侯爵邸まで乗り込んだ者もいたとか」


「……の割には異様に静か過ぎる。以前は皇太子も毎日のように向かわれていたようだが……、ある意味不気味だと思わないか?」


 総代は手紙の内容も踏まえて、考えました。

 判断を間違えれば、取り返しのつかない事になりそうだからです。


「……今は静観しろ。カトリーヌ嬢が『完成』を宣言した瞬間、一番に頭を下げられるように、最高級の贈り物を用意しておけ」


 たぶんこれが……、間違いない答えのようです。






 


 ブカブカのゴーグルを付けたレオンは、鼻歌を歌いながら大きな鍋の前に立っています。

 大きなヘラでグツグツ煮込むマルコは、ボコッボコッという凶悪なブツを前に笑いが止まりません。


「アハハハ、こりゃスゲーな!」


「……ドロドロ、いーぱい。……あ、これ!もっとしゅごい♪」


 彼が小さな手で放り込んだのは、厨房の片隅にある廃油と、暖炉の灰でした。


 鍋の中身は、次第に密色から黒に増しながら、糸を引けば天井まで届きそうなほどの、凶悪な粘り気を帯びています。


「できたの! 悪さんの『ベタベタ』♪」


 3歳児(レオン)は無垢な笑顔で、たくさんの凶悪なアイテムを作り出しました。

とても楽しそうに使い所を考えて、ワクワクとトラップを仕掛ける様子が伺えます。


「閣下……、無邪気って、……こういう事なんですね。今更ながら理解しました」


 マルクスは遠い目をして言いました。


「……」


(……なぁ、エレーナ。これは養育としてどうなんだ?やらせていいのか?)


 ヴィクトールは、今更ながら苦悩します。

 その横で……。


「もっと濃くていいのですわ!もう原液でよろしくてよ。面倒が省けていいのよ!」


 カトリーヌ(次期王妃)がゴーグルと手袋を付け、鼻と口を布で覆いながら、メイドたちと一緒に古布を漬け込んでいました。


「他に材料になるのあるかしら?」


 なんだか段々と楽しくなってきた、カトリーヌ。

 それはどうやらメイドたちも同じようで……。


「……唐辛子」


「予算オーバーですわ」


「……ワサビ」


「……アリですわ。レオン、ワサビならどうすべき?」


「うっ?……う~ん、……す?」


「だ、そうですわ。すぐに準備を!お兄様、ワサビ大量にお願いしますわ」


「えっ?!あぁ……、わかった!」


(なぁ……、これは教育としてどうなんだろうな)


 状況も忘れ、思わず苦悩するヴィクトールでした。




「すぐできる」爆速レシピ(カトリーヌ流)

 これを作れば、あなたも素敵な『最高の淑女』になれますわ♪作業時間は3分です。


 刻む: ホースラディッシュ(西洋わさび)の根っこを、とにかく細かく刻むか、石で叩き潰します。


 混ぜる: 瓶にそのワサビを詰め込み、安物の「強い酢(ワインビネガーの出来損ないなど)」を注ぎます。


 振る: 1分間、親の仇のように振り続けます。

 これで酢の中に刺激成分が溶け出し、「開栓禁止の化学兵器」が完成します。




「ねーたま、しゅごい!」


「オーホッホッホ、私にかかれば造作もない事ですわ!」


 レオンはキラキラした目でカトリーヌを尊敬しました。カトリーヌが余りにも鮮やかに『悪戯アイテム』を作ったからです。


「……最近カトリーヌも、ストレス溜まってたからなぁ」


「すまない……、お前たちも大変だろう」


 申し訳なさげにヴィクトールが言うと、アルベルトはフッと笑い、父親の背をバシッと叩きました。


「……ッ?!」


「弟の命に危険が伴うなら、今出来る事をとことんするのが、兄姉というものです」

 

 ニヤリと唇の端を上げ笑うアルベルトに……。


(……っ、エレーナ!みんな立派に成長しているぞ)


「閣下……、でも作ったモノは()()ですよ」


 感動して涙ぐむヴィクトールに、マルクスは冷静にツッコミを入れました。

 アルベルトはその後、落とし穴を愉しげに掘っていたのです。


 

 侯爵家は確実に要塞として、変貌を遂げようとしていました。










 深夜の静寂を破り、屋敷の重厚な正面扉がこじ開けられました。


「へへっ、お宝は目の前だぜ。野郎ども、一気に行くぞ!」


 抜き足差し足で踏み込んだ賊たちは、目の前に広がる豪華なレッドカーペットを見て、勝利を確信しました。

 絨毯に一歩彼らが体重を乗せた瞬間――異変が起きます。


 ブッ、チュウゥ……。


「……ん? ぬ、抜けねえ。足が、……思うように、動かねえぞ!?」


 先頭の男が焦って足を上げようとしますが、靴底が絨毯に吸い付いて離れません。

 それどころか、もがけばもがくほど、カーペットの毛足に潜ませた『レオン特製ベタベタ』が、獲物()に粘着の細い糸がまとわり付き、ヌチャッと足を固定しました。


「おい、何してやがる! 早くしろ!」


 後ろの連中が苛立って突き飛ばすと、先頭の男は前のめりに転倒します。


「うわっ?!」


 どっちゃっ……!!


 顔面から絨毯にダイブした男の叫び声は籠もった呻きに変わり、絨毯と一体化しました。

 助けようとした仲間も、また重なり合い、

 どちゃぁぁあ……!!


「お頭! 手が、手が離れねえ! 肩までくっついてぇぇ?!」


 ……さらにその上へ後続が突っ込んでいきます。


 ……べちゃぁぁぁ、ずりりぃい!


「馬鹿野郎、俺に捕まるな! お前まで……ああっ、俺の背中に乗っかるなあぁあ!!」


 あぁ……、美しき集団行動、仲間意識!


 玄関ホールに広がるレッドカーペットは、今や巨大な『人間ハエ取り紙』と化しています。

 十数人の屈強な男たちが、まるで芋虫のように重なり合い、ウゴウゴと蠢き、「あががが」と情けない声を上げていました。

 そこへ二階の手すりの隙間から、ふわふわのパジャマ姿のレオンが顔を出し……。


「あっ!……いもむしさん? 」


 首を傾げキョトンとしたレオンが「ウゴウゴ、ちてるの」と指を差して言うと、状況を把握した執事や使用人たちは、真っ青な顔で「……これ、どうやって剥がすんです?」と震えて言いました。







 翌朝……、剥がされた後の賊たちの顔には、反抗すら思い浮かばない魂の抜けた虚無と、絶望に染まっています。


「お待ちなさい!」


 カトリーヌがツカツカと賊の前に立つと、プシュゥゥゥ……?!


「ぎええええええええッ!! 目が! 鼻が! 酸っぱ痛いいいいいいい!!」


 ワサビ酢の細かい霧が、賊の粘膜を直撃しました。

 転げ回りながら、充血した目を見開き、顔を掻き毟るような動作をする仲間の姿に、圧倒的な恐怖を植え付けたのです。

 その光景は余りにも無慈悲でした。

 中には白目を剥いて気絶した仲間もいます。

 次は自分の番かもしれない――。その根源的な恐怖に、彼らの膝は無様に震えます。


「……フフ、使えそうですわ♪」


 恐怖を植え付けた次期王妃カトリーヌ10歳は、とっても明るい声で言い微笑んでいました。


 試作品はまだまだ、たくさんあるのです。







読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

たくさんのブクマやポイント

ありがとうございます( * ॑꒳ ॑*)

とても励みになり、がんばろうと思いです。

メールもとても嬉しいです。

ネタになることもあります♪

誤字脱字もありがとうございます。(о´∀`о)

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― 新着の感想 ―
貴族の屋敷に簡単に入れた事を疑問に思わないとは・・・とんだ間抜け共ですね。
イェーイ!やったれ〰︎! レオンたんを泣かす奴らは、まとめて滅!滅!滅っ!
深夜ならレオンはおねむの時間では?
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