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小さな賢者は隠しごと 〜三歳のレオンは、のほほんと照らす〜  作者: マシュマロ羊


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21/38

─レオンの決意─

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

お待たせいたしました。

ひとときのほほんとよろしくお願いします。

不定期になりますが、のんびりお付き合い

いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)

 







 宣言を数日後に控えた侯爵邸。

 そこには……、いつもの笑い声が消えた奇妙で、重苦しい沈黙が流れていました。


 のほほんなレオンが、誰とも目を合わさずしゃべらず、ただひたすらに「何か」を作り続けているからです。





 侯爵邸を取り巻く空気は、2週間前からピンとさらに張り詰めていました。

 ヴィクトール、アルベルト、カトリーヌの不在が増える間、レオンを守るブルーノや邸内の使用人達は、迫りくる不穏な気配を感じ取っていたからです。しかし現在、彼らが何より狼狽している原因は、敵の影ではなく愛するレオン坊ちゃまの変貌でした。


「……レオン様は、またあそこにいらっしゃるのか」


 料理長のマルコが、心配そうに菜園の隅を見やると、ブルーノから貰ったブカブカの大人用ゴーグルを頭に載せ、小さな背中を丸めて地面に座り込むレオンの姿がありました。

 傍らにはブルーノが、周りを警戒しながらも、小さな主の変化に戸惑っているようです。

 ブルーノには珍しくレオンに幾度となく話し掛けているようですが、……返事をしてくれません。遠目で見てもブルーノが助けを求めるように、視線を向けてきます。

 それもまた奴には珍しい事でした。

 それだけ困っているのでしょう。


「レオン坊ちゃま、どうしたんだろう…… 」


 ニコも目じりを下げ、泣き笑いな顔をしています。マルコもどうしたらいいのか分かりません。

 ただレオンの好きなお菓子や好物な料理で、懐柔する方法しか浮かびません。

 手もとには、レオンのフワフワホットケーキがありました。菜園で取れた野いちご付きです。

 ニコにレオンを呼んで来るようお願いし、手もとのホットケーキを見つめました。


「……頼むぞ。フワフワで包んで癒してくれ」

 

 こちらにやって来るレオンを見て、思わずホットケーキにマルコは願いました。



 


 手元には乾かしたミントをギュウギュウ詰めにし、ブルーノにアルコールを注いで貰う。

 さらに暖炉で手に入れた灰を、サラサラにして袋に詰めていく。

 黙々と淡々と……、ゴーグルが灰で見えなくなるのでブルーノが拭い、ハンカチで包まれたレオンの鼻が、時おりフゥ……と聞こえてくる。

 その間、一言もしゃべらず、一心に作業している。

 ブルーノにも目を向けない。


(……レオン様、一体どうされたのです?)


 ジワジワとブルーノの精神を知らず知らず削っている事を、3歳児(レオン)にはわかりようもありません。





 ****************





 土と肥料の匂いに混じり、そこだけが異質な「研ぎ澄まされた鋼」の香りに満ちていた。


 二振りの漆黒の鞘に収まった双剣だ。


 一振りは自らが影の世界で、数多の首を跳ねてきた、業の深い一太刀。


「……また、雨が降るか」


 ブルーノは右脚の古傷をさすり、小さく息を吐いた。


 湿り気を帯びた空気は、傷を疼かせると同時に、刃を錆びつかせる。


 懐から出した打粉を、等間隔に刃へ叩き落とす。


 ポン、ポン、とリズム良く上がる白い粉が、かつての戦場での呼吸を呼び覚ます。


 無表情な横顔は、いつの間にか「庭師」のものではなく、獲物の隙を伺う「死神」そのもの……。


 丁寧に丁子油を塗り込み、地鉄の紋様を浮き上がらせる。


 鏡のように磨き上げられた刃に、今の自分の顔が映る。


 かつての冷酷な瞳は影を潜め、どこか隠し事をするかのように割り切れない光が宿していた。


(殺す為ではなく、生かす為に……)


 カチリ、と微かな音を立てて鞘に収める。


 この双剣の出番がないならいいが……。


 もし使う時この二振りの刃は、レオン様に届こうとする全ての災厄を細切れにし、仇なす芽をすべて摘み取るためにあるのだから……。


 だが、……今の俺はどうだ?

 らしくもない『生け捕り』などという甘い剪定をして……。

 レオン様に人殺しの顔を見られたくないという、ただ浅ましい自己保身ではないか。


 ──レオン様のためなら、この命も心も躊躇いなく差し出せる。


 なのに……、あの方の瞳に俺がどう映り感じるかと思うと、……俺はたまらなく恐ろしくて怖いのだ。

 最近レオン様の様子がおかしい 。

 俺もよく動いているし……。


 明日もまたレオン様と菜園で土をいじり、赤子語で笑い合う為ならば、俺は……。





 *****************





「レオン様、おやつですよ。ハチミツクッキーが焼けましたよ?」


 厨房からやって来たニコが、精一杯明るい声で言いますが、レオンはピクリとも反応しません。

 ただ無言でブカブカの手袋をはめて、イラクサをプチプチとむしっています。


「……深刻だな。あんなに喋るのが大好きだった子が、三日も一言も発さないとは」


 厨房でようすを見ていたマルコもやってきて、苦渋に満ちた表情で額に手を当てました。


「……坊ちゃまは、感じ取られてるのかもしれん。この邸を覆う不穏な空気と、皆がその為に動いていることを……」


「あんがい……、自分を守るために死力を尽くそうとしていることをバレてやしないか?」


 離れた位置から見える景色は、困った様子のニコと黙々とプチプチ草むしりをするレオンがいます。

 レオンの小さな胸の中は、大人たちが想像する以上に嵐が吹き荒れていたのです。

 前世の断片的な知識と、空気から迫りくる悪意、自分を慈しんでくれるブルーノやマルコたちが、自分のために傷つくかもしれないという予感……。


(……ボクのせいで、みんな、いたいいたい、したら、どうしよう)


 レオンは怖くて堪りません。誰かがいなくなることが、誰かが自分のせいで血を流す事が、たまらなく怖かったのです。

 だから……、彼は決めました。

 誰にも頼らず、自分一人で、侯爵家(ここ)を守り抜こうと……。










 夕刻……、久しぶりに侯爵邸に戻ったヴィクトールは驚きました。

 全身を灰まみれにし、ブカブカのゴーグルと手袋、そして顔全体を覆うようなマスク……、サラサラの髪はバサバサに飛び跳ね、どこか陰鬱な雰囲気がします。

 その余りに変わり果てた様子の息子(レオン)の姿を見て、ヴィクトールはたまらず駆け寄り抱きしめました。


「レオン、 一体……?どうした?なぜそんな格好をしている? 何があったんだ?」


 ヴィクトールが小さな肩に手を置き、レオンに顔を合わせた瞬間……。

 小さな肩が、びくん、と震え怯えています。


「……レオン? 顔を見せておくれ」


 父親の優しく語りかける声……、それが張り詰めきったレオンの心の糸を、ぷつりと切ってしまいました。

 レオンのゆっくりと顔を上げたゴーグルの奥の瞳には、零れんばかりの涙が溜まっています。


「……とーさ、ま」


 消え入るような、小さく掠れた声でした。


「……とーさま……みんな、いなくなっちゃう……の?」


「何を言っているんだ。そんなわけないだろう」


「……ブルーノも、マルコも、ニコも……っ。レオンを、守って、いたいいたい、する……っ? レオンが、めっ、し、しだから……っ」


 ヒック、と小さなしゃっくりが漏れ、一度溢れ出した涙は、もう止まりません。


「……ボク、が、ま、守るの……ッ! ひとりで、やるもん!しゅっしゅ、して、悪いひと、めっ、しゅる……っ! だ……だから、みんな、いたいいたい、しない、で……ッ!!」


 レオンはヴィクトールの胸に顔を埋め、声を上げて泣きじゃくり始めました。

 三歳の子供が、どれほどの恐怖と責任感をその小さな背中に今まで背負っていたのか……。

 レオンが黙って隠れて作戦を練っていたのは、みんなを不安にさせたくなかったから……。

 でもその沈黙こそが、みんなを一番不安にさせていたのだと気づいて、レオンはさらに激しく泣き出しました。


「うああああああん! とーたまぁ……っ! みんなぁ……っ! ごめんしゃーい……ッ!!」


 侯爵邸にレオンの大きな泣き声が響き渡ります。

 ブルーノ、マルコ、ニコも、そしてヴィクトールやアルベルトも……。

 そして使用人を含めてみんなが、潤んだ目でその小さな背中を見つめていました。


「レオン。……お前は一人じゃない。我が家の騎士たちや使用人皆、お前が守るまでもなく強いんだぞ」


「ふえぇん……」


 ヴィクトールは、泣きじゃくるレオンを力強く抱きしめた。


「だが、お前のその勇気は……私は、とても誇りに思う。レオン、お前もオトコに成長しているな」


「ひっく……えぐっ……うにゅ……」


 肩を揺らし、レオンはしゃくり上げながら、ポロポロと涙を流しています。


 ヴィクトールはレオンを優しく宥め、背中をトントンと叩きながら、ブルーノを見ました。

 ヴィクトールの肩に顔を埋め、レオンはぐったりと体重を預けています。


(これほどまでに泣くとは、私の対応間違いだ……)


(子供だからと、隠してばかりじゃいけないのか。まさか、守ろうと動くとは思わなかった)


(ただ、レオンと我が家を守りたかっただけなのに……、でも説明する事も必要だったのね)


「ふえぇ……」


 泣き疲れてヴィクトールの腕の中で眠りについたレオンは、皆が何を考え動くのかわかりません。

 ただ父ヴィクトールに抱かれている安心感と、アルベルトとカトリーヌやブルーノ、マルコ、ニコ、使用人やメイドたちがいる侯爵家(ここ)が大好きで、みんな強いと聞いて安心して……。

 ふにゃりとレオンは笑いました。

 涙に濡れた顔で、ふにゃりと幸せそうなレオンを見て、みんな安心しました。

 あぁ……、いつものレオン様に戻られたとホッとしたのです。


「お前たち、我が侯爵家の宝を大泣きさせた輩に、報いを受けさせるべきと思うがどうだろう?」


 ヴィクトールの問いかけを受け、侯爵邸の空気は一変しました。そこにあるのは「天使を泣かせた報い」という制裁的感情です。

 ヴィクトールはもちろん、アルベルト、カトリーヌ、そしてブルーノ、マルコ、ニコを筆頭に、使用人からメイドまで、狂気にも似た決意を固めました。


(((((((死より徹底的な絶望を!)))))))


「……ヴィクトール様。よろしいですな?」


 セバスが問うと、ヴィクトールは眠るレオンの頭をそっと撫で、冷徹な当主の顔で頷きました。


「……ああ。……我が家の『宝』をここまで泣かせた不心得者には、相応の報いを受けてもらおうか」





読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

たくさんのブクマやポイント

ありがとうございます( * ॑꒳ ॑*)

とても励みになり、がんばろうと思いです。

メールもとても嬉しいです。

ネタになることもあります♪

誤字脱字もありがとうございます。(о´∀`о)

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― 新着の感想 ―
滅っ!
皆で滅「滅ッ」するんでしょうね。 楽しみです。
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