レオン─姉の愛と、皇太子の計算─
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
最近ヴァリエール侯爵家を訪れる人々は、門をくぐると必ず目を擦ります。
何故なら侯爵家一同が、光り輝いて見えるのですから……。
「……おい、マルコ。お前実は……、どっかの国の王子様だったのか?」
食材を届けに来た老舗業者が、荷台から身を乗り出して言いました。
今やマルコは脂っこい厨房の男から、清潔感がある爽やかイケメンシェフへと変貌を遂げているからです。
頑固な職人面より、艶やかで滑らかな肌質に目がいきます。
「何訳のわからねぇ事言いやがって……」
マルコが白魚のような滑らかな手で伝票を受け取ると、自分のガサガサな手を隠しました。
「お、お前のその手……野菜を握るのが申し訳なくなるくらい綺麗だな。その……、ひ、秘密を教えてくれよ?」
「国家機密だ……」
「お、お前ズルくないか?最近めちゃくちゃモテやがって、昨日なんて俺が気になる……」
国家機密より、モテの極意が大切らしい……。
隣接する屋敷のメイドたちも掃除をしながら、ヴァリエール家のメイドらに釘付けです。
「ちょっあなた!肌の毛穴が見えないわよ!? どこの高級クリームを盗み……いえ、使ったの!?」
塀越しに問い詰められたメイドは、頬を指で弾き、プルンという異次元の効果音を響かせました。
「フフフ……これ実は王家管理品なの。だから禁止なのよ」
「王家管理!? ……嘘でしょ!背後からライト照らされてるみたいにあなた輝いてるわ……」
「ありがとう。嬉しいわ♪」
近隣の屋敷では、メイドたちの間で「ヴァリエール家に若返りの聖水がある」と噂が広がりました。そして王家も関わっているそうです。
実際に王家の馬車がほぼ毎日、侯爵邸に向かっていました。
侯爵邸を訪れた商談相手の貴族は、玄関で出迎えた執事の顔を見て、持っていた杖を落とします。
「……失礼。いつもはセバスという者が来たはずだが……君は、彼の親戚か何かかな?」
「いいえ、執事のセバスでございます」
「嘘をつけ! セバスはもっと……こう、年相応の渋みがあってだな! なんだその……、朝露に濡れた果実のような瑞々しい肌は!」
セバスは無表情のまま(しかし頬のもっちりは隠せず)深く一礼しました。
「……閣下は奥でお待ちですが、驚かぬようご忠告申し上げます」
案内された客人は、『光り輝く軍師』ヴィクトールと『発光する美少年騎士』アルベルトの、時を巻き戻したような極上の艶と、滑らかな白磁の肌に、言葉を失い平伏したのです。
騒ぎは侯爵家だけにとどまりません。
公式行事に現れたアルフレッド国王、イザベラ王妃、そしてエドワード皇太子の三人が、全員もれなくツルピカの発光体として登場です。
「見て! 国王陛下の肌艶が……神々しく輝いているわ!」
「王妃様なんて、お肌が発光しすぎて輪郭がぼやけて、……なんて気品に満ち溢れているの」
「エドワード皇太子は……、余りにも眩し過ぎて、目、目があけれません」
王都の貴族たちは騒然となり、王家の威信を肌に宿したかのような圧倒的な発光と美貌に、王都の貴族たちは平伏し、その人知を超えた神々しさに畏怖を感じながら忠誠を誓うのです。
「ヴァリエール家のカトリーヌ嬢が、今回の発端らしい。王家が独占管理している」という情報が伝わると、侯爵家への招待状は通常の倍に跳ね上がり、王宮には「どうかその泥を一口……いや、一塗り!」と懇願する嘆願書まで山ほど積みあげてあるらしい。
もちろん国内だけにとどまらず、諸外国からも沢山の手紙が届いています。
「……十日余りで、早すぎるわ……」
「母上……」
「……エドワード、レオンちゃんのことお願いよ。どんな手を使っても守り抜くのよ」
「もちろんです。レオンは私の弟ですから……」
「……とにかく、根回しが必要だわ」
他国の密偵が想定を遥かに超えて、深く静かに浸透していたようです。もし今回の件がなければ、彼らの存在は表に出ることはなかったでしょう。
王宮の片隅から、拭い去れぬ暗雲が立ち込み始めたのです。
そんな大騒動の中レオンは菜園で、楽しそうに鼻歌を歌っていました。
「みんな、ツルスベ! ピカピカ♪」
レオンがこねた小さな「泥石鹸」。
それが厳しい料理長も、厳格な執事も、果ては一国の王族までもみんな、もっちもちの発光体に変え、美容概念を根底から破壊し尽くしたのです。
ヴィクトールは、あまりに指先がしっとりしすぎて書類をツルッと掴み損ねながら、遠い目で呟きました。
「……レオン。お前の『どーぞ』は、『国家を揺るがす劇物』だ」
侯爵邸ではのほほんとレオンが騒動を巻き起こす準備中……。
ある日、王宮での教育を終えたカトリーヌが、迎えに来たレオンと対面しました。
数日前から、エドワードがレオンにマナーを教えているのです。(要らんことを……)
「レオン、お待たせしましたわ。菜園にお水をやりに行きましょう」
するとレオンはいつものように駆け寄るのではなく、一歩止まり足を揃えていました。
そしてエドワードに教わった通りに首を30度「こてん」と傾け、上目遣いで姉を見つめたのです。
「……ねーたま。……ごきげん、よぉ?」
ぱちぱちぱち……♪
「………………っっ!!!」
カトリーヌは心臓を射抜かれた衝撃で、その場に膝をつきました。
あまりの愛らしさに息が止まり、頬が真っ赤に染まります。
(な、なんですの!? 今の完璧な角度、そして破壊的な間の取り方は……!?)
悶絶から回復したカトリーヌは、背後で「フッ、決まったな」と、勝ち誇った顔をしているエドワードを鋭い目で見上げました。
「エドワード殿下!! レオンに何を……何てことを教えていますの!?」
「何とは失礼な……。淑女の見本である貴女の弟だ。相応しいマナーを仕込んでやったまでだ」
「嘘をおっしゃい! あんな『あざとい』動作、王宮のマナー教本にも載っていませんわ! それに……それに、レオンは私を見ればすぐに抱きついてきて、一番可愛かったのに!あんな余計な間を作るなんて……! 私の弟を変な知恵で汚さないでくださいまし!」
カトリーヌは般若のような顔(でも心は悶絶)でエドワードに詰め寄ります。
二人が言い争っていると、レオンがトコトコと歩み寄り、カトリーヌのドレスの裾を指先で「ちょん」と掴みました。
これもエドワード流の『裾掴みのマナー』です。
「……ねーたま? おこ、なの? ……のほほん、しよ?」
レオンが「ふにゃり」と笑い、首を反対側に「こてん」と倒すと、カトリーヌの怒りは霧散しました。
「あああああもう! 反則ですわ! 殿下、もう二度とレオンに近寄らないでください! この子は私の弟です、変な技を教えるのはお止めになって!」
「ふん、無理な相談だ。レオンは私を『エドにぃ』と呼んだのだ。教育する権利が私にもある」
「お黙りなさい! 私のレオンを『兵器』にするのはお止めになって!」
結局……、カトリーヌはレオンを「マナーの上書き」と称して抱きしめ、物理的にエドワードから離しました。
しかしレオンが「こてん♪」とするたびに、彼女は「……っ、可愛い……(でも悔しい!)」と悶絶し続けるのです。
ヴィクトールはその様子を遠くから見て……。
(……カトリーヌ。お前の気持ちはわかるぞ。私などは、昨夜その挨拶をされて、一晩中眠れなかったのだからな……)
侯爵邸の私室で、カトリーヌはレオンをふかふかの椅子に座らせ、真剣な眼差しで教え始めます。
「いいですか、レオン。エドワード殿下が教えた『こてん』や『裾掴み』は、あざとすぎますわ。真の淑女――いえ、真のヴァリエール家たるもの、もっと『真心』で相手を制圧するのです」
カトリーヌ特製:【おねだりの儀】
1. 必殺・上目遣いの「じーっ」
「まずおねだりをする時は、決して言葉を口にしてはなりません。ただ相手の目をじっと……そう、捨てられた仔犬のような瞳で見つめるのです。瞬きは三秒に一回ですわ」
─レオンの挑戦─
「じー……。……さん、ねんね?」
(※レオン、三秒を数えようとして眠くなる)
カトリーヌの反応。
「惜しいですわ! でもそのトロンとした瞳、逆に母性本能を直撃します! 採用です!」
2. 禁断の「ぎゅっ」と「すりすり」
「そして相手が折れそうになった瞬間、両手で相手の腕を抱きしめ、頬を一度だけ『すりり』と寄せるのです。言葉はこうです。『おねがい、なの……?』」
─レオンの挑戦─
「ぎゅっ! ……おねがい、なの……? すりりー♪」
カトリーヌの反応。
「はうあぁぁぁっ……!!(悶絶) 完璧……完璧ですわレオン! これなら、たとえ王宮の宝物庫の鍵だって、国王陛下でさえ泣きながら喜んで差し出しますわ!」
そこへ公務を終えたヴィクトールが通りかかりました。カトリーヌは「今ですわ!」と目配せします。レオンは、教わったばかりの「儀」をヴィクトールへ披露しました。
まず無言でヴィクトールの膝を叩き、「じーっ」と見上げる。
ヴィクトールが「……どうした、レオン」としゃがんだ瞬間、首に腕を回して「ぎゅっ」。
そのまま頬を「すりり」と寄せて、トドメの一言……。
「とーさま、おしごと……おわり? いっしょに、のほほん……おねがい、なの?」
「………………」
ヴィクトールは、石像のように固まりました。
そして次の瞬間、震える手でレオンを抱き上げ、背後に控えていた執事セバスに告げます。
「セバス……。明日の公務はすべてキャンセルだ。……私は今から最も重要な『のほほん』という任務に就かなければならない!」
「旦那様、さすがにそれは……。あ、レオン様が『おねがい』と言っておられますね。承知いたしました、全日程延期いたします」
セバス、レオンのうるうる攻撃に陥落……。
廊下でエドワードと鉢合わせたヴァリエール姉弟……。
カトリーヌは扇をパサリと閉じ、不敵な笑みを浮かべました。
「殿下、レオンに教えたあの『あざといマナー』は、もう古いですわ。真の愛の力をご覧にいれますわ」
「ふん、私の教えた『盾』以上のものがあるというのか?」
鼻で笑うエドワードに、カトリーヌはレオンの背中を優しく押し、「さあ、レオン。殿下にお願いしましょう?」と合図を送りました。
「あい、ボク、がんばる」
レオンはげんきにお返事します。
トコトコポテポテ……♪
レオンはエドワードに歩み寄り、カトリーヌから教わった「儀」を忠実に実行します。
─無言の「じーっ」─
エドワードの膝にしがみつき、潤んだ瞳でじっと見上げます。瞬きは……三秒に一回。
─禁断の「すりり」─
エドワードの腕を小さな両手で抱え込み、幸せそうに頬を「すりすり」と寄せました。
─トドメの言葉─
「えどにぃ……おしごと、がんばって、しゅごい。……でも、ボクと、のほほん……おねがい、なの……?」
「…………っ!!(ゴフッ)」
エドワード……、まるで見えない衝撃波を受けたかのように、その場に崩れ落ちました。
顔は耳まで真っ赤、心臓の鼓動が建物中に響きそうです。
それを見たカトリーヌは腰に手を当て、顎を高く高く上げました。
「おーっほっほっほ! 見ましたか殿下! これが私が授けた『おねだりの儀』ですわ! 貴方の教えた計算高い挨拶など、この破壊力の前には塵も同然!」
「……くっ、これは……マナーではない。もはや呪いだ……。抗えぬ、抗えるはずがないだろうが……!」
エドワードは片手で顔を覆いながら、震える手でレオンの頭を撫でました。
「……わかった。のほほんだな。今すぐ……、そう、すべての会議を中止させろ。……カトリーヌ、貴様の勝ちだ。これほどまでの兵器を育てるとは……恐ろしい女だ」
エドワードが膝をついてレオンと目線を合わせると、レオンは満足そうに笑い、ポケットからアメ(マルコ特製バラキャンデー)を取り出して差し出します。
「エドにぃ、はんぶんこ。ねーたま、はんぶんこ。……おこ、めーよ?」
「……っ、ああ、もう……!」
エドワードとカトリーヌは、同時にレオンの両頬にキスをしそうな勢いで抱き寄せました。
エドにぃとねーさまはやっぱり仲良しさんだと、レオンはのほほんと思ったのです。
*****************
「……エドワード様。失礼ながら、少々『足音』が大きすぎますね」
庭の剪定作業の手を止めずに、ブルーノがエドワードに声をかけました。
「足音? 私は静かに歩いてきたつもりだが…」
不思議そうに振り返るエドワードに、ブルーノは手に持った剪定バサミを、音もなくピシャリと閉じます。
「物理的な音の話ではありません。貴方様が毎日通うことで、どこの馬の骨とも知れぬ刺客どもが、迷わず侯爵邸に辿り着く。それをご存知かとお聞きしているのです」
エドワードは眉を顰め、ブルーノを睨み返しました。
「……ブルーノ、私が通うのは抑制の為だ」
「元隠密の私からすれば、答え合わせをしてるようなものです」
「私のやり方はマズいのか?」
「届いた手紙が数十日早いという事は、敵が裏を取る前に行動を開始していることを意味します。つまり利権を物理的に押えるという考えが透けて見える」
「わかっている。だから母上も動かれた」
「世の中には『まともではない』奴もいる。理屈ではなく、直感だけで急所に食らいつくような隠密だ。そうなった時、あなたはどうされるおつもりですか?」
エドワードは己の考えの甘さを思い知らされました。どろりとした冷や汗が止まらない。
牽制のつもりで取った行動が、弟のように慈しむ幼子の首筋に、自ら刃を突きつけていたのです。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)
たくさんのブクマやポイント
ありがとうございます( * ॑꒳ ॑*)
とても励みになり、がんばろうと思いです。
メールもとても嬉しいです。
ネタになることもあります♪
誤字脱字もありがとうございます。(о´∀`о)




