侯爵家─ツルピカ軍団─
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
母を亡くしたあの日……、一番そばにいてほしかった父ヴィクトールと兄アルベルトは、それぞれ「公務」と「訓練」に閉じこもってしまいました。
カトリーヌは「侯爵令嬢として、弱音を吐いてはならない」と自分を律し、華やかな貴族社会の中で完璧な淑女を演じ続けます。
しかし……、冷え切った食卓や、会話の途切れた廊下を通るたびに、彼女の心には寂しさという澱が溜まっていきました。
しかし現在……。
外の喧騒の抑えと泥石鹸の為、侯爵邸へ通う頻度があがる皇太子エドワードは、カーテシーをする3歳のレオンを見かねて、直々にマナーを教えることにしました。
しかしカトリーヌはそれに対し反対します。
マナーが自分の盾になる事はわかっていても、カーテシーはカトリーヌのカーテシーを、レオンがかっこいいと思いマネしたものでした。
それにレオンのカーテシーは完璧で、なによりとてつもなく可愛いのです。
まだまだ3歳児のレオンには教えずとも、今は堪能しておきたいと思うカトリーヌでした。
そこから起こったのが……。
国を背負うエドワードとカトリーヌ。
本来なら高潔で優雅な会話を交わすべき二人が、今は3歳児を奪い合い、貴族の仮面など殴り捨て言い争っています。
「殿下……、レオンはまだ3歳ですわ。それにレオンは私の大切な弟です。殿下に口出しされる筋合いはございませんわ!」
カトリーヌはレオンを自分の背後に隠し、婚約者であるエドワードを睨みつけました。
彼女にとってレオンは、守るべき可愛い弟なのです。
「ふん、何を言う。カトリーヌ、忘れたのか? お前と私が婚姻を結べば、レオンは法的にも私の義弟になるのだ。ならば今から兄として接して何が悪い」
エドワードは腕を組み、冷徹なまでの正論(?)を突きつけます。
「……それに母上はレオンを、実の子同然に想っておられる。母上が母ならば、その息子である私もレオンにとって兄も同然。つまり……、レオンは俺の弟ということだ!」
「お黙りなさいませ! 法的な義弟など、籍を入れてからの話ですわ! 今はまだ、私だけの、ヴァリエール家だけの弟ですわ!」
「……何を強情な!母上の愛は海より深いんだぞ。王家の庇護下にあるという意味でも、やはりレオンは俺の弟と言っていいはずだ!」
「まあ! 殿下こそ、王族の特権を乱用しては困りますわ!」
二人が火花を散らす中心で、レオンは首を傾げてキョロキョロと二人の顔を見ていました。
「……メラメラ? ボク『おとうと』?」
レオンはよくわかりませんが、なんとなくエドワードの袖と、カトリーヌのスカートを、左右の手で同時にギュッと掴んでみました。
その様子をみている、ヴィクトールは……。
(……エレーナ、どうしたらいい?我が国の次期国王と次期王妃が、3歳児を取り合って痴話喧嘩……いや、争いをしているぞ。私はもう疲れた……、酒を飲んでいいだろうか……)
そしてアルベルトは……。
(殿下……、義兄上になるというのは、ちょっと図々しくないですか?レオンの兄は俺だけなんです。……そこだけは譲れません……)←こちらも参戦したがっていました。
「メラメラ、いーぱい、ね。こっち右手でんか、左手ねーたま、どーじょ♪」
手を繋いだレオンは二人の間に挟まれ、ニコニコご満悦の笑顔です。
ついさっきまで怒鳴り合っていた(?)二人は、一瞬で顔を赤くし黙り込んでしまいました。
「……っ。レオン、お前は本当に……」
「……そうですわね、レオンがそう言うのなら……」
二人はレオンの手を握りしめ、お互いを見合ってフイッと顔を背けます。
エレーナの手記に書かれた「みんなを照らす宝物」は、今日王族と侯爵家を、力技で一つにまとめてしまいました。
「とーさま、ボク、こねこね、するの。 にぃちゃ、ねーたま、いっしょ。みんななかよし♪」
「……そうだな、レオン。それが一番平和だ」
エドワード殿下の「母上が我が子同然なら俺の弟」という強引な理論にはドン引きだが……。
侯爵邸の周辺では……。
食材の卸し業者は、納品口で腰を抜かしそうになっていました。
「……マ、マルコさん、なのか?」
いつもは脂ぎった顔で「安物を混ぜるな」と怒鳴り散らす料理長マルコが、今日はなぜか爽やかで、内面からオーラを放っているのです。
深い眉間のシワも、油まみれの毛穴も、跡形もなく消え去っています。
その横で野菜を運ぶ、料理人見習いのニコも同様でした。
垢抜けない素朴なはずの少年が、今は白磁のような瑞々しさと、朝露に濡れた野菜よりも鮮やかに輝いています。それにトレードマークのソバカスはどこへ行った……?
「お、おい……侯爵邸の厨房には、人を宝石みたいに変えるスープでもあるのか?」
しかしマルコ達は口をつぐみ、無言で見返しました。まるで「お前何言ってんだ?」と、無言で訴えています。
卸し業者の男性は納品もそこそこに、震える足で馬車へ飛び乗りました。
なにやら侯爵邸では、得体のしれない何が起こっているようです。
「大変だ!侯爵家の厨房が『発光体』だぞ!」
商業ギルドに飛び込み喚く男に、まわりの人間は眉を顰めました。
「厨房が発光体?太陽みたいな明かりでも取りつけたのか?」
「違う!料理人が『発光体』になったんだ!!」
「「「「「…………」」」」」
意味が伝わらず??していると、「とにかくすごいんだ!」と言いたいだけ言い、ギルドを飛び出して行きました。
外でも『侯爵家の発光体』を喚き散らしています。
「なんなのでしょうか……。発光体?」
「……わからん。発光体ねぇ?」
侯爵邸周辺は、常に騒めいてます。
噂を聞きつけた他家のスパイメイドが、平然を装って侯爵邸の勝手口に現れました。
「あの~、こちらの洗濯物が飛んできまして……っ?!」
言葉が途切れます。
応対に現れたメイドの顔を見た瞬間、スパイは持っていた洗濯物?を落としました。
……目の前に、磨き上げられたきめ細やかな肌が、光り輝いているからです。
まさに発光体!!
「……っ、な、何その肌! どこの美容液を使っているの!?」
スパイは使命も忘れ、食い気味に詰め寄りました。
対する侯爵家のメイドは、指先で自らのもっちもちな頬をツンと突き、余裕の笑みを浮かべ無言です。
その冷たい静かな対応と発光に気圧され、スパイは敗北感と共に逃げ帰りました。
しかしその背中を見送るメイドたちは、……内心で冷や汗をかいています。
(……1ヶ月半、乗り切るのよ。頑張ればヤレばできる。この『異常なまでの輝き』が、レオン坊ちゃまの泥遊びと悟らせないわ!)
使用人らも無表情装備で、慈愛の眼差しと最低限の言葉で貫き通しました。
(やるんだ。頑張れ、1ヶ月半!そう1ヶ月半だ)
長い……、1ヶ月半の試練が開始したのです。
もちろんお駄賃はツルピカである為、文句などあろうはずがありません。
死ぬ気でやらせて頂く所存です!!
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─泥石鹸ができた次の日─
アルベルトの元に一通の手紙が届きます。
先日帰省した折は、何事もなく?(レオンカーテシーはあったが……)済んだはずです。
「緊急招集だと? 一体、何が起きたというんだ」
アルベルトは馬を飛ばし、弾かれたように侯爵邸の門をくぐりました。
ですが……、出迎えた門番の顔を見た瞬間、彼は自分の目が眩んだのかと目を疑います。
「……なんだ、この光景は……?」
出迎えた門番から、庭の手入れをする庭師ら、さらには行き交うメイドたちに至るまで、全員が内側から発光しているのです。
騎士団の泥臭い訓練場から戻った彼にとって、そこはもはや知ったる侯爵邸ではありませんでした。
戸惑いながら厩舎へカッポカッポと周辺を眺めて、馬からゆっくり降りました。
やはり手綱を受け取りに来た馬丁の顔も、夕闇の中で発光しています。
驚愕するアルベルトの背後から、父であるヴィクトールが姿を現しました。
「ハッ?!……ち、父上? ……いや、誰だ!私の父はもっと、こう……、苦労が皺に刻まれた、実年齢より歳を重ねた……」
「アルベルト……、貴様は私をどれだけ年寄りと思っていたんだ?」
鏡のような艶を放つもっちもち肌で、ヴィクトールが忌々しげに、それでいてどこか諦めたように厳かに告げます。
「お前を呼んだのは他でもない。お前一人だけ、『くすんだ騎士の肌』をしていては、我が一族の異常性が余計に際立ってしまう。いいか……、これはカモフラージュだ。……レオン、やりなさい」
「にーちゃ、 きれいきれい、よ♪」
ヴィクトールの背後から愛くるしい笑顔を覗かせるレオンの手には、愛用のバケツがありました。
さらに後ろには……、お前ら誰だよ?!
レオン三銃士……、ブルーノ、マルコ、ニコ。
見た目が変わりすぎです。
マルコとニコがガシッと腕を掴み拘束します。
「坊ちゃま、今です!」
バケツの中に待機した団子は、レオンの手にしっかり握られました。
「待て、レオン! 私は騎士だ、肌の荒れは勲章……ぶふぉっ!?」
抵抗も虚しくブルーノに抱えられたレオンによって、アルベルトの顔面にドロドロの団子が塗りたくられます。
「にぃちゃ、いっしょ!」
降りたレオンは、「ドロスベ、ピカピカ♪」と言い、ヴィクトールに抱き上げられました。
それを合図にブルーノ、マルコ、ニコの三人は、ニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべて歩み寄ります。
彼らの手には、サボンソウと泥を混ぜ合わせたドロドロの液体が、バケツの中になみなみと入っていました。
「アルベルト様、こればかりはカモフラージュのためです。諦めてください」
「さあ、一気にいきますよ!」
「よせやめろーーーっ!」
アルベルトの叫びも虚しく、頭上からバケツ一杯の泥がぶちまけられました。
バケツをひっくり返したような泥の奔流が、アルベルトの全身を襲います。
邸内を汚さぬように、あえて厩舎前で執行するという、ヴィクトールの冷徹かつ完璧な暴挙でした。
「……」
ベチャッ……。
アルベルトの頭頂部からぶちまけられたドロドロは、鼻先をかすめて足元へと滑り落ち、ベチョッという鈍い音と騎士団の制服も泥にまみれた見事な泥人形へ……。
あまりの暴挙に、アルベルトは反論の言葉すら失い、泥を滴らせたまま呆然と立ち尽くします。
そんな惨状を前に父であるヴィクトールは、腕を組み満足げな表情で頷きました。
「……ふむ。いい具合に濡れたな」
その隣では泥だらけの兄を見上げる三歳のレオンが、パチパチと小さな手を叩いて歓声を上げ喜んでいます。
「にぃちゃ、しゅごいのー♪ 」
「申し訳ございませんが、アルベルト様。この成分が浸透し、完全に乾くまでそのままでいて下さい」
「大丈夫ですか、若旦那? ……まあ、明日には見違えるはずですから」
ブルーノやマルコたちが、ニヤニヤとした笑みを押し殺しながら、バケツを片手に声をかけます。
当主ヴィクトールは、泥の重みに耐える息子の姿を冷徹に見据え、トドメを刺すように告げました。
「……命令だ。動くなよ、アルベルト。泥人形で邸に入られてはかなわんからな」
夕闇の中……、次期侯爵であり騎士団の期待の星は、一言も発せぬまま「発光する美肌」を待つシュールな泥の彫像と化しています。
鏡の前に立ちました……。
くすみは霧散し、内側から発光する白磁の肌には毛穴一つ見当たらず、指で頬を突けば跳ね返す弾力に、アルベルトは戦慄します。
美貌はもともと言うまでもなく、騎士の力強さに神秘的な輝きが加わりました。
アルベルトは己の変貌に溜息をつき……。
「騎士団に帰るのはヤバいな……」
アルベルトはすぐさま休暇願を提出しました。
折しも、皇太子エドワードも同様の動きを見せていたため、手続き自体は滞りなく受理されます。
こうして侯爵家はついに「全員が発光ツルピカ軍団」となりました。
一ヶ月半……。
この「異常事態」を、彼らは力技のプロパガンダで乗り切るのです。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)
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誤字脱字もありがとうございます。(о´∀`о)




