筆頭メイドの嘆き─レオンのやらかし─
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
レオンの入浴は、穏やかで可愛らしいひと時から始まります。
「坊ちゃま、お背中を流します。じっとしていてくださいませ」
レオンは「あい!」と良いお返事をして、湯船の真ん中にちょこんと座り、縁を小さな手でキュッと掴んでいました。
筆頭メイドがニッコリ微笑み、温かい湯を身体に流すと、「ハフゥ」と小さく息を吐き、のほほんと湯の温かさを堪能しています。
溜まった湯を両手でバチャバチャしながら、水しぶきにキャッキャッ喜んで楽しそうです。
辺りが水浸しになるため、まわりを拭っていると、予備のタオルが足りなくなってしまいました。
今日はいつもより元気いっぱいに、水しぶきを上げていましたから……。
だからほんの数分……、予備のタオルを取りに行くため、ほんの一瞬だけ目を離した隙に事件は起きたのです。
「……ボクも、キレイしゅる♪」
棚の上に置かれたレオン特製不恰好な泥の塊。
レオンは短い手を目一杯伸ばしてそれを掴み取ると、躊躇なく湯船の中へドボンと放り込みました。
「おぉ、 どろどろ、しゅごい♪」
筆頭メイドが戻ってきた時には、そこは地獄……もとい、「泥の楽園」が広がっていました。
レオンは手を筆のように使い、壁いっぱいにダイナミックな泥のアートを描いています。
おまけに溶け出した泥湯を、頭から足までしっかりと被っていました。
「坊ちゃま! なんという……なんというお姿に!」
浴室に踏み込んだ筆頭メイドの悲鳴が、ダイナミックアートの壁に反響します。
当のレオンはといえば、全身泥被りが楽しいのか、「ドロスべ、ピカピカ」と謎の言葉をしゃべり、壁に手形のスタンプを押して、無邪気に笑っていました。
筆頭メイドは気を失いたくなりそうな惨状に、震える手でタオルを握り締めます。
(あぁ……、なんとお詫びすれば……!この汚れ明日の朝までに落とせるかしら……)
フラフラと歩み寄り汚れを落とそうとレオンを捕まえ、顔や肩にタオルを押し当て拭いました。
そして、……彼女の動きは固まります。
泥の下から現れたのは、3歳児のぷるるん肌ではありません。
そこにあったのは汚れひとつもない、内側から発光する真珠のような輝きのプニンプニンした肌です。
「……えっ?」
泥に触れた箇所は、吸い付くような潤いを湛え、磨き上げた陶器の滑らかさで白く発光していました。
驚きに目を見開いた筆頭メイドは、ふと自分の手元に目を落とします。
するとレオンの泥を拭った荒れた指先が、気づけば十年前の娘時代のような瑞々しさを取り戻しているではないですか!
「……こ、これは、お掃除は後回しで、……よろしいんじゃ、ないかしら?」
掃除への使命感は一瞬でポイ捨てになり、美への欲求へとすり変わりました。
このドロドロはただのドロドロではないのです。
彼女は喉の奥を鳴らして、ゴクリと生唾を飲み込むと、意を決してドロドロ湯船に自らの片手をズボッと入れました。
結果……。
「……一人では、とても背負いきれませんわ」
自分の瑞々しく張りのある手を見つめ、筆頭メイドは決然と立ち上がりました。
この禁断の輝きを独り占めにするには、あまりに罪深く、そして何より言い訳が立ちません。
未だ震える若返った手を抱きしめて、とりあえずどろんこ坊ちゃまをどうにかしなくては……。
レオンはドロドロをバチャバチャと叩き、更に被害を拡大していました。
(このままでは風邪をおめしになるわ。……というかドロドロが減ってしまう!)
「坊ちゃま、お湯をすぐに持って参ります!」
彼女は立ち上がるとダッシュで、信頼のおける三人のメイドを伴い戻ってきました。
手にはお湯とタオルを持参して……。
「今から見るものは、誰にも言ってはなりませんよ!」
連れてこられた三人は泥まみれのレオン(床を塗りたくってます)を見て、彼女たちの顔から一気に血の気が引いていきました。
「……お、お掃除、間に合いますの……?」
「こ、これは……ッ」
一人のメイドは裏返った声で絶句し、他の者も頬をピクピクと引き攣らせます。
あまりの惨状に視界が涙で歪みました。
掃除しても掃除しても、なかなか取れない汚れと、何より高貴な侯爵家の子どもを泥人形にしてしまったという、死に値するほどの不手際に、絶望で膝から崩れ落ちそう……。
しかし筆頭メイドが無言で、頭からつま先までコーティングされたレオンをガシッと捕まえ、清潔な厚手のタオルを小さな身体に押し当て、一気に水分と泥を拭い去りました。
その直後……、メイド達の思考は完全に停止しました。
「……っ!?」
タオルの下から現れたのは、赤ん坊特有の桃色の肌ではありません。
丁寧に磨き上げられた真珠のように、トロリと潤う乳白色の光沢で輝いています。
「な……なんという……」
あまりの眩しさに、メイド達は思わず目を細めました。
さらに筆頭メイドが温かな湯をかけると、肌から流れる湯はプルンプルンに弾かれています。
指先で恐る恐るその肌に触れると、「もっちもち」という言葉すら生ぬるい吸い込まれるような柔らかさと、離した瞬間にプニンと空気を震わせるような弾力……。
「……これ、人間の……肌、なのでしょうか?」
キョトンと無垢な瞳で見つめ返すレオンのプニン肌のあまりな神々しさに、一人のメイドは膝をついて祈りを捧げそうになったほどです。
このプニン肌三歳児を、メイドは思わず抱き上げました。
「……いけませんわ。この『玉体』を、外に出すわけには……!」
「ん?」
思った以上の事態に3人のメイドは、レオンを隠そうとしています。
メイドは震える手で予備のタオルをもう一枚渡し、レオンをぐるぐる巻きにしました。
この輝きを直視し続ければ、正気が保てません。
もはや玉体と拝めるほどに発光する坊ちゃまを前に、不敬を承知で「これ、どうやって隠せばいいの……」と、筆頭メイドは心底途方に暮れました。
─その夜─
重労働でくすんだ肌を労うように、ドロドロを慎重に掬い上げ、日々の重労働でくすんでいた肌を労います。
べっとりと泥のついたタオルさえも、顔に張り付け泥パックにして余すことなく使い切ると、春の陽光を浴びたような透き通ったもっちもちの肌になりました。
日々の献身的な働きへの、ささやかな報いだったのでしょうか。
鏡に映る自分たちの姿に満足げな笑みを浮かべ、メイドたちは明日への活力を得て静かに眠りにつきました。
ついでに……。
レオンが泥をぶちまけた壁や床は、拭い去るそばから新品のような光沢を放ち、水を流せば室全体が発光する聖域化していました。
坊ちゃま……、この「異常」を隠し通すには、一ヶ月半という月日はあまりに長すぎます。
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