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異世界経営録 〜補佐官ガイウス〜  作者: ゆさひ
第五章 シシーナ
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5-7 閉ざされた交易路

【登場人物】


ガイウス:この物語の主人公。異世界者。前の世界では本屋の経営者

デキムス:ガイウスの父。調子者だがフレーメンでは慕われている顔役の一人。

セプティムス:ガイウスの兄。リキニウス家の当主。年の離れた弟に非常に甘い。

テレンティウス:シシーナ支店の支店長。デキムスの幼馴染。やりて。

デキムスとガイウスは倉庫を、セプティムスは拠点探しと二手に分かれて活動をすることとなった。


同時進行で進めなくてはいけないため、効率を優先するようにしたのだ。

そして、その日あったことを夕食時に共有する。


その間にも通常業務は容赦なく追いかけてくるので、三人の忙しさは目を回すほどだった。

ガイウスも戦力として父と兄には考えられているようで、フルーメンからの荷の検査や市場調査などに駆り出されている。

久方ぶりの労働の大変さを骨身に浸みて感じていた。


そんな多忙な日々が数日経ったころ、セプティムスが深刻な顔をして帰宅してきた。


「父上、少々お時間いただいていいでしょうか?ガイウスもいいか?」


アトリウムの机で書き物をしていた父の手が止まり、頷きつつ、会議室となりつつある応接間に目線を向ける。

いつもは夕食時にしていた情報共有を前倒しでするとは、何かあったな、と思いつつ、ガイウスは父に続きベンチから立つ。


「どうした?何かが、あったのだな?」


ガイウスが後ろ手で扉を閉めたのを確認してデキムスがセプティムスに話しかける。


「はい。数日前に内覧した物件なのですが、借り手がついてしまったと言われました。また、他の空いている場所を内覧したいと申し出たのですが、賃料が大幅に上がっていることが多く、違和感があります。」


「そうか。こちらも同じように賃料の変更や空き物件が無い、と本日、テレンティウスが土地調査官から言われたそうだ。船頭に話を聞こうとしても“しばらく港を離れる予定だ“と言って避けられようだな。」


「なんで、こんな手のひらを返すような事になるのですかっ!?」


きっとまなじりを上げてセプティムスはデキムスにいう。

デキムスに原因がないのはわかっているが、この苛立ちをどこにぶつけたらいいのかわからないのだろう。


「十中八九、ルーカン・ヴァレント、だろうな」


やれやれ、とため息まじりにデキムスが言う。


「あの、臆病者のルーカスですか?」


セプティムスは昨年の夏ナヴィビア商業連合軍に従軍し、歴史的大敗北と言われる敗戦に父と共に参戦していた。仲間の救助に向かわずに陣地の守備をすると言い放ったルーカスを公然と臆病者と言っていたのだ。


「その言い方も原因の一つかもしれんぞ?」


「だったら、やはり臆病者の詐欺師ですね」


苦笑いをしながらデキムスは話を続ける。


「フルーメン、シシーナ、ソリス間の交易はヴァレント家にとって金のなる木だ。そこにリキニウスと言うドマ・リュカイオンとのパイプを持った競合が入ってくるのだ。阻止しに動かないはずもないだろう。

もう少し時間をくれると思っていたのだが、思ったより動きが早かったな」


最大手の企業戦略はミート戦略だ。

長年築いてきた人脈や資金を総動員して、新興勢力に嫌がらせをして潰しにかかる。

正当なやり方ではあるが、この嫌がらせは正直きつい。


シシーナを飛ばして交易することも可能だろうが海路は諦めなくてはいけない。

しかも、陸上輸送でもフルキアからソリスまでは20日から25日はかかってしまう。

襲撃に遭うリスクもそうだが、食糧や飼料が莫大な量になり、胃の中に消えてしまう金にならない荷物を永遠と運ばなくてはいけなくなる。


リキニウス家にとってゲオニコン半島の中間に位置するシシーナの拠点化は絶対なのだ。

反対にシシーナを牛耳っているヴァレント一門が強くなることも地政学的に当然の帰結なのだった。


「ヴァレントもリキニウスが怖いのであろう。なんとしても不利な条件で契約、又は進出自体を断念をさせようと画策してくるに違いない。荒事も十分に考えられる。しっかりと護衛を連れて歩くよう注意をしてくれ」


デキムスが声を落としながら話をする。

何度も言うがこの世界では利権を守るためにはわいろや根回し、戦闘や暗殺などなんでもありのサバイバルゲームだ。

警察機構もそれほど充実している訳ではなく、科学的な証拠の重要視もさにくい。

自分の身は自分で守るしかないのだ。


「護衛を増やしましょう。明日から動けるよう子飼いの護衛者に声をかけてきます」


テレンティウスが席を立ち、従者に出かける旨を伝える。

デキムスが気を付けていけ、と声をかけると、テレンティウスは振り返り、一礼して部屋を出ていく。


「ヴァレントの妨害が本格化する前に手を打たなければいけませんね」


セプティムスが考えを巡らせながら独りごちる。


「ふむ。公的機関、倉庫連合はダメだろうな。さんざん美味しい思いをさせられている連中だ。ヴァレントの意に反することはできないだろう。」


「では、シシーナはあきらめるというのですか?」


セプティムスはデキムスに何か策があるのだろう、と思い肩をすくめながら少しおどけながら聞き返す。


「制度にはいつでも隙間があるものだ。その隙間に精通したものを味方に引き入れなければいかん」


「なるほど。今までの表街道から、裏路地を知り尽くした者に当たりを広げるのですね」


セプティムスはにやりとして話を続ける。


「……フォルカに会ってみようと思う。」


デキムスが少しうつむきながらぽつりと漏らす。


「あの――道中で会った商人の方ですね。」


「ああ」


デキムスはゆっくりうなずく。


「気骨のある男だ。派手ではないが、ヴァレント家にも媚びず、役人にも借りを作らない。港の倉庫筋にも、城外の地主にも顔が利く。第一、自分で荷の責任を持って運んでいる奴だ、ヴァレントのやり方に不満を持っているに違いないさ」


「確かに、彼なら裏路地を知り尽くしていそうですね」


セプティムスは面白がるように悪い笑顔を浮かべている。

ガイウスはセプティムスが長子としてまじめでルールに厳格な面を公では見せているが、実はこういった悪さをするときに心底楽しそうな顔をするのを知っている。

実はそちらが本当の彼なのかも?と思ったりしている。


数日後、テレンティウスからフォルカのから会っても良いと返事が来たと連絡があった。

ご覧いただきありがとうございました。

もしよければ、ご感想、レビュー、ブックマーク、評価など待ってます。

作者のモチベーションを上げると思ってよろしくお願いいたしますm(__)m

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