2-25謝られて謝って ☆
次は二度目になる五組前での待機。
「凛紗さん」
「んぁはいっ!」
もう突拍子の無い返事はいつものことらしい。それでも今までで一番小さい反応だったと思う。さすがに僕に慣れてきたってことかな。
「あ……夏休みのことですか?」
「うん。今から答えてもいいですか」
「お願いします!」
いつものひと気の無い場所に着いて、続きを話そうとした。
その時の凛紗さんが意外にも落ち着いていた。
思えば凛紗さんは尾行までしておきながら一度引き下がっている。その上で決心して僕だけでなく卯月さんの前で(草壁は偶発的として)改めてお願いしたのだ。充分に考えたと思う。その考えは断られる可能性にも及んでいて、今の様子があるのだろう。
「ごめんなさい。すごく悩ませていますよね」
「あ、そうじゃなくて。凛紗さんが今すごく落ち着いていると思って」
「わ、私がですか!? すみません! 気味悪いですよね?」
「え? 良いと思うけど……? お姉さんのために色々考えた末の決心だってことだよね」
「あ……はい」
凛紗さんが照れくさそうに笑ってくれた。
「じゃあ、夏休みのこと、協力したいです。よろしくお願いします」
櫓が聞いていたら微妙だと言いそうだけど、僕としては用意してこんなところかな。
凛紗さんは目と口を少し開けたまま固まって、しばらくして息を止めきれずに吐き出した。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。……な、なんと言うか本当の告白みたいになりましたね」
「それは最初の凛紗さんからそうだったし」
「あの時は驚かせてしまってすみません……」
僕の制すような手の動きに気付き、胸を撫で下ろす仕草を見せた。
「本当に良かったです。姉のために君島さんと協力できること」
良心が痛む……。その目的は確かにそうなんだけどね。
「えっと、それで、本当に映画に行く?」
「あ……君島さんの都合で構いません」
「いやっ、大丈夫! 凛紗さんが好きなので良いよ!」
「そんなそんな! 私が君島さんにできることなんてありませんから! せめて君島さんのやりたいことを優先してください!」
「そう?……ならやっぱり映画かな」
「……ごめんなさい。気を遣わせてしまって」
「気遣いじゃなくて、凛紗さんが楽しいと思えるようにしたいから」
「え……? あ、ありがとうございます……」
深く頭を下げて言ったその声が、最後の方はほとんど聞こえなかった。
あ、またたらし発言してるわ僕。
「え~……そうだ! また後で詳細を決めるから連絡先教えてよ!」
「は、はい!」
こうして深町姉妹の連絡先が揃った。これを見て改めて僕の行く末を案じた。
そんな連絡先一覧もそれを見る表情も隠して凛紗さんを見ると、そちらも一覧を見ているようだった。
「どうかした?」
「いやっ! その……気持ち悪いと思うでしょうから……」
「え? 大丈夫。気持ち悪いってなることほとんど無いから。一番最近気持ち悪いと思ったのはバイキングとか言われる振り子みたいに揺らされるアトラクションぐらいだから」
「本当ですか? 本当だとしてもそれは車酔いの類いですが……。その……男性の連絡先だな~と思っていたんです」
ああ……。
喜んでいたのね、異性の連絡先を登録したこと。……ごめん! すぐ使わなくなってしまうんだろうなとか思って!
「僕でごめん……」
「え!? いえ! 私の方こそ登録させてしまって! 機種変更の際は引き継がなくて良いですからね!」
「いや、大事にするよ……」
凛紗さんは深く頭を下げて僕と別れた。




