2-24答えて誘われて ☆
次の日、また僕は四組の前で待った。
「冴羅さん」
「また質問かしら?」
相変わらず落ち着いた返答だった。
「いや。夏休みのこと、答えようと思って」
いつもの廊下端に移る間になんて言えば良いか考えていないことに気付いた。「冴羅さんに」などと名指しするとほぼ嘘だ。バレるし嘘でもなんでも良いか……。それで言い回しは、協力する・付き合う・提案に乗る・誘いに乗る……
「聴いても良いかしら?」
「あ、はい! 冴羅さん、付き合ってください!」
…………それが一番無い。
案の定冴羅さんは僕を睨んだ。
「……夏休みの間だけよね?」
「はっはい!! そうですその通りです!」
「第一は妹のためよ?」
「あ……ああ、はい」
そういえばそうだった。正直何がどの目的だか分からなくなる。
「ごめんなさい。できる限りだけれど、本当にお返しするつもりはあるから」
そんな複雑な状況だからそう言っていたことも忘れていた。
「どんなことが良いかしら」
何が良いんだろう? これといって思い付かないけど……。
「今じゃなくても」「凛紗さんと夏休み過ごせるだけで充分かな」
本心ではある。
「何……え?」
けどその反応を見て思う。これだから櫓からたらしって言われるんだろうな~って。
「い、いや、思ってもないわよね? 決まったら教えてもらえるかしら」
その焦った話し方や薄ら笑いが、誰かに似ていた。
「では、今更だけど、まずは連絡先ね」
交換しながら会話が続く。
「それで……一緒に出掛けてみないかしら」
「デート……?」
「改めて口にしないでほしいわ……。どこに行くかも決めておいたの」
冴羅さんノリノリだ! この選択がどうなるかは分からないけど、凛紗さんが考えてくれていたことを潰さなかったことだけは良かったと思う。
あ、映画以外がいいな。
「映画でいいかしら。ホラーなんだけれど」
「…………」
「苦手……よね。大丈夫、私も苦手だから」
なんで? あ、また姉妹共通の趣味なのかな~じゃあしょうがないな~って思いかけたのに苦手なの? ちょっとうんざりしちゃったよ? それとおっしゃる通りそんなに得意じゃないよ?
日取りと場所と作品を告げられ、しぶしぶ了承した。
「他にどんなことなら付き合っている感じになるかしら」
「違和感が出ないようにもしたいし」
「そうね……なら二人以上でないと入りにくい場所とか。例えばテーマパークなんて」
「僕はあまりそういったことを気にしなくて……。あ、割引は得られたりするのは良いよね!」
「それはそうね。……私たち、気が合わないかもしれないわ……。い、いいえ、相手のことを知ることも大事なことよね! それに擬似的なものなのだから合う合わないは関係無いわ!」
僕たちの関係が凛紗さんに知られる前に分解する可能性に気付いてから、僕たちは解散した。
「こうするのがいいかしら」
と、少し手を振ってくれた。その表情がぎこちないながらも良い笑顔だった。




