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13,レイ師匠 ディークside

今日はディークsideです。


 きっかけはいつだっただろう。多分、4歳年下のヴィンとジーク伯爵家の令嬢だったメルレインとの婚約だった。


 何も持たずに出かけたヴィンはピンク色で丁寧にラッピングされた箱らしき物を手に帰って来た。

 何が入っているのかを聞くと、「メルレイン嬢に貰った」と部屋で箱の中身を見せてくれた。


 「わぁ…!綺麗…」

 中に入っていたのは透明なグラス。尾の長い金魚が精巧に彫られていた。どれだけの時間をかけて作ったのだろうか。


 たった1つのグラスに目を奪われた。作った職人に会いたい。強く思った。

 「僕があっちで出して貰ったのは大きな向日葵を囲む様に夏の花が彫られていました。中はフルーツミックスのジュースのようで色も黄色だったから凄く模様が映えていたんです」


 ヴィンはそこで見聞きしたことを満足そうに語った。

 兄である僕が婚約をしていないから自然とヴィンに圧力がかかるし、ヴィン自身もこれが18回目の見合いだった。


 肉体派の第1王子、完璧過ぎると話題の第2王子、軽薄そうな第3王子、特に取り柄が目立たない第4王子、僕ら兄組に縁談が来ないのはそれぞれこんな風によくない噂があるから、ヴィンに舞い込むのは自分を飾り立てるアクセサリーにしやすく取り柄もないと噂だから。


 乗り気じゃなかった婚約だったはずなのに心は既にメルレイン嬢のもとにあるようだ。

 「それで、これは誰が作ったの?こんな緻密で細部まで計算ているデザインなんてこの国で見たことがない。そんな人間がいればウチの王が引き抜いているはずだ。何より、僕はこのグラスを作った人間を見てみたい」


 王家すら見たことがないそのグラスをなぜ伯爵家が持っていたのか。

 「あまり言いふらさないでほしいそうですが既に許可は得てきましたのでお話しします。このグラスを作ったのはー」


 ゴクリと喉がなる。


 「メルレイン嬢の兄、アレイ・ジークです」

 「は…?」


 取り繕うことも忘れ、素っ頓狂な声を上げる。それもそのはず、アレイ・ジークは1度顔を合わせたことがあるが、自分よりずっと小さい体だった。それに僕より年齢的には下だったはず。


 「僕も初めは信じられなかったんです。でも、アレイの手って陶器みたいに白いのに無傷じゃなかった。虐待とかじゃない。だからどうやって作ったのか本人に聞いてみたら、吹きガラスって作り方だから竿を持っていると剣だことはまた違うマメができるみたいなんです。それが回数毎日やると皮膚が薄いから切れるらしくて。

感動したと伝えたらこれをくれたんですよ。信用のおける人以外に口外しないでほしいと言われたから王家に良い印象は持っていないだろうと思います」


 凄い。

 純粋にそう思った。あんな小さな体でこんな才能を発揮しているなんて。


 それを自分で良く理解して隠している。王家に取り込まれないように。

 その瞬間から僕は王子とか王家とか関係なく、1人の人間として彼を尊敬し、崇拝しようと決めた。


 ヴィンを使ってレイともやり取りをしていて双子の兄、ディアとも交流を持った。

 レイと連絡が一切取れなくなったのはジーク家の当主が変わってから領主としての仕事を押し付けられて監禁されていたからだったと、彼が魔法陣を開発してから教えてもらった。

 

 相変わらず型破りだった。本来魔法陣は複雑過ぎて王家が選んだ精鋭が大勢で取り掛かっても数週間はかかるというものだ。僕には辛うじて理解できるそれが手紙のやり取りにしか使えない魔法陣だったとは。しかももっと魔力を消費する転移魔法まで編み出していた。


 それなのにレイは変わっていなかった。

 華奢だった体が更に細くなり、陶器のような肌が青白くなっているなど外見の特徴以外は何も。


 その数日後、王家はアレイという優秀な人材と王子3人、更にはシュノシュワ侯爵家までを手放した。


 レイは「王子も荷物のうちだから。荷物に制限はされなかった」と言っていた。本人は自覚していなかったが明らかに声に怒気をはらんでいる。そうでなきゃ僕らは荷物としてついて行ったりしないで普通に人間として国を出ていた。


 レイの祖父がいるという隣国アレル王国のラインスター領はとても居心地が良かった。

 

 そして僕はレイの弟子としてガラス細工について教えを乞うことになった。

 目の前で実際に実践して見せてくれたレイは完全に職人の顔。


 初日に豪雪地帯だというラインスター領の雪を魔法で氷の彫刻に変えてしまったアレイも領民への優しさが滲んでいて信徒としては嬉しい限りだ。


 僕は孤児院を専門学校化したときのお礼といって透明なガラス片で作られた手持ちランプをくれた。試作品だとしても嬉しかった。信徒として。


 魔石を使って色付きガラスを作ると張り切っていた年相応の顔とガラスに向き合う真剣な表情は弟子でしか見られない。


 工房に来ない限り誰も見ない。少しだけ優越感に浸った。

 


 結論、レイは最高。僕の憧れ。

読んでいただきありがとうございます。

次話投稿は明日になります。

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