47話 懐かしの……
遅くなりました。
「それではお部屋の方へ案内させていただきます。」
そう言って、宿の受付の女性は先を進んで行った。
なんだかんだ太陽が真上に来るような時間まで遊び歩いてしまったので、近くでいい宿がないか出店の店員さんに聞くと、ここを紹介された。
俺達が最低でも充たして欲しい条件は風呂があることと、ベッドが三つ、もしくは二部屋借りられるような宿だった。
ひとまず風呂のある宿で聞いて回って、この宿を紹介されたので受付の女性に三人部屋があるか聞くと、奇跡的に家族客のキャンセルが入った部屋があるらしく、そこに入れるとの事だった。
この建物自体の見た目も、日本にあったホテルとほとんど変わらないような内装で、エントランスホールから上階に行ける階段が伸びている感じだ。
ワンチャン、エレベーター擬きもあるかなぁ?なんて考えながら案内されたがさすがにそこまでは無いようで、階段を上って部屋まで案内された。
「こちらがお客様のお部屋となります。お部屋の設備のご説明も致しましょうか?」
部屋の前について、女性が部屋の鍵を開けながらそう言う。
「あー、じゃあ必要そうなものをお願いします」
「かしこまりました。それではまず、お部屋に入りまして、一番初めにこの場所で靴を脱いでいただきます。この段差になっている所で脱いでいただければ問題ありません。」
女性は履いていた黒色のヒールの様な靴を脱ぎながら説明する。
「脱いだ靴が邪魔になるようでしたらこちらのスペースに収納出来るようになっておりますのでご使用ください。」
と、下駄箱の戸を開け見せてくる。
部屋に靴を脱いで上がったり、靴を下駄箱に閉まったりと今までの宿とは違い、どこか日本らしい雰囲気が感じられる宿だった。
いや、もういっその事ホテルと言っても過言では無いかもしれない。
「続きまして、こちらが大部屋です。皆様でおくつろぎになれる場所となっています。」
俺達が靴を脱いで上がると、それを見ながら女性は部屋の先に進んでいく。
そのまま扉をひとつ開けると、中には大人が5人ほど座れるような大きさのソファと、その目の前に配置された木製のテーブル。
部屋の端には観葉植物が飾られており、何も知らない日本人がこの部屋に来ても何も違和感を感じないであろう程の高級感だった。
「そして、この大部屋から見える、こちらが調理場となります。こちらの調理場は——」
説明を頼んでおいてアレだが、あまりにも説明が長すぎた……
このコンロは最新型のモデルで中心にある炎の魔法石がどうたらこうたらや、その他細かい設備のここが素晴らしいみたいな説明を延々としていた。
確かにこの世界の技術的に素晴らしいものなのは明らかだが、キッチンの説明だけで30分も使ったのはさすがに長すぎだ。
「それでは次に、お風呂場とトイレを。こちらにございます。」
そう言って、女性は先へ進んでいく。
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「以上で説明は終わりましたが、何かご質問等はありますでしょうか?」
結局あの後、風呂やトイレでもキッチンと同じ感じの説明が繰り返され、最後に寝室に案内されて説明は終わった。
寝室の説明の時、「防音設備も優れていますので、声量を気にせずにお楽しみ頂けます」とか言ってたが、俺はそれを黙殺した。
その時の静奈や美咲の視線が俺の下半身に向いていた気がするが気のせいだろう。そうだと思いたい。
「大丈夫です。」
「かしこまりました。こちらがお部屋の鍵となります。お出かけの際には受付へ預けて頂くこととなります。料金は宿から出る際にまとめてお支払いをお願いします。料金はおひとり様一泊銀貨5枚です。」
女性は部屋の鍵を俺に渡してから料金などの説明をした。
「分かりました」
「それでは、失礼します」
そう言って女性は部屋を出ていった。
「じゃあちょっと遅くなっちゃったけど、お昼ご飯にしよっか!」
「さんせーい!来る時も話したけど、おにぃにアレを食べて欲しいから私作る!」
「あ、私も手伝うよ」
すると、静奈と美咲は空で話していた何かを作ってくれるらしい。
昼飯の件で出てきたということは『アレ』とは食べ物なんだろう。
「俺も何か手伝えることはあるか?」
2人だけに任せるのも申し訳ないと思い、そう聞くが……
「おにぃはソファに座って待ってて」
「美味しく作るから楽しみに待っててね」
2人にそう言われ、俺はソファに座って待つことにした。
俺がソファに座ると、相変わらず頭にくっついていたリュースが俺の横に飛んできて念話を寄越してきた。
《この後はどうする予定なんだ?》
《色々と考えてはいるが、まずは金を稼ぐのが先だな。この宿もそうだが結構出費が多い。これからも旅を続けていくんだから金欠で宿に泊まれないなんて嫌だろ?》
《金を稼ぐって言っても何をするんだ?》
《そりゃあ簡単だろ。リュースは違うが俺たちは冒険者だ。2人はまだランクが低いが、俺はBランクで2人よりは高い。その分依頼の成功報酬も美味いものが多いからな。ギルドで依頼を受けて金を稼ぐ予定だ。》
アルスの封印されていた迷宮の魔物が売れればそれを売るだけでそれなりの金にはなる気がするが、多分金になるのは2階層以降の魔物だろう。
1階層のボスを倒せたところで、2階層から敵のレベルが段違いになる。
俺もレイスがいたから何とかなっただけで、あれだけのステータスをしていながら死にかけたからな。
となるとあの迷宮行ってた他の奴らは1階層での狩りを主にしていたんだろう。
だったら市場にそれなりに素材が流れてそうだし、あまり高くなさそう。
そうなると高く売れそうなのは2階層以降。
だが、あれだけ強い魔物だったんだ。
2階層以降の魔物なんて買取に出したら何を言われるか分からない。
今俺は種族がちょっとバグっててあまり目立つ行動を取るのは得策ではないと思う。
更にはこんな「神様命!」みたいな国で俺が半分とはいえ悪魔であるとバレれば討伐隊とか出されそう。
《それでは昼飯後はギルドに向かうのだな?》
《そうなるな》
「出来たよー!」
と、俺がリュースと念話している間に『アレ』とやらが出来たらしい。
静奈が2つの皿を持って歩いてきた。
まだなんなのか見えてはいないが、どこか懐かしい、それでいて大好きな匂いがした。
「じゃーん!カレーです!」
そう言って静奈は俺に皿を渡してきた。
そしてもうひとつはリュースの前に置く。
見ると、地球でお馴染みのあのカレーだった。
ジャガイモやニンジンらしき見た目の固形物が所々にある、ちゃんとしたカレーだ。
「こ、これどうしたんだ……?」
「ふふーん。前にいた街でね、おにぃが迷宮に行ってる間にちょっと人助けをしてね。そのお礼にカレー粉を貰ったんだよ。あの人はこれは売れる!って言ってたけど絶対売れるよね」
静奈が説明をしてくれるが、俺の視線はカレーに釘付けだ。
まさかこの世界でカレーを食べることが出来るなんて……
地球の食べ物なんて食べられないと思ってた。
「さぁ、食べようか」
すると、後から美咲も2人分の皿を持ってやってきた。
静奈と美咲の分だろう。
「おう!」
そして、手を合わせて
「「「いただきます!」」」
言った瞬間、俺はすぐにカレーを口に運ぶのだった。
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「あー……美味かった……。」
あの後結局俺は3回もお代りをしてカレーを食いまくった。
願わくば白米も欲しかったが、今まで俺はこの世界で米を見た事がなかった。
迷宮を巡る旅の目的に米を探すことも追加された。
日本人の俺らからしたら米が食えない現状はダイコンの入っていないおでんくらい味気ない。
何としてでも米をみつけよう。
「さて、腹も膨れたし早速出かけるか。」
「なにするの?」
そう言えば2人には話してなかったな……
ということで、2人にもリュースにしたのと同じ説明をした。
すると……
「じゃあ早く行こ!」
「あんまり遅くならない依頼があればいいなぁ」
なんて、結構乗り気だった。
「2人は観光とかじゃなくて良かったか?なんなら2人は色々と見て回っててもいいぞ?」
女子としてはやはりショッピングとかしたいのではないだろうか。
遊びたい盛りの年頃だし……
「晴斗くんにだけ働かせて私たちは遊んでるなんて出来ないよ。どうせ遊びに行くならみんなで行った方が楽しいだろうし」
「そうだよ!確かに観光もしたいけど、それはおにぃと一緒がいい!」
2人とも……
「ありがとな。できるだけ稼げて早く終われそうな依頼を探そうか」
「「うん!」」
そうして、俺たちは依頼を受けるために宿を出て、冒険者ギルドへ向かった。
異世界でカレーとかマヨネーズを広めるのってテンプレですよね。
まぁ、僕はしませんでしたけど。
明日も更新する予定です。
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