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46話 移動

大分期間が空いてしまい申し訳ありません!

 リュースから報告を受けて、俺たちは宿に向かっていた。

 辺りは昨日までと違い、活気がなく静まり返っていた。


 ……どうやらこの街の人達は皆、あの『救済』とやらを見に行ってるようだ。


 昔の日本でも、キリスト教の信者を減らすために踏み絵なんかをさせて見つけ次第殺す、みたいなことをしていたらしいし、宗教関係じゃよくある事なのかも知れないが、いざ目にしてみるとどこか狂気じみたものを感じた。

 実際にウェストミニスターなんて神が存在するのかすら分からないが、それとは別の神を信仰していただけで殺されるのか……


 そんなことを考えながら歩いていると、もう宿が近くに見えていた。



 ▷▶︎▷▶︎▷▶︎▷



「おぉ!ハルト!帰ってきてそうそう悪いが、どういう事か説明してもらおうか」


 俺達が部屋に戻ってくるなり、レイスは早口に捲し立ててきた。


「あ、あぁ……説明するから少し待ってくれ」


 突然詰め寄られ、びっくりしてしまった。

 考えてみれば死んだはずなのに生きてて、変な生物(リュース)と一緒に宿のベッドで寝てたってなったらこうもなるか。


「えっとだな……俺と迷宮に潜ってた所までは覚えてるよな?」


「あぁ、最後のボス、デュラルカイザー相手に戦ってて私は死んだはずだったんだが……」


 説明するにしてもどこまで説明する?

 1回死んだが天使の力で生き返ったと言ったところで「こいつ頭大丈夫か?」ってなんだけなんじゃないか?

 いやでも、レイス自身の事なんだから正直に言った方がいいのか……?


「信じてもられるか分からないが……確かにレイスはあの場で死んだ。だが、天使に生き返らせてもらったんだ。」


「テンシ?」


「そう。天使。」


「神の使いとか言われる天使?」


「その天使。」


「はぁ……ハルト、頭でもぶつけたか?」


 これがまぁ普通の反応だよな。

 ボスと戦ってたと思ったらいきなり天使だもんな。

 話の関係性無さすぎて伝わらねぇよ。


「ホントのことなんだ。」


「……そうか。」


 俺が尚も真剣な顔で言うと、一応は納得してくれたようだ。

 ていうか良くもまぁこんなの納得してくれたと自分でも思うよ。

 もしこれが逆の立場で、俺が死んでたはずってなってる所に「天使が〜」なんて言われたらまず正気を疑う。


「それで、何か体でおかしな所とかないか?」


 生き返ったとはいえ、1度死んでしまっている体だ。

 どこかに異常があるようだったら対処しないといけない。


「んー……ずっと眠っていたから体が訛ってはいるが、それ以外は以前よりも大分調子が良さそうだぞ」


「ステータスも何もないか?」


 俺がそう聞くと、レイスは1度ステータスを見て、少し目を見開いた。


「以前よりも能力値が上がってる……」


「悪いところはないんだな?」


「あ、あぁ」


 能力値が上がったこと自体は全然いい事だし、特に言うことは無いが、もし悪いところがあったら治さないと。

 そんな気持ちで聞いたが、能力値が上がっていたことに驚いているのか返事はつっかえつっかえだった。


「起きたてで悪いんだが、これからこの街を出ようとしてた所なんだが……」


「あぁ、私か。私は一度共和国に戻ることにするよ」


 共和国?

 レイスって共和国出身だったのか?

 確か共和国にも迷宮があったはずだからのちのち行くことになるだろう。


「じゃあここでお別れか」


「なに、今生の別れという訳でもないんだ。共和国に来る機会があれば、ぜひ首都にあるフォーセシス家に寄ってくれ。」


「行った時は寄らせてもらうよ」


「今回のことは色々とありがとう。では、またな。」


 レイスはそう言って1度頭を下げてから部屋を出ていった。


 “ありがとう”はこっちのセリフだっつの。

 レイスには沢山助けられたし、剣も教えて貰った。

 感謝してもしきれない程だ。

 出来ることなら一緒に行きたかったが、俺にはやらないといけないことがある。

 まぁ、レイスの言ってた通り今生の別れって訳でもない。

 共和国で会えるのかもしれないし、それとも別の場所で偶然出会うかもしれない。

 またレイスに会えるのを楽しみにしておこう。


「じゃあ俺達も行くか」


「「うん!」」


 レイスが行ったあと、少ししてから俺達も移動を開始することにした。

 二人に声をかけると、待ってました!と言わんばかりに元気な返事が返ってきた。


 俺は未だにベッドで丸まって寝ているリュースを起こして、定位置に乗っけて宿を出る。

 受付には男性が戻ってきていたので、一泊銀貨3枚を20日分。合計銀貨60枚を支払った。


 一応金はあるが、それも無くならないほどあるって訳じゃない。

 二人のギルドランクを上げるのと金稼ぎを同時に行っていこう。

 それもとりあえず聖都に行ってからの事なんだけど。


《主よ、お土産は?》


《……好きな物選んでいいぞ》


 忘れてたわけじゃねぇよ?

 ただ、リュースが何が欲しいのか分からなかったから本人には聞いた方がいいんじゃないかと思って買わなかっただけで……

 いや、ほんとだから。

 嘘つかないから……


《忘れておったな?》


 俺は無言で目を逸らした。



 ▷▶︎▷▶︎▷▶︎▷



 結局出店で色々と買わされた。

 串焼きからクリームパンの様な物や、タコの入っていないたこ焼きみたいなものも買った。

 途中から静奈と美咲も食べたそうにしていたので、二人の分も買って外に出るまでにそれなりのお金を使ってしまった。


「リュース、大きくなってくれ」


 街を出て、人気のない森の中に入ったところで俺はリュースにそう言う。

 すると、頭の上にくっついていたリュースは少し離れた位置まで飛ぶと、俺達が余裕を持って乗れるほどの大きさに変わった。


 俺たちがリュースに乗ると、リュースは上昇し始める。

 例のごとく、俺が真ん中で俺の足の間に静奈が座り、美咲が後ろから俺に抱きつくと言った形で乗っている。


「聖都がどこにあるかまでは把握していないからとりあえず大きめの街が見えるまでは道に沿って飛んでいってくれ。」


 リュースにそう言うと、念話で《了解した》と送ってきてから、ゆっくりと進み始めた。

 だんだんと速度が上がってくるにつれ風も強くなってくるので俺はリュースの前に透明な風よけ用の障壁を張り、風を防ぐ。


 高度があるから結構風が冷たいし、何より落ちたら危ないもんな。


「あ、そうだ。おにぃ!聖都に着いたらいいもの作ってあげる!」


 飛び始めてから数分後、景色を眺めながら飛んでいると、静奈が急にそんなことを言い始めた。


「いいもの?」


「うん!多分すっごく驚くと思うよ」


 静奈はこちらをチラッと見ながら笑顔で言う。


「静奈ちゃん、アレを作るの?」


「うん。私たちは知ってるけどおにぃはまだ知らないからね。」


 すると、美咲も俺の肩越しに静奈にそう声をかけた。

 どうやら美咲も何を作るのか知っているようだ。


「聖都に着いたら楽しみに待ってる」


 俺たちはそんな会話をしながらも、聖都に向かって飛んでいくのであった。



 ▷▶︎▷▶︎▷▶︎▷



 そんなこんなで数十分。

 リュースの背に乗って飛び続けた結果、聖都にたどり着いた。


 聖都は真っ白な城を中心に円形に作られた都市だ。

 生活水準は帝都よりも高く、向こうが水道などで水を引いている中こちらは全てを魔石という、特定の魔物から入手出来る魔力の籠った石を使うことで代用している。


 道はしっかりと整備されており、歩道と馬車が通るための道が分けられており、端の方には街灯のようなものも設置されている。

 きっとこれも夜になれば辺りを明るく照らすのだろう。


 俺たちは聖都の外の森で降り、外壁の門で検査を受けてから街へ来た。

 検査では冒険者ギルドのギルドカードを見せただけだが、一応と犯罪歴が無いかも前回も使われた水晶で調べた。

 結果は無かったが。


 ここでも「信仰している神はいるか」と聞かれたが、俺は「いない」と答えた。

 前までいた街のことを考えると、ここはウェストミニスターを信仰しているとでも答えた方がいいのかと思ったが、下手なことを言って逆にここではウェストミニスターが邪神扱いされていたら“救済”されかねないと思い、正直に答えた。


 図書館で各国のことは下調べ済みなので大丈夫だと思っていたんだが、宗教関係の事までは書いてなかった。

 それも調べるとなるとまた別の本を読まないといけないのかもしれない。

 本で得た知識は、どの国ではどのような物が優れていて、どのような迷宮があるか、これらだけだ。

 もっとちゃんと調べてくればよかったと思わなくもないが、後の祭り。

 もう来てしまったのでどうしようも無い。


「おにぃ!早速宿とろ!」


「晴斗くん!おいてっちゃうよ!」


 二人は検査が終わるなり、すぐに走って色々な場所を見に行ってしまった。

 少し離れた場所で二人がそう言っているのが聞こえた。


「あぁ、分かったよ。すぐ行く」


 そんな二人に俺は苦笑いを浮かべながらも小走りで近寄るのだった。


 俺は二人に追いついて宿を探していたのだが、2人は少し目を離すとすぐにあっちへフラフラ、こっちへフラフラと、色々な場所へ行ってしまう。


 こいつら一応高校生だよな?

 なんで動きが小学生みたいなの?

 ていうか小学生でもそんなちょっと目を離しただけじゃどこにも行かねぇよ……


「二人とも、ちょっと落ち着け。どっちにしろ迷宮攻略のためにこの街には当分留まるんだ。いつでも観光できるだろ?」


「そうだけど……あ、あれ美味しそう……!」


「おい静奈、言ったそばからどっか行こうとすんな」


「あう!」


 俺はまたしてもフラフラと出店に近づいていこうとする静奈の頭に軽くチョップを食らわせると、こちらもどこかに行こうとしている美咲と手を繋いでそれを阻止する。


「あっ……」


 急に手を握った事で驚いたのか、美咲は一瞬ビクッと体を震わせたがそれでもすぐに顔を赤くしながら握り返してくれた。


 よし、どこに行こうとしてたか知らねぇけど、気をそらすことには成功した。


「あ!おにぃ!美咲さんと手繋いでる!ずるい!」


 すると、それを見た静奈も俺の反対の手に飛びついてくる。


「あー、じゃあ静奈とも繋ぐから……」


 とまぁ、こんな感じて宿にたどり着いたのは昼過ぎ頃だった。

今月は休日を除いて、週二で更新する予定なのでよろしくお願いします。

休日はできれば一本づつ更新したいと思っています。


面白いと思って頂ければ評価やブックマーク、感想の方よろしくお願いします。

誤字などありましたら教えていただけると幸いです。

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