44話 過去の記憶
宿に帰ってきて、少し経った頃に夕食の準備が整ったらしく、みんなで夕食を食べた。
夕食も食べ終わり、さぁ寝るぞ、となった所で問題が発生した。
レイスが増えたことで部屋が狭くなり、寝る場所がない。
「仕方ない、今から受付に言ってもう一部屋借りるか。」
突然だから借りれるかは分からないが。
もし借りれないようだったら俺が床で寝るなりすればいいか。
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受付に言うと、隣の部屋が空いていると言うことなので、料金を払ってそこも借りる。
静奈達は部屋に置いてきたのでこれから戻って話す予定だ。
隣の部屋の鍵を持って、静奈達のいる部屋まで戻る。
その途中で、俺らと同じように宿泊していると思われる人達とすれ違った。
兄弟なのか、全体的に似通った雰囲気を感じる少年たちだった。
「……ん?」
俺がその少年たちとすれ違う時に、妙な違和感があったので、振り返って見てみるがよく分からず、気にしないことにして、そのまま部屋に戻った。
「あー、おにぃおかえりー。」
「おう、ただいま」
部屋に戻ると、静奈が真っ先に声をかけてきたので、俺もそれに返事をする。
すると、リュースは無言で飛んでくると、俺の頭の上に着地した。
俺は久しぶりのリュースの重みを感じていると美咲が話しかけてきた。
「それで、部屋はとれたの?」
「あぁ、隣の部屋が空いていたらしくてな。そこを借りてきた。」
「よーし!じゃあ誰がそっちの部屋に行くのかジャンケンで決めよ!」
俺の返事を聞いて、静奈がそんなことを提案してくる。
まぁジャンケンで決めてもいいんだが……
「済まないんだが、隣の部屋には俺に行かせて欲しいんだが」
リュースと話をしないといけないからできれば1人になりたい。
正確にはリュースもいるから1人と1匹だが。
「えぇ〜!せっかくおにぃと寝れると思ったのに!」
「ごめんな?やっぱり男女で同じ部屋ってのもな、おかしいと思ったからさ。」
「むぅ……」
「静奈ちゃん、しょうがないよ。今回は我慢しよ?」
静奈をなんとか説得しようとしていると、美咲も手伝ってくれた。
それでもまだ納得していなさそうだったが、一応は了承してくれたのかもう何も言ってこなかった。
「ありがとな、今度またどっか連れてってやるからそれで許してくれ。」
俺はそう言って静奈の頭をわしゃわしゃと撫でる。
静奈は最初大人しく撫でられていたが、次第に不機嫌な顔になって
「もう!髪の毛がぐちゃぐちゃになっちゃうからやめて!」
と、言ってそっぽを向いてしまった。
……昔は喜んでくれたんだがな。
もう嬉しくないか。
成長したんだな……
お兄ちゃん嬉しいよ。
「そうか、ごめんな。それじゃあ隣に行くから、何かあったらすぐに来てくれ。」
そう言って俺は部屋を出て、隣の部屋に入る。
部屋の中は静奈達のところと全く同じだった。
俺は一応部屋の鍵を閉めて、防音の魔法をかける。
その後ベッドに座ってリュースから話を聞くことにした。
「さて、リュースよ。色々話してもらおうか」
俺がそう言うと、リュースは頭の上から飛び、向かいのもうひとつのベッドに乗ると、こっちを見ながら返事をする。
「……怒らないか?」
「あぁ、怒らないから言ってみろ」
怒らないさ。
それ相応の理由があるのならな。
「……った」
「ん?」
「……とったのだ。」
「聞こえないぞ?」
「忘れとったのだ!連絡するのを!」
「よし、リュース。歯を食いしばれ」
「怒らないと言ったではないか!!」
こんなの怒るだろ。
なんだよ連絡するの忘れてたって……
「そもそも天界にあったお菓子が美味いのが悪いのだ!私も最初は怪しい天使だとおもっておったよ!けど!けど!!お菓子がぁ!!」
そんな叫ぶなよ……
どんだけお菓子美味しかったんだ。
「はぁ……リュースはお仕置として1ヶ月おやつ抜きだ。」
「!?まっ、待ってくれ!!それだけは!」
「ダメでぇす!おやつ抜きはやめませ〜ん!」
俺が罰を言い渡すと、リュースは必死に許しを請うてきた。
それを俺は笑顔で却下する。
「主の鬼!悪魔!」
「はっはっは!正解だァ!つい最近人間をやめたからな!なんとでも言うがいいさ!」
ていうかこいつ前までそんなにお菓子とか好きって訳じゃなかったよな?
なんでこんなお菓子好きになってしまったんだ?
「そんなこと言ってていいのか!?私は魔王の所に戻ってしまうぞ!?主のこと悪く言ってしまうぞ!戦争起こるかもしれないぞ!」
「お?やってみろよ。魔王がどの程度のモンかは知らねぇが、今の俺は何故かステータスバグって数値すら出なくなったほどだぞ!」
ほんと、俺の数値どこいっちゃったんだろうな。
魔物ですらちゃんとステータス持ってんのに、俺なんてAとかBとかそんな表記の仕方よ?
おかしくね?
「どういう事だ!なんでそんなことになっている!?」
「そんなこと俺が聞きてぇよ。なんでかは分からんがステータスの表記がだいぶ変わっちゃったんだよな」
強くなっているとは思うが、どのレベルの物なのかは分からない。
あと、相手が【魔の王】だとしたら俺は【悪魔の王】だしな。
油断は出来ないが、戦争ってなっても俺自身は死なない自信がある。
「ぬ……【鑑定】が通じぬ。」
「え?まじで?」
「大マジだ。本当にステータスがおかしくなってしまったのかも知れぬな」
なー。
ほんとどうすっかなぁ……
そんなことを考えながらベッドに寝転がる。
すると、だんだんと眠気が襲ってきたので、俺はリュースに「寝るわ」とだけ伝えて目を閉じた。
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「ッ!待ってくれ!!」
俺は叫びながら飛び起きる。
息は荒く、汗が頬を伝い流れる。
「はぁ……はぁ……。なんだよ……」
——夢を見た。
幼い頃の夢だ。
父さんと母さんと静奈と俺。
全員で遊園地に行った時のこと。
俺がまだ小学生に上がり立ての頃、入学祝いに連れていってもらった遊園地。
静奈はまだ保育園に通っていたし、あの頃のことはあまり覚えていないだろう。
だが俺にとっては忘れられない。いや、忘れちゃいけない記憶。
あの時、俺たち家族はみんなで遊園地を満喫した。
その帰りの車の中では両親が「楽しかったねー」や「また皆で来ような」など、そんなたわいもない話をしていた。
静奈は俺の隣で眠っていた。
きっと遊び疲れたんだと思う。
俺も疲れてうとうとしていた。
幸せだった。
家族みんなでそうして遊びに行けるのが、楽しくてしょうがなかった。
だが、それもその日までだった。
俺は急な衝撃と大きな音で一気に目が覚めた。
辺りを見渡すも、車の中は暗くて何も見えなかった。
隣に座っていた静奈もそれで目が覚めたのか、驚いて泣き出してしまった。
俺はどうにか静奈を泣き止ませようと、シートベルトを外し、静奈を膝の上に乗せ、頭を撫でた。
静奈の鳴き声を聞いても、俺以外誰も反応してくれなかった。
いつも真っ先に声をかけてくれる両親の反応がないことに、俺は違和感を感じつつも、何も見えないので静奈を宥めることに集中していた。
10分くらいだろうか。
ようやく静奈が泣き止んで、俺の服を食べながらまた眠りについた頃、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
その音はどんどんと近づいてきて、ついには近くに止まった。
それから少し経って、いきなり車の扉が開けられたのだった。
そして、扉を開けた男の人の言われるがまま、静奈を抱っこして外に出ると、俺達が乗っていた車がトラックと正面衝突していた。
事故なんて朝のテレビニュースでしか見たことのなかった俺は、現実味のないその光景にただ呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。
車の前半分が、ほとんど原型を留めないほどに潰れており、どこかで夢なんじゃないかと思っている自分がいた。
それでも、別の男の人たちが前の扉をこじ開けて、中にいた父さんと母さんを運び出しているのを見ると、俺はそこに走り出していた。
運び出された両親は、二人とももう助からないであろう量の血を頭から流していて、そんな両親に俺は泣きながら声をかけていた。
それから俺と静奈も含めて救急車で病院に運ばれたが、両親は助からなかった。
医者に両親が間に合わなかったと伝えられた所で、だんだんと視界が暗転していき、そして目を覚ました。
「あー……なんつー夢見てんだよ……」
朝から一気にテンション下がった。
なんで今更あの夢を見たんだろうか。
両親が死んだことは受け入れたつもりなんだが……
昨日静奈に告白されて、家族と離れ離れになるかもしれないって心のどっかで思ってたんかな……
「主よ、大丈夫か?」
隣のベッドで丸まっていたリュースがそんなことを言ってくる。
「悪い。起こしたか?」
「いや、大丈夫だ。それよりも酷い顔だが……」
「少し悪い夢を見たんだ。」
夢だったらよかったのにな。
それだったら俺も静奈ももっと幸せに暮らせていたのかもしれない。
窓からはもう朝日がさしていた。
静奈たちももう目を覚ましているだろうか。
「顔洗ってくる……」
リュースにも心配される程の顔をしているらしい。
そんな顔で静奈や美咲に会ったら絶対心配されるだろ。
さっきのは夢だったと割り切れないだろうけど、切り替える為にまずは顔を洗おう。
それから二人のところに行こう。
今は誰かに会いたい気分だ。
晴斗達の両親が亡くなってしまったときの出来事です。
自分も最近祖父を亡くしたのですが、やはり家族を失うって辛いものです。
沢山お世話になったのに、全然返せてなくて、やるせない気持ちになりました。
両親には今からでも親孝行をしっかりして、後悔のないように出来たらと思っています。
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