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閑話 クリスマス

クリスマスですね。


「……!……にぃ!おにぃ!」


「っ!?」


 朝。

 太陽も昇っていないような時間に身体を揺すられ、目を覚ました。


「おはよう、おにい。」


「……あぁ、おはよう」


 俺を起こした張本人である静奈は「顔洗ってきてね~」なんて言いながら部屋を出ていく。

 ていうか、俺昨日部屋の鍵閉めて寝たよな……

 なんで普通に入ってきてんの?


「うわ……」


 枕元で充電されていたスマホで現在時刻を確認すると、まだ4時ちょっと過ぎくらいだ。

 あいつなんでこんな時間に起こしてきたんだ……?

 まぁせっかく起こされたんだし、顔洗ってくるか。


 俺の部屋は二階の一番端の部屋で、隣が静奈の部屋になっている。

 その奥にももうひとつ部屋があるが、今は誰も使っていない部屋だ。


 一階に降り、洗面所で顔を洗って目を覚ます。

 ここへ来る途中、リビングの電気が着いていたので先に行った静奈はそこにいるんだろう。

 俺は濡れた顔をタオルで拭いて、リビングに向かった。


「あ、おにぃおはよ~。朝ごはんもうちょっと後でいいか、一緒にテレビ見よ?」


 静奈はソファに座ってテレビを見ていた。

 俺が部屋に入ると、俺に気づいてそんなことを言ってくる。


「……テレビを見るのはいいが、なんでこんなに朝早くから俺は起こされたんだ?」


「え?昨日した約束、もう忘れちゃったの?」


 約束?

 静奈とした約束って言ったら、“明日一緒にプラネタリウムでも見に行くか”くらいしか思いつかないんだが……

 こんな4時くらいに起こされるような約束をした覚えは無い。


「プラネタリウム行くくらいしか約束してなくないか?」


「な~んだ、覚えてるんじゃん!それの予定決めを今からするんだよ!」


「予定決め?プラネタリウム見たら帰ってくるんじゃねぇの?」


 俺はてっきりそうだと思ってたんだが……

 俺はそんなことを思いながらもとりあえず静奈の横に腰掛ける。

 家のソファはそれなりに大きいものなので、二人くらいなら余裕で座れる。


「はぁ?おにぃ何言ってんの?せっかくのクリスマスに、プラネタリウムだけって、そんなの勿体なくない?一年に一度しか無いようなイベントなんだからさ、もっと色んなとこ行こうよ!」


「んー……そういうもんか……」


「そういうものだよ!だからおにぃ!一緒に予定決めよ?」


 くっ……可愛い……

 いや、これは断れないって……

 そんなさ、ちょっと不安そうな顔して上目遣いで首をコテンとさせながら見てくるんだぞ!

 こんなの俺が断れるわけねぇだろ!


「仕方ないな……」


「やった!ありがと、おにい!大好き!」


 がはぁっ!!

 可愛い笑顔でそんなことを言いながら抱きついてこないでください、お兄ちゃん尊死してしまいます。

 このままではまずい……話を逸らさねば……!


「そ、それで……予定を決めるにしても、何をどう決めるんだ?」


「んー……そうだねぇ……プラネタリウムは行くの決定だから、午前中に出て、どっかでお昼食べて、それからブラブラするって感じかなぁ……?」


「そうか、投映時間はだいたい1時間くらいって事だから、家を出るのは10時くらいでいいな」


 プラネタリウムは、隣町にあるのでそこまで行く必要がある。

 ここからプラネタリウムまでは電車も合わせて30分くらいで着くからそのくらいに家を出れば、11時の投映には間に合うな。


「じゃあおにぃ、10時に駅前で待ち合わせね!」


「は?いやいや待てよ、なんでわざわざ待ち合わせる必要がある?同じ家なんだから一緒に出れば良くないか?」


「うーん、それもそれでいいとは思うんだけど、やっぱりデートの定番って言ったら待ち合わせじゃない?ほら、“ごめーん、待った?”って女が登場して、“いや、今来たところだ、全然待ってないよ”って男が返すの。デートだったらこれはやりたい!」


 えぇ……

 なんとも面倒臭い……

 そもそもこれってデートだったのか?

 まぁ、静奈がそう言ってるならデートなんだろう。

 兄妹でデートってのもおかしな話ではあるが……


「じゃあ俺は静奈よりも先に行って待ってればいいのか?」


「うん。お願い!」


 そこまでやりたいというのなら俺も手伝ってやるか。

 久々に二人で出かけるんだもんな……

 どうせなら静奈に目一杯楽しんで貰いたい。

 デートって言うなら俺もちゃんとオシャレして行った方がいいんだろうか。

 困ったな……俺って服選びが下手なんだよ。

 オシャレとかできる自信ないんだが。


 俺はそんな事を考えながらテレビを見るのだった。



 …………

 ………

 ……



 あれから3時間経って、現在時刻は7時半。

 今までずっとテレビを見たりゲームをしたり、行く場所を話し合ったりと、なんだかんだ時間を潰していた。


「そろそろ朝飯にするか」


「うん!なんか手伝うことある?」


「あー、じゃぁ箸出しといてくれ」


「分かった!」


 飯を作るのは俺の仕事だ。

 両親を事故で亡くしてからそうだった。

 まぁ、そのせいもあって大分料理は上手くなったと思ってるんだがな。


「ハムエッグでいいか?」


「うん、私パンにしてね」


「おー」


 ハムエッグは楽でいい。

 ハムと卵をフライパンで焼いたら即できる。

 美味しいし作るの楽だしほんといい料理だと思う。


 出来た料理を盛り付けて、パンを用意して、朝食を食べ始めた。

 静奈はパンの上に俺の作ったハムエッグを乗せて食べていた。

 パンとハムエッグだけでは栄養バランスが偏ると思ったので、サラダとスープも準備した。


「「ご馳走様でした」」


 朝食も食べ終わり、現在時刻は8時ちょい過ぎ。


「それじゃあ俺はシャワー浴びてくるから」


 相手が妹とは言え、向こうはデートのつもりで行くんだ。

 俺もきちんと準備してから行った方がいいだろう。

 俺は静奈にそう言って風呂場に向かった。

 着替える服なども準備してシャワーを浴びる。


 風呂を出て、身体を拭いて服を着る。

 今日選んだ服は、俺が持ってた中でオシャレかな?と思うようなものを選んだつもりだ。

 下は黒色のスキニーパンツで、上は灰色のタートルネックスウェット。

 その上から紺色のチェスターコートを羽織って行く予定だ。


 ドライヤーで髪を乾かして、それなりに整えてから俺は風呂場を出た。

 リビングに行くと、静奈はもう自分の準備を始めるためかそこには居なかった。


「……もう少ししたら出るか」


 もうすぐ9時だ。

 大体9時半くらいに出れば、10分前くらいには駅前に着けるだろう。

 俺は部屋に戻ってスマホを弄ることにした。


 最近俺がハマってるスマホゲーは、モン〇トとかアズ〇ンとか……あとはバン〇リとかだ。

 ログインマラソンをしながらイベントをやっていたら周回したり、適当に時間を潰していた。


「ん……そろそろか」


 そうこうしている間に、時間が来たので一足先に家から出る。

 ハンガーに掛かっていたチェスターコートを羽織って、部屋から出る。

 玄関で、履きなれた靴を履いて、いざ駅前に。


「うぅ、さむ……」


 もう冬真っ只中、空気は冷え込み、息が凍る程の寒さになっている。

 もっと厚手のジャンパーでも着てこようか迷ったが、これが一番無難だと思ったので、多少の寒さは我慢して駅前に向かう。


 大体10分くらいで駅前に着いて静奈を待つ。

 少し早く着きすぎたかもしれない、なんて思いながら、ふと周りを見ると、そこらじゅうでカップルがイチャついていた。


 今日は12月25日……クリスマスだ。

 聖なる夜とはよく言ったもので、イエス・キリストの降誕祭を、仏教徒が多い日本で大々的に祝うとは、やはり日本人は祭りごとが好きなんだと実感する。


 残念なことに、誠に残念なことに、俺には彼女なんてものが出来た試しが無いから、こういった日にデートだとか経験がない。

 自分で考えてて虚しくなってきた。


「ねぇ、そこのイケメン君。今ひま?」


 俺が死んだような目で空虚を見つめていると、20歳くらいの女性が声をかけてきた。


「……え?イケメンて俺の事?」


 俺が驚いて聞き返すと、女性は笑いながら


「何言ってんのよ、当たり前じゃない」


 と、言ってきた。


 えぇ……

 確かに多少は顔が整った方だとは思っていたが、イケメンなんていわれたのは初めてだ。

 もしこの女性が言ってることが本当で、俺がイケメンの類に入るのなら、何故俺はモテないんだろうか……


「そんなこと言われたの初めてです。えっと……それで、今なんですけど、ちょっと用事が——」


「おにぃ!お待たせ!待った?」


 俺が、女性に返事をしようとすると、静奈がそう言いながら走り寄ってきた。


「あら?彼女さん?」


 女性は静奈を見て、勘違いしたのかそんなことを聞いてくる。

 その言葉を聞いて、静奈は頬を紅く染めながら、じっと俺のことを見つめてくるが、あえてそれは無視して


「いえ、彼女ではないんですけど……こいつと待ち合わせしてたんで、すいません。」


 と、答えた。

 俺がそう言って謝ると、女性は「気にしないで、邪魔しちゃってごめんね」と言って去っていった。


 その間ずっと静奈は頬を膨らませながら俺のことを睨みつけていたが、全然怖くない。

 むしろ可愛いまである。

 俺が静奈の膨らんだ頬を指でつつくと、フシュッ、と空気が抜けた。


「もう!おにぃは直ぐに知らない女の人と話して!」


 女性が見えなくなると、静奈が怒り始めた。


「いや、別に俺から話しかけた訳じゃ……」


「言い訳とか聞きたくないし~!」


「えぇ……」


 どうしろと?

 ほんとに俺から話しかけた訳じゃないし……

 はぁ……でも、せっかく静奈も楽しみにしてたんだし、何とか機嫌を直してもらうしかないか……


「静奈?どうしたら機嫌直してくれる?」


「ふん!」


 プイッとそっぽを向いてしまった。

 なんでこんなに拗ねてんだよ……


「しーずーなー?おーい?静奈さん?」


「……」


 ダメだ。

 返事がない。ただのしかばねのようだ。

 いや、こんなアホなこと考えてる場合じゃないだろ。


「静奈、それじゃあ、今日一日俺ができる範囲ならなんでも静奈の言うことを聞いてあげるから、それで機嫌直してくれないか?」


「……なんでも?」


 お、食いついた。


「あぁ、なんでもだ。」


「分かった。じゃあ許す……」


「ありがとう。」


 俺がそう言って頭を撫でると、静奈は嬉しそうに表情を緩ませた。


「ね、ねぇ、おにぃ……私の服、どう……?」


 俺が少しの間そうしてなでなでしていると、静奈は急にハッとなって俺から一歩離れてそんなことを聞いてくる。

 俺は今日の静奈の服装をよく見る。

 上は薄ピンクいろのセーターで、下は黒色のデニムパンツだ。


「可愛いと思う……似合ってるぞ。」


 オシャレはよく分からないが、静奈はとても可愛いと思う。

 少し小さめの身長に合う、可愛らしいコーディネートだと思った。


「そっか……おにぃもかっこいいよ!」


 俺が思ったことを正直に伝えると、静奈は嬉しそうな、ほっとしたような顔をして今度は俺の服装を褒めてくれた。


「お、おう……そ、そろそろ行くか」


 照れてしまったので、それを隠すために駅の方へ歩きだそうとすると、静奈は俺のコートの裾を引っ張った。


「ん、お願い。手、繋いでもいい?」


 上目遣いで、そんなことをお願いしてくる。

 いや可愛いなぁ!もう!


「い、いいぞ……ほら」


 俺が手を出すと、静奈はギュッと握ってきた。

 俺も握り返して改めて駅へ向かう。


 二人分の料金を払い、切符を買って電車に乗った。

 大体10分くらいで隣町には着くから、それまでは電車に揺られることになるな。


「おにぃ……」


 クリスマスだからか知らないが、車内に人が多く、静奈とそれなりに密着しなければならなかった。

 最初は顔を赤くして、恥ずかしがっていた静奈も、途中から慣れてきたのか、軽く抱きつくまでしてきた。


「あのー……静奈さん?一体何をしてらっしゃるので?」


「んー……」


 俺がそう聞いても返事は無かった。

 そうして俺は、静奈に抱きつかれたまま隣町に着いたのだった。


 隣町の駅にて


「お、おにぃ……さっきのは……その……」


「まぁあれだ、人が多かったからな。事故だよな」


 静奈が泣きそうになりながら言い訳を考えていたので、俺が助け舟を出してやった。

 まぁ、別に嫌だった訳でもないし……


「それよりも、早く移動しようぜ?」


「あっ……うん!」


 俺が話をそらそうとそう言って手を出すと、静奈は笑顔になり、俺の手を握ってくれた。

 俺はそれを握り返して、移動する。


 プラネタリウムでは、主に冬の星座なんかを紹介してくれるプリグラムになっていて、俺でも知ってた有名どころでは、オリオン座やおおいぬ座なんかがあった。

 夏に大三角があることは有名だが、冬にも大三角があるのは初めて知った。


「おにぃ!すっごい楽しかった!また来ようね!」


 静奈が目をキラキラさせながらそんなことを言ってくる。


「あぁ、そうだな……また来よう。」


 それから、ファミレスで昼食を食べる時も静奈は、アレが凄かった、コレが見てみたい、などを口にして終始楽しそうだった。


 昼食も摂り、町をぶらつくことになった。

 大型のショッピングモールに着いたので、中を色々と見て回る。

 クレープを食べたそうな目で見ていたら、買ってあげたりと、半ば食べ歩きみたいになっていた。


「ち、ちょっとお手洗行ってくるね!」


 色々なところを歩き回って、少し疲れたのでモール内にあったベンチで休憩していると、静奈がそう行ってきた。


「あぁ、行ってこい。迷子になるなよ?」


「ならないもん!」


 俺がそう言ってからかうと、静奈はそんなことを言いながら小走りで走って行った。

 静奈の姿が見えなくなった辺りで、俺も立ち上がり、見て回った中で見つけていた、貴金属店に来ていた。

 俺はその中でも、静奈に似合いそうなネックレスを探して購入する。


 少し遅くなったが、お兄サンタからのクリスマスプレゼントだ。

 静奈には日頃お世話になってるし、これくらい普通だよな?


 プレゼントように包装してもらい、それをポケットに入れて、ベンチに戻る。

 まだ静奈は帰ってきていないようだったので一安心だ。

 それからもう少し待っていると、静奈が帰ってきた。


「遅くなっちゃってごめんね!そろそろ行こっか」


 俺が近くにあった時計に目をやると、もう既に17時を回っていた。

 外は薄暗くなり始め、こんな時間でもう暗くなるなんて……と冬が本当に来ているのだと実感する。


「そうだな……」


 俺が歩きだそうとすると、静奈は俺の手を握ってくる。

 握るというか、指を絡ませてくるというか……

 いわゆる恋人繋ぎってやつをしてきた。


 俺が無言でジト目を向けると静奈はそれに気づかず、ニコニコと嬉しそうだった。

 そんな顔見せられたら拒否なんて出来ねぇんだよなぁ……

 仕方なく、俺からも握り返してやると、静奈は「えへへ……」とにやけながら歩き始めた。


 そうして手を繋いで、ショッピングモールを出ると、外にはイルミネーションがそこらじゅうにあった。

 きっとこの街を上空から見たら、さぞかし綺麗なんだろうと思いながらも、俺は目の前の光景から目が離せなかった。

 しばらくそうしてイルミネーションを見ていると、空から雪が降ってきた。


「あっ……ホワイトクリスマス……」


 ボソッと静奈がそう言った。

 なんか図らずもロマンチックな雰囲気になってしまったからな……

 本当は家で渡そうかと思ってたがさっき買ったネックレスを今渡すべきではないだろうか?


「静奈、メリークリスマス」


 俺がポケットから包装してもらったプレゼントを取り出して、静奈に渡す。

 イルミネーションを見た時から手は離れていたので、静奈は両手でプレゼントを受けった。


「おにぃ、これは……?」


「少し遅くなったがクリスマスプレゼントだ。」


「あ、開けてみてもいい?」


「あぁ」


 静奈は恐る恐る、包装を解いていき、包まれていた箱を開ける。


「っ……おにぃ」


 中身を確認すると、それを俺の方に突き出してくる。


「え……」


 もしかしていらない?

 返されてる?


「おにぃ……つけて」


 色々と考えてしまったが、そんなことはなかった。


「はいよ」


 俺は言われた通りにネックレスを静奈につけてあげた。

 俺が買ったのは、小柄な静奈に似合いそうな、銀色のハートがついたネックレスだ。

 そんなに高いものじゃないから、宝石の類は着いていないが、それでも十分可愛いものをえらんだつもりだ。


「ほら……出来たぞ」


 俺がつけ終わって離れようとすると、静奈は俺に抱きついてきた。


「おにぃ……ありがと。」


 抱きつきながらそんなことを言ってくる。

 俺は静奈の頭を撫でながら


「気にすんな、俺はいつも静奈に助けられてる。これだけじゃ全然返しきれない程な……」


 そう言うと、静奈は更に抱きしめる力を強くして、


「そんなことないもん。私の方がお兄ちゃんにいっぱい助けてもらってる。だから、お兄ちゃんありがとう……大好き!」


 そう言ってきた。


 俺たちは両親が死んでから、ずっと二人で生きてきた。

 苦しい時も楽しい時もいつも二人だった。

 俺はきっと静奈がいたから頑張ってこれたんだろう。

 だから……俺はその感謝の気持ちを伝えるためにも、静奈をぎゅっと抱きしめた。

皆様はどのように過ごす予定でしょうか。

恋人や家族などと一緒に過ごすのでしょうか?

今年のクリスマスは平日ということもあり、仕事がある方も多いでしょう。

もちろん学校なんて人もいると思います。

それでも、せっかくのクリスマス、良い一日となることを切に願っています。


今回の閑話は本編に比べて文字数が多くなりました……

なんか、こういうカップルいいなぁって思いながら書いてたら長くなってしまった。


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