28話 到着
今回は少し長めとなっております。
昼食から5時間程空を飛び続けて、太陽が沈み始めた頃、俺たちは聖国の国境にたどり着いた。
ここは帝国と聖国の分かれ目にある街だ。
確か名前は『ノルストラ』と言ったか……
ここより奥は聖国になるので、門をくぐったら帝国から脱出したと言ってもいいだろう。
ここでもリュースの存在は厄介事になる予感しかしないので、どこか人に見つからなさそうな所に着陸して、徒歩で向かった方がいいか。
《リュース。近くの森に降りてくれ。そこからは徒歩で向かう》
《了解した。》
そうして直ぐに人気のなさそうな森の中に着陸した。
「リュースがこのサイズで街に行ったら絶対に面倒なことになるから、ここからは歩いていくぞ」
「はーい」
「分かったわ」
美咲と静奈にも歩いていくことを伝えた。
それからリュースは小さくなって、また俺の頭の上に乗ってきた。
今俺たちがいる場所はノルストラからそんなに離れた場所じゃないから、歩いて5分もかからないだろう。
ということで、聖国に着いたら何をするかなどを二人と話し合いながら歩いていくと、街の入口が見えてきた。
見た感じ、門は二つあって、右側の門は高級そうな馬車とかが多いから貴族専用とか、商人専用とかそんな感じだろう。
それに比べて左側は人数が少ないが全員が徒歩で、剣を腰に吊る下げていたり、背負っていたり、大きなバックを持っていたりと、冒険者か旅人のような見た目の人が多い。
俺達は冒険者側の最後尾に並んだ。
馬車の門の方は何かしらの手続きをしているからなのか、あまり列が進まないが、こちらの列はどんどんと進んでいた。
並んでから数分で、俺たちの番がきた。
「ようこそ、ノルストラへ。身分を証明できるようなものはございますか?」
俺は冒険者ギルドのギルドカードを提示すればいいが、二人は何かあるんだろうか……
「二人とも、何かしら身分を証明出来るものって持ってるか?」
「私はないよ?」
「私も」
「そうか……。あっ、とりあえず俺の分はこれで」
俺はギルドカードを門番に見せる。
「確認しました。そちらのお二方は無いようでしたら一人銀貨1枚で、計銀貨2枚頂きますが、よろしいでしょうか?」
「あぁ、構わない」
俺は銀貨を2枚渡す。
すると次は門番が水晶のようなものを取り出し、
「こちらに手を置いてください。」
と言ってきた。
「これは?」
疑問に思ったので聞いてみると、どうやら犯罪歴を確かめるためのマジックアイテムらしい。
……もし宮殿のことが犯罪って見なされたらどうするか。
いや、確かに不法侵入はしたけど、それ以外は向こうが悪いし……
多分大丈夫だと思うんだが。
「分かった……」
俺は若干緊張しながら水晶に手を置いた。
しかし水晶は何も起こらず、「もういいですよ」と言われ、水晶から手を離した。
美咲と静奈も水晶に手を置いたが、何も反応しなかったことから、これが仕様なんだと思われる。
これでもう終わりか?と思ったが、門番は、最後に……と前置きをしながら
「あなた方が信仰する神はなんですか?」
と質問された。
「神?」
「えぇ、ここ聖国は神々へ信仰心を届けるために作られたとされております。聖女と呼ばれる方もおり、聖女様は信仰する神の声を聞くことができるとも言われております。そのためこの国の門では必ず信仰する神を調べるということが行われているのです。」
聖女ねぇ……
俺の隣にいる静奈も【聖女】とかいう異能持ってたけどそれと関係あるのかね?
いや、それよりも、俺は信仰してる神なんていないしなぁ……
適当に言ってもダメそうだし、ここは正直に答えるか
「すまない。俺たちは信仰する神がいないんだ。もしかして信仰する神がいないとこの国に入れないとかあるだろうか?」
俺がそう答えると、門番は一瞬驚いた顔をしながらも、直ぐにまた真面目な顔に戻った。
「いえ、無信仰だからといってこの国に入国出来ないということはありません。では改めまして、ようこそ!ノルストラへ!」
そうして俺たちは無事に聖国に入ることが出来たのだった。
△▽△▽△▽△
「入れたはいいが、先に二人の冒険者登録をするか……」
その後で宿を取ってって感じかな。
「そうだね。晴斗くんはギルドカードがあったからお金を払わずに入れたわけだもんね。それにあって困るものじゃないだろうし……」
「おにぃとおそろいだー!私も冒険者になる!」
俺が冒険者登録と言った瞬間に、静奈のテンションが上がり、早く早く!と俺の服を引っ張り始める。
美咲もノリノリでその横を歩いているので、二人とも冒険者に憧れでもあったのかと思ったが、どうやらそういうわけでも無さそうだ……
なんでこんなにテンションが高くなったんだろう?
そうして二人に連れられ冒険者ギルドに着いた俺たちは、空いている受付に行き、二人のギルド登録をした。
「私たち冒険者ギルドはお二人を歓迎します!」
そう言って、登録したての、Fランクと書いてあるギルドカードを渡してくれた。
「えへへ、おにぃ見て見て!」
静奈は俺の方へ、トテテテっと近寄ってきてギルドカードを見せてくる。
「良かったな」
俺はそんな静奈の頭を優しく撫でてやった。
「これがギルドカード……機械の無いこの世界でこのカードはどうやって作っているんだろう……」
静奈とは違い、美咲はギルドカードを見ながらそんなことを呟いていた。
まぁそこは魔法の力で、としか言えないが……
「さて、それじゃあ二人の冒険者登録も済んだことだし、そろそろ——」
「おうおう兄ちゃん、可愛い子を連れてるじゃねぇか」
さてこれから宿を取りに行くぞって言うところで、知らないおっさんに話しかけられた。
……なんでギルドって言うと毎回こういうテンプレが起こるんですかねぇ?
毎回起こってるとさすがに飽きるんだが……
「そこのお嬢ちゃん達よぉ、そんな弱そうなガキ放っておいて、俺と遊ばねぇか?」
「お、おにぃ!これはテンプレですよテンプレ!!」
静奈はこの状況に大興奮な様だな……。
あれ?今静奈達が誘われてんだよな?
なんでこの子はあいつを無視して俺に話しかけちゃってんの?
これは俺が絡まれるパターンじゃん……
しかも美咲はどさくさに紛れて俺の腕に抱きついてきてるし……
二人してなんなんだよ……
「おい!無視してんじゃねぇ!てめぇガキコラ!俺が37にもなって独り身だからって、見せつけてくんじゃねぇ!」
いや知らんし……
そもそもなんで俺がキレられてんだよ……
おっさんもこんなことしてるから結婚できねぇんじゃねぇか?
「いや……こんなことしてるから結婚出来ないんじゃ……」
「はぁ!?そんなこと言うんならどうすれば俺がモテるのか教えろください!」
急にどうしたまじで。
そんな事言われても、俺もモテてたわけじゃねぇし……
逆にこの歳まで彼女の一人もいたことない俺に何を教えろと……?
「モテる方法があるんなら俺が聞きてぇわ!」
「あっ、美咲さんずるい!私もくっつきたい!」
静奈は俺の腕に抱きついていた美咲に気が付いて、自分も、と反対の腕に抱きついてきた。
……いや、これは妹だから。
美咲は分からんけど、静奈は確実に妹だから。
別にモテてる訳じゃないから……
だからそんな呪殺してきそうな目で俺を睨まないでくれ。
「うぉぉお!ぜってぇ許さねぇ!!お前だけはここで殺す!」
ついにおっさんはキレて俺に殴りかかってきた。
俺が両腕を二人に抱きしめられたままだったので、避けれない。
「はぁ……全く……」
大人しく殴られてやるのも癪なので、俺は二人と一緒に【空間魔法】で、ギルドの外に転移する。
「お前ら、もう俺に抱きついたりするの禁止な……」
二人は俺のその言葉を聞いて、一瞬で腕を離した。
「おにぃ!ごめんなさい!もうしないからそれだけは……それだけは許してください……!」
「晴斗くんごめんね!ちょっとふざけただけなの!」
二人が謝ってくるが、俺はそれを無視して歩き出した。
それから少しの間、二人は謝り続けていたが、俺が許す気が無いと分かると、しょぼんとしてしまった。
美咲に至っては泣きそうになっている……
これじゃあ俺が悪いことをしたみたいじゃねぇか……
え?別に俺が悪いわけじゃないよね?
もしかしてこんなことで怒るとか心狭い?
「はぁ……二人とも……」
「「……!」」
大人気なかったかもしれないという感情と、女の子二人を泣かせそうになっているという周りの痛い視線に耐えきれなくなり、俺は二人に声をかけた。
「ふざけすぎてたことには怒ってたけど、まさかそんなに落ち込むなんて思わなかった。少し大人げなかったな……」
「ううん……困らせるようなことした私が悪いの……おにぃ……ごめんなさい。」
「私も……急に晴斗くんに抱きついたりして……困らせちゃってごめんなさい……」
こんなになるなんて思わなかった……
今更、冗談で言ったとか言い出せねぇ……
いつも何かとやらかしてくれる二人にお灸を据える意味も兼ねて言った冗談がここまで効くなんて……
ていうか俺に抱きつけなくなっただけでこんなに落ち込むとかどうなってんの?
薄々ってか普通に気づいてたけど、美咲って俺の事好きだよね?
さすがにこんだけアピールされれば気づくわ……
鈍感系主人公でもあるまいし……
「じゃあ、俺に出来ることならなんでもするから元気出してくれないか?」
「「……なんでも?」」
「あぁ、俺にできる範囲ならな」
世の鈍感系主人公達ならここで、「あれ?まずい事言ったかも?」みたいな反応をするんだろうが、俺としてはこんな美少女達に好きにされるならご褒美です!
……すいません嘘です。
これで俺二人に「じゃあ死ね」とか言われたら、一生立ち直れる気がしないから変な期待をするのは辞めておこう。
「分かった。元気出す。」
「私も」
二人とも笑顔に戻ってくれたようで良かった。
「お願いは考えておいてくれよ」
「うん!……何をお願いしようかなぁ……えへへ。」
「晴斗くんになんでもお願いできる……?あんなことやこんな事でも……?」
美咲は何やら規制のかかりそうなお願いをしてきそうだが、まぁ自分で言ったことだからな。
責任もって叶えてやりますよ。
あと、声に出すのはやめような?
こんなやり取りをしながら、街を歩き、宿を探していた。
少し歩いたあたりに丁度宿を見つけたので自分の世界にトリップしてる二人を連れて中に入る。
外見は白色の塗装がされている、綺麗な建物だったが、中もオシャレな感じに出来ている。
黒い床に、白い壁、天井にはシャンデリアの様なものまでぶら下がっている。
「いらっしゃいませ。何名様でしょう」
店の受付から男性が声をかけてきた。
「3人だ」
「3名様で。お泊まりでしょうか、お食事でしょうか」
「泊まりたい」
「一泊銀貨3枚になりますがよろしいでしょうか」
一泊で銀貨3枚か……
結構高めの宿なのかもしれないな。
「大丈夫だ。」
「かしこまりました。お部屋はどう致しましょう」
「ふたへ「「一部屋で!」」……で。」
「一部屋でございますね。お食事の方如何なさいますか?」
二部屋で頼もうとしたら横から静奈と美咲が一部屋で注文しやがった……
受付の男性もそのまま一部屋で話してるし……
まぁ、トルーニのギルドで寝た時も二人と同じ部屋だったけど何も起こらなかったし、大丈夫か?
「これから食べれるか?」
「はい。大丈夫です。お部屋の方にお持ち致しましょうか?」
そうだな。
落ち着いて飯を食いたいし、部屋まで持ってきてもらうか。
「よろしく頼む」
すると、受付の男性は、手元の何かを操作したあと、壁にかけられていた鍵を持って
「お部屋の方にご案内します。」
と、一礼して歩いていった。
俺たちはその後について行き、部屋の鍵を渡された。
「後ほどお食事をお持ちします。お部屋にはお風呂も設置されておりますので、宜しければご利用ください。それでは。」
部屋の説明をして、男性は戻っていった。
それに俺は最後聞き逃さなかったぞ。
「お風呂が設置されております」と!!!
「おにぃ!お風呂あるって!一緒に入ろ!」
「いやいや、待て妹よ。さすがにこの歳になってまで兄妹で一緒にお風呂、というのは社会的にいかがなものだろう?静奈はお兄ちゃんを社会的に殺したいのかな?」
高校生で、妹と一緒にお風呂。
静奈はお兄ちゃんをシスコンにしたいのか?
前々からスキンシップ激しいと思ってたけど、ちょっとやりすぎかなぁと。
「おにぃこそ何あってるの?この世界では兄妹で結婚しちゃいけないなんてルール無いんだよ?実際結婚してる人もいるだろうし……それに比べたら兄妹でお風呂なんてコミュニケーションの延長みたいなものじゃない?」
そうなのか……
兄妹での結婚ができる世界なのか……
……いや、だからなんだって話だけどな?
静奈のことは大切だし、大好きだが、これは家族に対する愛情であり、恋愛とかそういうのは一切ない。はず。
「いや……それでもやっぱり兄妹では……」
まてよ?俺が静奈に欲情を抱いていないというのなら、一緒にお風呂も静奈の言った通りコミュニケーションの延長なのではなかろうか?
そうだな。俺が何も感じないのなら問題はない。
……べ、別に静奈と一緒にお風呂に入りたいとか、そういう訳じゃ無いんだからね!勘違いしないでよね!
「ねぇねぇ、晴斗くん。じゃあ兄妹じゃない私となら一緒にお風呂入ってくれる?」
と、ここでさらに俺の思考を乱してくる輩が現れた。
美咲さんェ……
「美咲さんや、今から大切なことを言うからよく聞いて欲しい。」
「うん?なに?」
「今のところ俺たちはただのクラスメイトだ。いや、普通よりは仲良しかもしれないけど……。問題はそこじゃなくて、美咲はもっと自分の体を大切にするべきだ。」
そう。今のところただのクラスメイトだ。
美咲からは確かな好意を寄せられているし、それに気づかないほど俺も鈍感じゃない。
静奈とも仲良くしてくれて、こんな俺も受け入れてくれた。
美咲のことは嫌いじゃないし、むしろ結構好きだから、告白されればいい返事をしようとは思ってる。
そこまで考えてるんなら俺から告白しろよって思うかもしれない。
さすがに俺にそんな勇気はないさ……
まぁそんな訳で、告白されないうちはもっと健全に、友達としてのお付き合いをしていきたいと思ってるわけだ。
「別に大切にしてないわけじゃないよ。晴斗くんになら見られてもいいって思ってるからそう言ってるのに……」
……そんなこと言われたら一緒に入ってもいいかなぁ?なんて思っちゃうじゃんか。
ダメですからね!
「そんなに言うなら俺は一人で入るからな!」
俺はそう言って一人風呂に向かった。
ちょくちょく美咲も出番を増やして行く方向で!
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