世捨て人ミリアとの出会い
これからだ、と息巻いたところで所詮は子どもの体。
サバイバルの準備もなく、それどころか前世含めサバイバルの知識も、キャンプなんかのアウトドア系の趣味もない私はすぐに壁にぶつかった。
水だけは最初の水を集める魔法を使い、試しに口をつけたところ驚くほど澄んだ綺麗な味がした。
そうやって、喉が渇いては水を出し、疲れては木に寄りかかりと歩き続けた。
森の奥に行っているのか、外に向かっているかもわからず、分かりやすく極限状態だった私はそれでも歩みを止めず、遂には疲労と空腹で倒れた。
「ここまでか」
そう呟くと、今世で何度目か分からないが、私は意識を手放した。
次に目を開くとそこは見知らぬ部屋だった。
石造りだった屋敷とは違う、木で作られた部屋。
前世、家族で泊まったログハウスを思い出す。
混乱したベッドの上にいる私は、ひとまずベッドを降りる。
これが夢でないなら、誰かが助けてくれたと言う事だし、ならば友好的な住人がいると信じたい。
とはいえ、それが信じられない。
行き倒れたところに誰かが通りがかる。
その時点で奇跡的だが、それでも狩人などの職業もあるのだから否定はできない。
なら何が信じられないのか。
繰り返すが私は醜い。
それこそ呪いかと思うレベルで嫌われる。
そんな私が行き倒れ誰かに助けられるというのは俄かに信じがたい。
となると、何か理由というか助けるメリットがあるのだろうか。
それなら分かりやすくていいのだが。
無償の善意を信じられない私は、そんなふうに考えながら気配のする方に行く。
この家はそこまで大きくないようで、迷わなくて済みそうだ。
「おや、起きたのかい」
かくしてそこには、ちょうど器とスプーンをテーブルに置く美女の姿があった。
見た目は二十代前半程度だ。
腰まで伸びた銀色の髪。
すらりとした肢体。
着ているものは簡素な緑の布着だが、どこか気品を感じる佇まい。
耳に届くのはいくらでも聞いていたくなるような美しい声だった。
私の今世の両親、いや元両親も美しい夫婦だったが、彼女は比べ物にならない。
おそらく彼女のそばに立てば、地球のミスユニバースとかトップアイドルでさえ霞んでしまうだろう。
言葉遣いと見た目の違和感より場違い感の方がすごい。
それこそ異世界転移の小説なら、色々説明してくれる女神様あたりのポジションが合いそうだ。
そんな彼女がこちらを向いて言葉を繋げる。
「立って歩けるなら、大丈夫そうだね。今スープが出来たところだ。食べちまいな。」
その声を聞き、ハッとして顔を覆う。
「?どうしたんだい?」
「その、私の顔を見ると、みんな嫌がるので」
「ふーん。気持ちは分からんでもないけど、気にしなくて良い。不細工ぐらいは何人も見てきたさ」
「いえ、私のは不細工とかいう話しでもなくて……」
「なんだい。吐くやつでもいたかい」
「……はい」
そこで彼女は少し口をつぐみ、その後話し出す。
「そいつは大変だったね。けど、もう一度言うよ。気にしなくて良い。そもそも、あんたの顔は拾ってくるときに見ている。確かにあんたは不細工だ。でも、それだけさ。」
「それだ……け?」
「そう、それだけだ。今まであんたの周りにいたのがどんな奴らか知らないが、こちとら100から先は数えてない世捨てババアのミリアだ。醜いものなんざ今まで何度も見てきたさ」
決して優しい言葉ではなかったが、彼女の慰めようとする暖かい気持ちは理解できた。
だからこそ、私は衝撃に思考が止まってしまった。
「さあ座って、さっさとスープを飲んじまいな。せっかく作った料理を無駄にするなんて許しゃしないよ」
「は、はいっ!」
言われるままに椅子に座り、目の前のスープを啜る。
おそらくは塩といくつかの野菜を煮込んだだけの質素なスープ。
しかしそのスープと先ほどの言葉の暖かさに、涙が溢れる。
「ふん、感動するほど美味かったかい」
微妙に検討外れの言葉に、しかし反論はしない。
一度流れた涙は止まる事なく、部屋には私が泣きながらスープを啜る音だけが響いていた。
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