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閑話。師弟の会話、ダンジョンについて

ある日、エルバギウス大森林にて。


「ダンジョン、ですか?」

「うむ。そうじゃ、ルーク。魔道具を扱うものとして、ダンジョンについては知っておかなければいかん。と、いう事で今日はガインの街に行く前に少しダンジョンについて教えておこうと思う。」

「分かりました。ミリア師匠、よろしくお願いします。」

「では、どこから話そうかの。まあ、基本からじゃ。この大陸の南にはゴラン大草原という砂漠があってな。」

「大草原なのに砂漠なのですか?」

「うむ。詳しい歴史はまた話すがの。その昔、ダンジョンアントという蟻の魔物が異常発生を起こした事で、大草原は砂漠となった。そして名前から分かる通り、ダンジョンアントの巣、こそが今日話をするダンジョンじゃ。」

「ほお。ダンジョンが蟻の巣ですか。と、いう事はダンジョンアントというのも、決して小さくはないのですよね?」

「その通り。物にもよるが、だいたい猫ぐらいの大きさじゃな。大きいものは、人間よりも遥かに巨体にもなるがの。」

「それはまた、随分な大きさで。しかし、その蟻の巣がなぜ魔道具に関係するのですか?」

「まあ、そう焦るな。順を追って説明するとしよう。まずもう一度いうと、ダンジョンアントは魔物でな。普通の蟻のように巨大な巣を作る習性がある。しかも今行ったように蟻とは比べ物にならない大きさじゃからな。巣もまた、広大にして深く、人間や動物がその中を悠々と歩けるほどじゃ。」

「それは、また、俄かには信じ難いですね。」

「まあ、こればかりは実際に見てみなければ、実感はわかないじゃろうな。儂も始めてダンジョンに潜った時には驚いたものじゃよ。」

「ほお。ミリア師匠はダンジョンに行かれた事があるのですか?」

「うむ。カイゼル達と一緒にな。」

「え!?カイゼル師匠達とですか?」

「うむ。行っとらんかったか?儂も昔からここに住んどるが、一時期旅もしていてな。その時にユニやテオの両親、カイゼルとマリー、それと他2人の仲間に知り合っての。儂も含めて5人で見聞を広める旅をしていたのじゃよ。念のため行っておくと、あいつらにも儂はラトで通しておるから、街では今まで通りラトと呼ぶように。」

「分かりました。いや、長い付き合いとは伺って今したが、まさかそんな縁だったとは。驚きました。」

「まあ、儂も始めはこんなに長い付き合いになるとは思ってなかったしの。それにまあ、あいつらにユニとテオが産まれて、お前さんが儂のところに来てからは以前よりも付き合いも増えたし。人の縁というものは分からんものじゃ。っと。話が随分と話が逸れたが、どこまで話したんじゃったか。」

「ええと。ダンジョンが大きいというところですね。」

「おお。そうじゃった、そうじゃった。そうダンジョンは巨大じゃ。それこそ蟻の巣というよりも人間が掘ったと行った方が納得出来るほど。いや、それでも巨大に感じるほどに大きい穴が、複雑な道を作っておる。更にダンジョンが不思議なのは、中に森があり、そこには多様な植物が生え、それを食べる動物達が、独自の生態系を作っておるのじゃ。」

「蟻の巣の中に森ですか?」

「うむ。不思議じゃが、理由はわかっておる。ダンジョンアント達がタネを持ち込み、森を作りかつて大草原に生きていた動物が森の恵みを求めて来たのじゃよ。」

「なぜダンジョンアント達はそんな事を。いえ、そもそも蟻にそんな事が出来るのですか?」

「うむ。蟻とはいえ魔物。魔物というのは時に、我々が驚くほどの技術を持つからな。そして目的は、その動物達を蟻が食べるのじゃよ。しかし食べつくす事はなく、結果的にダンジョンアントを頂点とした生態系がダンジョン内に出来上がったのじゃ。」

「それはまた凄い話ですね。とはいえ、確かに地球でもキノコを育てる蟻がいると聞いた覚えがありますし、納得は出来ますね。」

「ほう。そっちの世界の動物も面白そうだね。それもまた聞きたいが、今日はダンジョンの話をしよう。ここからが、私たち魔法使いにとって大切な事だからの。」

「最初に仰った、魔道具の関係ですね。」

「そうじゃ。脈絡のない話に聞こえるかも知れんが、ダンジョンの中にはオリジナルとも呼ばれる魔道具が見つかる事があってな。というよりは、ダンジョンで魔道具というものが発見され、それを真似して作っているのが、一般に普及している魔道具じゃ。」

「そうだったのですか。つまりダンジョンがなければ、私が頂いた仮面をはじめとした魔道具は作られなかったと。」

「そうじゃ。そしてダンジョン産の魔道具の方が希少でかつ効果が高い。基本的には貴族、それも高位のもの達ぐらいにしか縁はないの。魔道具を作るものにとって、ダンジョン産と同程度の質の物を作るのは夢なのじゃよ。まあ、儂の知る限りしばらくは永遠の夢になりそうじゃがな。」

「そんなに違うのですか?」

「うむ。有名な所では収納袋じゃな。これは特に複製に成功した魔道具じゃが、ダンジョン産のものが、巨大な倉庫程度の容積なのに比べ、魔法使いによって作られたものはせいぜいこの部屋と同程度の容積じゃ。無論それでも便利じゃし、作るにも大量の貴重な素材と才能に溢れた職人が何年も修行した末の技術を必要とするがの。ダンジョン産の収納袋を見つけることが出来れば、それだけでひと財産じゃよ。もし売れば、三代くらいは遊んで暮らせるな。」

「それはまた凄い話ですね。しかし、なぜそんな魔道具というものが、蟻の巣にあるのでしょうか?」

「うむ。それこそダンジョンの最大の謎なのじゃよ。ただ、なんの目的かはほぼ分かっておる。」

「目的とは。確かに、一体なんのために?」

「儂らをダンジョンに招き入れるための餌じゃよ。」

「餌、ですか?」

「そうじゃ。ダンジョンアントは魔物。ルークも知っての通り、魔物は魔力の高い人間を狙うものじゃ。魔道具につられダンジョンに入ってきた、人間はダンジョンアントにとっては正に餌なのじゃよ。とはいえ、人間からしても便利な魔道具は必要じゃし、なによりある程度ダンジョンアントを普段から間引いておかねば、また異常発生が起きかねん。そのため、危険と分かっていても人間達はダンジョンに潜らないわけには行かないのじゃ。」

「なるほど。それにしても、本当になんでそんな魔道具という不思議な道具がダンジョンにあるのでしょうか?」

「それについては、実は1つ仮説がある。とはいえ、儂が考えただけじゃがな。」

「仮説、ですか?どんな仮説ですか?」

「お前さんじゃよ。」

「私、ですか?」

「うむ。本当にこれは何も実証していない仮説じゃがの。お前さんの話を聞くに、この世界の他に、お前さんのいた地球という世界もあるのじゃろ?」

「しかし、地球には魔法というものは無かったと思いますが。」

「まあ、焦るな。この世界があり、お前さんの生きてきた世界がある。ならそれ以外にも世界があっても不思議ではあるまい。それこそ、ここよりも魔法について発展し、ダンジョン産の魔道具を作り出す技術のある世界がな。そして、そういった世界から、ダンジョンを通してこの世界に来ているのではないか。儂はそう思うのじゃよ。じゃが、繰り返すがこれは仮説じゃし、確かめようもない。まあ、蟻が自分達で作っているとかいう仮説よりは信憑性もありそうじゃがの。」

「それは流石にあり得なさそうですが。」

「まあ、こんな話が出るくらい謎なんじゃよ。っと、なんだか長く喋っちまったね。とりあえずこの話はこれっくらいにして、そろそろ街に行くとしようかの。」

「はい。ミリア師匠、今日もありがとうございました。」

「よいよい。お前さんも、いつかダンジョンに行くことがあれば、少し潜ってみなさい。良い経験になるじゃろう。」


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