3-15 北区商工ギルド その3
風呂上がりのマリアは少し元気がなかった。疑問に思ったが、テラスやビビにあてられたか?
「ショックなだけよ。」
「ドンマイ。」
「ムカッつく!」
怒ってしまったが、元気がないよりマシだ。のしのし歩きながら、ギルドに戻る。マリアとアーノさんはギルドで寝泊まりしているとか。まぁ、アーノさんは客間で寝ているし、朝に迎えに来るだろう。
そして、これだ。
マリアが帰った後は、そのまま就寝にした。ベットはとても快適で、テラスもビビもすぐに寝てしまった。まぁ、俺もだけど。
目覚ましは、マリアの挨拶だった。
「おはよー!入るわよ。」
寝室のドアを開ける。
寝ぼけながら上体を起こす。酒の残りか?目覚めが遅い。
「おはよ・・・。」
欠伸をし、背伸びする。マリアは固まっているが、何故だ?
「ごめん!下で待ってるわ!」
真っ赤になったマリアは急いでドアを閉める。何だというのだろう。
テラスとビビの裸を見て勘違いをしたのだろう。ビビがまだ寝ているのも珍しいが、裸なのも珍しい。二人にキスをして起こす。
「おはよう。」
「おはよ~。」
「おはよう、ございます。」
服を着た後は、専用の櫛で髪を透き、綺麗に仕上げる。うん、二人とも綺麗だ。
一階に降りると、マリアが朝ご飯の準備をしていた。
「おはよう。」
「うん・・・、おはよう。」
顔真っ赤!そんなにか?
「凄い恥ずかしいわ!」
だが、料理の手は休めない。
「その内慣れるさ。」
「いつも一緒に寝てるの?裸で?」
「風呂も一緒だぞ。」
「信じらんない!」
やはり、料理の手は休めない。
「家族だし、夫婦でもあるし、別におかしくないだろ?」
「そうだけど!そうだけど!」
料理が完成したので運び出す。俺やテラスとビビも手伝う。アーノさんを起こし、朝ごはんをいただぐ。では、
「「「いただきます。」」」
「いただくよ。」
「はいどうぞ。いただきます。」
パンとシチュー。ビビにはステーキとシチューだった。3人前はあるが、まだ足りないか?ビビもゆっくりと味わって食べている。足りないな。
「今日はどうするんだい?」
アーノさんが今日の予定を聞いてくる。
「今日は作成物を決めて、材料集めをするわ。」
マリアは方針を決めていた。それで良いよと頷き、テラスやビビにも確認する。
「うん。」
「はい、わかりました。」
「ギルドの仕事はちゃんとやるから、マリア達はマリア達の仕事をちゃんとやりな。」
「ありがとう、おばあちゃん。頑張るね。」
「任せたよ!」
俺の背中を強く叩くアーノさん。痛くはないが、期待が強い。
「はい、頑張ります。」
気合いを入れよう。
★
工房に集合する。
作戦会議の概要。
1、中央区からの顧客を作る。
2、4つの市民区と中央区の溝を小さくする。
が、メインとなる。
その為に必要な物
1、価値のある商品。
が説明された。
よくよく考えたが、それだけでは弱いと思う。
「価値のある商品に興味を持たせる、は解る。だが、どんな価値を着けるんだ?」
要はそこだ。価値にも様々ある。金銭的価値、稀少価値、歴史的価値等、考えても沢山ある。
「私はね、稀少価値に製作者価値にしようと思う。」
マリアの意見だ。
「ソーイチさんの仕事を価値化する。質が高く、数は少ない。貴族に流行らせ、探させるように仕向けるの。」
「ほう?」
「所詮、貴族なんて自慢話がしたいだけたからね。そこにつけこもうと思うのよ。」
「上手くいくか?」
「だから、協力しあうのでしょ。」
考えればきりがないな。1つずつ決めていくか。
「ソーイチさんは何が作れるの?そこから決めていきましょう。」
「木工加工、金属加工、皮加工、布加工、だな。道具と材料さえあれば何でもいけるが?」
「それ、凄くない?力のせい?」
「いや、前世界からだが。」
「そう、凄いわね。」
師匠や上司、友人どものお陰だ。出来は兄職人には負けるが、確りと知識はある。手で代替の物は作れるようになった。
「今までの最高級の仕事はある?見せてもらいたいけど?」
「構わないよ。」
無限保管から、俺の黒石ナイフ、テラスとビビ専用の櫛、黒糖も出したれ。ナイフと櫛は丹精込めた仕事だ。まだまだ本気ではないが、現段階での傑作ではある。黒糖は、価値を知りたいからだ。
ナイフの評価
「こんな密度の濃い、黒磁石を見るの初めてだわ。見た目はアレだけど、なにこれ、凄い。」
「そうなのか?」
まぁ、自信あるからな。値も気になるが。
「ん~、金貨1枚を最低にして、オークションしたら、10枚は越えるわね。」
いきなり金貨10枚か。
櫛の評価
「あのさ、この石、まさか・・・。」
「金剛石。」
顎はずしてるマリア。なんかいちいちリアクションしてくれるから、楽しくなる。
「櫛の仕事は銀貨10枚でも安いけど、櫛だからそこまで高くは出来ないわ。だけど、金剛石だけで金貨10枚以上、下手したら100枚にはなるわ。」
あらあら、やっぱり金剛石はヤバイ代物だったな。
「これって売り物?」
「いや、これはテラスとビビ専用。マリア以外は誰にも見せてないよ。」
「そうね、その方がいいわ。」
なんかマリアの顔色が蒼白になっているのは気のせいか?真っ赤ならわかるけど。
答えは黒糖だった。
「サトウキビ、見つけたの?」
「類似物だな。サトウエダと仮名をつけた。クコ村で栽培してるよ。」
「どういう事かわかってる?」
なんか怒ってない?
「凄い物だとは解る。貴族の力を借りて、村の存続させる為の武器だよ。」
言いたい事があるようだが、脱力したように肩を落とす。
「あんたがチート野郎なのがよくわかったわ。」
ですよね。俺もそう思う。
何かビビが怒っているみたいなので、頭を撫でて宥める。
「ソーイチ様をあんた呼ばわりするなんて。」
「あれは親友の証しみたいなものだから、怒らなくて良いよ。」
「ですが・・・。」
ナデナデ、ナデナデ。
「はい、わかりました。」
機嫌が戻ったようだ。尻尾でわかる。
「私には?」
テラスも要求してきた。
「もちろん。」
ナデナデ、ナデナデ。
「エヘヘ。」
「ちょっと、イチャイチャは他所でやってくれない?」
マリアは不貞腐れていた。
「ん、マリアにもしようか?」
「止めてよね!話の続きをするわよ!」
テーブルをバンバン叩きながら、再開を促す。
黒糖流通は後で話をしよう。まぁ、黒糖でもいけそうな気はするが、永続価値にはならないだろうな。流通させるし。
「で、何を作る?」
「貴族にうけるもの。豪華な物ね。」
「装飾品?」
「それも1つ。雑貨でも櫛はありよ。女性に人気が出れば、男が動くもの。」
わかってらっしゃる。
「見栄を張れるもの。剣とか?」
「それは駄目。武器はおばあちゃんが許可しない。」
戦争経験者だからだろう。武器に恐怖感があるかもしれない。
「やるのは北区だけか?」
「いえ、他も連携してやるわよ。だから種類と数が必要なの。」
「地区毎に違う特色とかはあるのか?」
「多少はね。でも、売り物は大差ないからそこは考えなくてもいいわ。」
ふむ、一応見てみたいな。
「取り敢えず、櫛は決定か?デザインは委せるが、彩飾はどうする?」
「何かアイデアある?」
「漆あるか?」
「ないわね。他の樹液はあるけど。」
ないか。漆塗りならシックで良いと思ったけど。
「装飾品はイヤリング?ネックレス?」
「材料の仕入れ次第にしましょう。良い宝石が欲しいわ。」
「金剛石は?」
「あるの?」
「いや、創る。」
「ゴメン、もう一回言って。」
「チートで創ろうか?」
沈黙
「量産してないわよね?」
「してない、大丈夫。」
そんなに睨まないで下さい。
「1個だけ作りましょう。なるべく派手にするわ。大きさは任せるけど、常識的な大きさにしてよね。」
「わかった。」
計画を煮詰め、行動する。
まずは櫛からだ。デザインの為1日待つ事になったので、後は自由時間になった。あと、マリアから前金なのか、金袋を貰う。中身は銀貨30枚程入っていそうだ?
「前金よ。もしかしたら必要になるかもしれないでしょ?」
「賄賂?」
「ちーがーいーまーすー!」
「ありがたくいただきます。」
「もぅ!」
資金も手に入れたし、少し散策するか。
「散歩しようか?」
「うん!行く。」
「はい、わかりました。」
マリアはギルドへ、俺達は散策に出掛けた。




