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9/12

結局顔なのか

 もう1週間前になるが、12月16日に衆議院選挙があった。俺には投票権がなく、ただ見守るしかできなかったがとんでもない圧勝に終わった。そりゃあ勝てばそれに越したことはないのだが、本当にそれで良いのかというレベルの差がついていたのでさすがにたじろぐ。いや、本当にそれで良かったのか。


 この結果についてテレビの評論家は「小選挙区制の欠点」みたいな言い方をしていた。つまり、小選挙区とは決められた選挙区からたった一人しか選出されないという制度なので、人々の心が特定の方向に傾けばとんでもなく極端な結果になりやすいという事らしい。その代わり風向きが変わると逆に前回大負けした党から大量に当選して、政権交代が起こりやすくなるらしい。それで政治の停滞を防ぎ、なあなあの国会運営ではなくやった事をちゃんと評価されるようになるから政治家が頑張るかもってのがメリットらしい。


 そもそもそんなに政権交代って必要なんだろうか。「今の総理大臣は?」って言って毎年変わられると覚えるのも面倒になるし、下手に文字の画数が多い人が首相になってくれるとテストでさっと書けなくなるからそこそこで収まってほしいという気持ちは正直あるのだが、まあそれが民意と言うのなら仕方ない。


 ただ、俺が言うのも何だが民意なんて信頼するもんじゃないだろうとは思う。むしろうまく民意をクリエイトするぐらいでないと、それこそ一年単位でポイポイと首が挿げ替えられてしまう。ベイスターズですら二年に一回だと言うのに。


 さて、最近図書室に新しい本が来た。その中に歴代の総理大臣について色々書かれた本もあったので、俺は早速それを借りて読んだ。はじめが就任する前に出た本なのでわが弟の業績については触れられていないのは残念だが、まあこの本を書いた人もまさかこの次に小学生が総理大臣に就任するとは思ってもいなかっただろうな。


 まあ大昔、それこそ戦争をしていた頃の話なんて知るはずもないのでざっくりと21世紀になってからの人だけを見て、個人的にはどうとかそういう話をしてみたい。


 21世紀最初の総理大臣はとんでもない人物だった。業績についてはともかく、何より顔が悪い。実際何をやったかより何を言ったかばかりが注目されていた。就任時からすでに失言癖がどうみたいな話は出ていたようだが、首相に就任してからもサービス精神全開だったようで、ニュースで「波紋を呼びそうです」と締められるような発言を繰り返した。末期は消費税のような支持率だったと言われる。


 もう何をやっても批判になる有様で、英語力がないとかそういう系のデマを広げられたりした。しかしそれも「この人ならそういう間抜けな失態をやらかしてもおかしくない」と思わせる顔と頭が原因だ。色々波乱もあったが、最初から自分は長期政権にはならないと腹を決めていた部分もあったようだ。引き際が立派と言うより最初からならなければそれが一番幸せだったのかも知れない。


 次の総理大臣は長期政権を築き上げていた。やった事は賛否両論と言う。賛がある時点で優秀だ。前任者とか誰もほめてはくれないんだし。その前任者が何をやってもその見ていて不愉快さがこみ上げてくる馬鹿面のせいで叩かれたが、この首相はそのイメージとまったく逆の自分たちに近いイメージとか「この人なら何かやってくれそう」というイメージを作るのがうまかった。顔も結構かっこいいというか、独特のオーラを放っているのが良い。


 前任首相はよく失言で叩かれたがこの首相も大概な発言をしている。しかし前任者と違って政権のダメージには大してならなかった。野党第一党の不甲斐なさと言うか、年金未納問題で閣僚辞任というダメージを与えられたかに見えたが実は追求しているほうも未納だったとか、意味不明なガセメールを信じてしまって一転攻勢を受けるとか、馬鹿みたいな出来事が多かったようだ。


 まあやった事の是非はあるが、もう一度言うがある程度長い間それなりに安定した政権を築き上げたというそれだけでもう十分に評価の対象だ。そして実際人気も高かった。その時その時の流れを作って、それに賛成か反対かの二者択一を迫るようなやり口で、それまでの胡散臭い政治臭を排除したのがうまかった。でも実際は政治って白か黒かみたいなそんな単純なものではないわけで、うまく騙すことが出来た実力者だ。


 そりゃあ今のままでは何となくいけないだろうと思っているのだから。その中で「改革するか、今のままでいいのか」と言われると誰だって「今のままでいいはずがないから改革してくれ」と願う。でもその改革の中身は特に気にしていない、みたいな。別にそれでもいいと思っている。その改革とやらが日本の、日本に住む人の利益に繋がるなら。そういう事の繰り返して人気を保ったまま首相の座を降りた。これもやっぱり立派な事だ。


 その人気を引き継いで就任した次の総理大臣だが、まだ若かったのが災いしたのかいまいちやりたい事をうまくやれなかったのではないかと思っている。お坊ちゃまみたいな顔の通りに最後は投げ出すような形で首相の座から降りたが、今頃は「今ならもっとうまくやれたのに」とか後悔してるんじゃないか。いや、実際は体調不良だったのでお疲れ様なんだろうが、やっぱり恵まれた支持率を自分の味方につけ切れなかったもったいなさみたいなのを感じる人だった。


 その次の首相は猿みたいな顔をしていて冷笑した顔や無表情なイメージが強かったが、辞任会見で切れた。元々あんまり人気のある人ではなかったが、これで人々に素顔が見えたと言うのか、正直ちょっと人気が高くなったようだ。まあそりゃあ素顔は出しすぎると馬鹿扱いされるが出さなすぎると冷血漢の人でなしみたいな扱いになるから、その辺のバランスは難しい。


 これで二年連続で総理大臣がぴったり一年ペースで辞任となった。「いい加減にしろや」みたいな空気の中で就任したその次の総理大臣は不幸だった。もうマスコミの叩きモードが凄まじく、風が吹くのも首相が悪いからみたいな流れになっていた。あれではどうあがいても無駄、もはや首相個人がどうという話ではなく、党の命運が尽きた感じだった。そして選挙では案の定大負けして、政権交代となる。


 ついでにこの辺から俺がその頃何をしていたかとかの記憶がはっきりしてくるので個人的な感想を言うと、漢字がどうとかそんなのばっかりだった印象しかない。実際何をやったのかよく分からないまま馬鹿だ無能だという話だけが立って、そのまま最後まで行った感じだ。顔は、口元がちょっと下品だった記憶がある。


 さて、2009年の衆議院選挙選挙の結果、それまで野党だった党が初めて政権を握った。しかしそれまで散々詰めの甘さを露呈してきた党が与党になったからと言ってましな政治が出来るはずがないのは自明の事だ。なぜか期待する人が多かったが、お父さんなんかは「あいつらは信頼できない」「人気なのはどうせ今だけですぐにボロが出るよ」みたいな言い方をしていた。実際そうだった。


 あれは宇宙人だったらしい。実際人間離れした顔をしていたし。だから日本人の感覚からして「それはないだろう」という手をいっぱい打って、大体失敗した。基本的に無責任な人間で、それまでの与党が嫌いという一点でこんなのが総理大臣になれるのだから、まさに小選挙区制の欠点を体現したと言えるだろう。


 その次の総理大臣は任期中に例の東日本大震災があったりした。あの地震はこっちでは感じる事はなかった。でも、ニュースで見た、まさに街が人が濁流に飲み込まれていく映像は今でも思い出すだけで震えてくる。あれを見ただけでももう忘れられないトラウマになってしまったんだ。実際に被害にあったらと思うと、涙を流したこともある。


 あれは天災だった。しかし人災もあった。例えば原子力発電所の問題だ。未だに「普通にやれば大丈夫」とか言ってるが人間が人間である以上、普通にやる事はできない。くだらないミスをしてしまうのは人間の性だ。全部オートメーション化するにしても、そのマシンを設計するのは人間だから。完璧なものを作れるのは神様だけと言うが、肝心の神様は自称を除くとこの世に現れた試しはないし、つまりこの世に完璧など存在しないのだ。


 それに、もしも明日にでも核戦争が起こって人間が滅びたとしよう。それでも地球は回るし宇宙は拡大し続ける。人間のやることなど、大自然の力に比べると微々たる物だ。でもその大自然の中でしか人間は生きていけないのだから、偉そうにせず無理をせず、自らの手で滅びない程度の便利さを享受しつつ生きるのがきっと一番正しい。


 まあ、この未曾有の大災害に対して首相個人がやれる事なんてたかが知れているのだから、出来る事はやったと思うけどそれで足りることは絶対にない。そういう意味ではかわいそうだとは思っている。今回の選挙でも晒し者みたいになっていたし。ああいう姿を見せられると悪人でも同情心が起こってしまうものだが、選挙では負けたはずが比例代表のほうでゾンビの如く復活してきた。しかしすでにやれる事は何もないのではないか。顔も若い頃よりしおれて、疲れてそうだったし。


 さて、次の総理大臣は、前の与党の最後の首相と同じような状態に見えた。つまり、個人としてどれだけ頑張ったところで逆風を受け止める事は出来ないという事で、国民の政治不信ここに極まるといった話だ。そして今に至るわけだが、まとめると結局政策と言ってもその人が何をやってその結果どうなったなどそう簡単に分かるものではない。信じるしかないから真面目にやれというのが政治家に言えるせいぜいだ。


 こんなので今年も消えていく。クリスマスのケーキは甘かったが、次の週にはキリスト教徒から神道の信者となるし、場合によっては仏教徒にもなる。音楽番組やお笑い番組では今年限りで消える人たちが最後の在庫一層キャンペーンを張り、NHKでは来年の大河ドラマの宣伝をマシンガンのように流す、愉快な年末年始をまた繰り返す。暖かさが恋しくもなるが、寒さはむしろこれからだ。そう言えば、今日は俺が起きる前に雪が降ったらしい。

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