特別訓練-弐
「勝利条件は、一発でも攻撃を当てること」
赤星と大森を相手に、生徒たちの生存をかけた特別訓練が幕を開ける!
「作戦とかどうする?」
優香の問いかけに、零爾と鮫島がほぼ同時に答えた。
「「正面突破!」」
二人は力強くグータッチを交わす。
「そんなんで勝てるわけねえだろ……」
朔哉が呆れたようにため息をついた。
その横で、黒瀬が鮫島の耳元に顔を寄せ、何かを囁く。
「……二手に別れようってさ」
鮫島が黒瀬の言葉を伝えると、道原綴が腕を組んだ。
「刀持ちの大森さんに武器持ちをぶつけよか。となると、零爾、朔哉、優香ちゃんは赤星先生。俺と木陰ちゃんと先輩二人は大森さんやな」
「おっけー! じゃあ俺は赤星先生だな!」
零爾が勢いよく手を挙げる。
「俺の能力を主体に立ち回ろう。俺がサポートするから、お前はひたすら殴れ。伏見は後方で援護だ」
「了解!」
優香も力強く頷く。
一方、大森大地を相手にするチームでは、木陰が申し訳なさそうに口を開いた。
「申し訳ありませんが、わたくしの能力は今回の訓練では使用できませんわね」
「まあ、そうなるわな。ほな、鮫島先輩を軸に考えよか」
綴が納得したように頷く。
「正面突破なら任せとけ!」
「もうあんたはそれでええわ……」
綴が額を押さえると、再び黒瀬が鮫島に耳打ちした。
「……俺を盾にしつつ、目森が攻撃。道原と三雲で後方支援、だとさ」
「鮫島先輩に頼りすぎてる気もするけど……まあ、今はそれが最善やろな」
「かしこまりましたわ」
木陰が上品に微笑む。
「シャアッ! 行くぞお前ら!」
鮫島が自身の身体ほどもある大剣を担ぎ上げた。
こうして二つのチームは、それぞれの標的を探して森の中へと進んでいった。
⸻
最初に静寂を破ったのは、大森だった。
ズバッ!
木々の隙間から閃光のごとく飛び出した大森の日本刀。
それを迎撃したのは、鮫島の分厚い大剣だった。
ガキィィン!
重厚な金属音が響き渡る。ガードした瞬間の隙を見逃さず、鮫島が豪快な蹴りを叩き込むが、大森は空中コマのように体をひねって回避し、軽やかに距離を取った。
「へぇ、やるね君」
「やるな、あんた!」
鮫島は一切ためらわず、地面を蹴って突っ込んでいく。
「正面突破か。それにしても君、よくそんなもの振り回せるね」
大森は迫り来る巨大な剣を見据えながら、感心したように呟いた。
「あいにく、これが取り柄なんでね!」
鮫島が大剣を振り下ろす。
大森は日本刀を構え、真正面からその一撃を受け止めた。
ガキィンッ!!
金属音が森に響き渡る。
大森の足元が沈み込んだ。
「……っ!」
次の瞬間、鮫島が大剣を押し込む。
大森の身体が、ガードごと後方へと吹き飛ばされた。
「なんてパワーだ……!」
体勢を立て直した大森は、すぐさま周囲に視線を走らせる。
その間に、木陰が死角から距離を詰めていた。
「失礼いたしますわ」
鋭い踏み込みとともに、スタイレットが大森の背中へと迫る。
しかし大森は振り向きもせず、刃を巧みに使って攻撃を受け流した。
「そういう作戦ね。鮫島君に注意を引きつけてもらって、その隙に攻撃するわけか」
大森は刀を構え直す。
「でも、君の負担が大きすぎるんじゃないかな?」
「うっせえ!」
鮫島が再び突進する。
「また正面からか!」
大森は鮫島の大剣をかわし、木陰の追撃も刀で弾く。
「また受け流された! なんちゅう技術しとんねん!」
綴が思わず声を上げた。
鮫島の攻撃力は圧倒的だ。木陰の攻撃も決して遅くはない。それなのに、大森は二人の攻撃を巧みにいなしていた。
(でも待てよ……?)
綴が大森の動きを観察する。
そのとき、黒瀬が綴のそばに寄り、耳元で何かを囁いた。
「……了解!」
綴は小さく頷いた。
「残念だが、スピードが足りてないね」
大森が告げる。
鮫島は答える代わりに、再び距離を詰めた。
「またそれかい? そろそろわかってるんじゃないか? 正面突破は無理だって」
大森が刀を構える。
鮫島の大剣が、袈裟懸けに振り下ろされた。
大森は冷静に軌道を見極め、横へと身体をずらす。
(ここが通るな……)
大剣を振り切った鮫島。その隙を狙い、大森が反撃に出ようとした。
その刹那。
「うおおおおお!!」
鮫島が吠えた。
振り下ろされたはずの大剣が、勢いを殺すことなく返ってくる。
袈裟懸けからの返り燕返し。
「何!?」
大森は咄嗟に身を捻った。
刃が身体を掠める。
直撃こそ免れたものの、無理な体勢で回避したせいで、大森の動きが一瞬止まった。
その懐に、綴が飛び込んでいた。
「ここやああ!!」
ドスッ!
綴の拳が、大森の脇腹にめり込んだ。
「……っ!」
確かな手応え。
綴は拳を引き、満面の笑みで叫んだ。
「しゃああ!! 俺らの勝ちやあ!」
「よくやった! 綴!」
鮫島が豪快に笑う。
「やりましたわね、道原さん」
木陰も嬉しそうに微笑んだ。
黒瀬は無言で親指を立てた。
大森は脇腹を押さえながら、ふっと笑った。
「一発食らったから、私の負けだね」
こうして、学生たちは見事に勝利条件を達成した。
一方、零爾たちも赤星輝聖との戦闘を開始していた。
(第11話・完)




