3 どうしてそうなるのか
志井さんには何が起こっているのでしょう。
精神科へ行くように勧められた志井さんはすごく驚いていました。
きっと、志井さんは「荷下ろしうつ」になったのではないかと思います。まず、コミケ前の状況から確認して行きましょう。
仕事の状況はどうだったか。トラブルで忙しく、睡眠不足の状態でした。
休暇に入ってからは、原稿作業で眠れない日々が続いています。睡眠のリズムは完全に狂ってしまいました。
コピー誌が出来上がってからも、休むことなくコミケに出陣しました。
ずっと睡眠不足の状態が続いてたものと思われます。
エネルギーを回復させる唯一の手段が睡眠です。
睡眠がとれていない、エネルギーが回復しない=疲れが取れないという事です。
コミケで頑張るという精神的な柱も、コミケが終了したことにより支えるものが無くなり、志井さんは一気に落ち込んでしまったのです。
もう、コミケ前には、志井さんのエネルギーはほぼ無くなってしまっていたのだと思います。
エネルギーの無い志井さんはなぜ動けたのでしょうか。志井さんを動かしていたもの、それはコミケへの情熱です。
その情熱で、エネルギーを絞り出して動いていたのです。
しかしコミケが終了したことで、「肩の荷が下りた」のです。
情熱が落ち着くと同時にエネルギーも底をついてしまいました。
そこで、体は通常の状態に戻ります。通常とはいえ、エネルギーのまったく無い状態です。ガソリンが無いエンジンという事ですので、動くことが出来ません。
エネルギーが無いと、原始人のころから生き抜いてきた本能さんが、生き残るための知恵を出さねばと起動します。
この本能さんは、自分で自覚することはできません。
例えば、急に誰かの投げたボールが目の前に向かってきたとします。多分、皆さんは避けると思います。避ける行動をとりますが、考えて動いた訳ではないはずです。
ボールが当たってしまうと生き残れない可能性がありますから、避けなかった人は我々のご先祖様ではありません。
これが本能だと思ってください。生き残るために無意識で動くのです。自覚することはできません。
さて、この原始人のころから生き残る知恵を持っている本能さんは、どんな活動をするでしょう。
エネルギーが無い、ガソリンが無いのです。補給されるまで、安心、安全な場所に本体をとどめようとするのは理解できるのではないでしょうか。
さて、そこで問題なのは、本体をとどめる方法です。本能は、ありとあらゆる手段を使ってきます。
身体に現れる変化として、志井さんに現れたものを列挙していきます。
発熱させて動けなくする。気分を悪くして動けなくする。やる気を失わせる。
エネルギーが無いことで、危険に対処する力も下がっています。すると、いち早く危険を感知して対処しなければなりませんから、眠らせるわけにはいきません。
また、食べている間は、無防備になってしまうので、食欲を落とします。
行動を起こそうとすると、よりいっそう動かさない反応を強くするので、朝具合が悪くなるのです。
午後に調子が良くなるのは、行動することを諦めたので、動かさない反応が落ち着いたという事ですね。
また、気持ちに現れる変化としては、
こんなダメな自分はみんなに迷惑をかけるという自責感、
こんなに具合が悪いと誰の役にも立てない無力感が強くなります。
すると、自分は壊れてしまったのではないか?
もう、こんな自分は社会の役に立てないので、いなくなってしまった方がいいのではないか?
という気持ちが湧いてくるのです。
また、過去を顧みて後悔し、現在動けないことに焦り、こんな自分はこの先どうなってしまうのだろうと不安感が大きくなっていきます。
この湧いてくる気持ちは、本能さんが、「エネルギーが無いこと」=「疲労が溜まりすぎてしまっていること」により活動しているものなので、エネルギーが溜まれば自然に落ち着いていくのですが、本能さん活動中は、大変つらい思いをすることになります。




