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今疲れているあなたへ  作者: さくらこよみ
コミケ帰りの志井さん(35歳)の後悔
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2 コミケ前~コミケ打ち上げまでの志井さん

 午後4時、場内にチャイムが鳴り、アナウンスが流れる。


「これにてコミックマーケットを終了します。次回、またお会いしましょう。」


東123ホールが拍手に包まれる。



 なんだか、体から魂が抜けるような、スーッとした感覚を感じる。


あー、夏コミも無事乗り切った。


とりあえず、片付けて打ち上げに行こう。



 POPスタンドからポスターを外し。サークル窓口に返却に行く。ゴミもまとめて、ついでに捨てに行く。


今回も手伝ってくれている相方は、机の上の在庫となってしまった本を片付けてくれている。在庫を入れたカートが少し重い。今回はちょっと残った。


まぁ、時間が無くって、オフセット本では新刊が出せず、コピー本でごまかした感じになったから仕方がない。


次回は、しっかり新刊を出せるようにしよう。


 スペースに戻り、椅子を机の下に置いたところで体を伸ばすと、ちょっとクラッとした。


熱中症対策として、十分に水分や塩分は取ったから、熱中症ではないはず。でもちょっと調子が悪いか?


 今日はちょっと早く帰らせてもらおう。いつもなら撤収作業のお手伝いをするのだけど、今回は体調優先。何と言っても、すごく忙しいであろう救護スタッフにご迷惑をかけるわけにはいかないのだ。


 両隣のサークルに挨拶をする。


「すいません、お先に失礼しまーす。」


「お疲れさまでした~」


 カートを引きながら、帰る人の波に飲み込まれていく。


 開場の時は、人津波と言われるくらい、みんな速足で、ど~~っと流れてくる感じだけれど、帰り道となると、みんな敗残兵の雰囲気だ。


自分もそんな敗残兵の雰囲気を出している一人。


 相方に、「いつもの経路でいい?」と聞くと、目線で返事が返ってくる。あー、相方も相当消耗しているな。声も出さないか。今日は暑かったというか、今日も暑かった。東京オリンピックで空調が改修されたとはいえ、湿気の多い暑さは体に堪える。


 大手サークルの列よりは前に進むので、さほど苦では無いが、サークルの列に並んでいるときのようなわくわく感は無いので、やっぱり疲れる。


 国際展示場を西館側から出ると、そこにはゆりかもめ列がある。出てすぐの最後尾に並ぶけど、列の長さは300mくらいはあるのかな。


直射日光がきつい。首周りの日焼けを防ぐために、タオルを巻いているし、帽子もかぶっているけど、足元からの熱気、建物からの反射熱で、まんべんなくローストされている。七面鳥の丸焼きの気持ちが解る。


なんとか、国際展示場正門駅から入り、ゆりかもめに乗り、新橋駅へ向かう。もちろん座れない。


最終日は男性向けサークルが多いため、ゆりかもめ車内はちょっと汗臭い。


やっぱり体調が悪いかな。汗臭さで気分が悪くなってきた。レインボーブリッジのループがきつい。冷や汗が出てきた。


乗車時間の半分は過ぎている。我慢我慢。


そうしているうちに、なんとか、新橋駅についた。ちょっと座りたいが、ベンチには空きがない。


仕方がない。いつもの店まで行こう。相方とは目くばせで意思疎通する。こっち~~みたいな感じ。


 ゆりかもめの新橋駅は、汐留側にある。


新橋の駅の烏森口側は飲み屋街で、サラリーマンの町とか言われているけれど、混んでいるし、大荷物で落ち着いて過ごせる場所が無いので、汐留側で休むことが多い。


JR新橋駅に流れていく人の列から外れて、テレビ局側に向かう。方向的には戻っていく感じかな。


テレビ局とは反対側にある大きなビルに入っていく。回転扉はいつ通ってもめんどくさい。近づきすぎると止まるので、急いで抜けていくこともできない。

ちょっとイライラする。


行きつけ?というか、冬のコミケの時はその店しか開いてない感じなので、いつもな感じになりつつあるイタリア料理屋に寄る。


ようやく座れる。



 ふぅ~~



 ビールを頼む。相方と、サークルスペースの前を通ったコスプレイヤーさんのネタで少し盛り上がる。


ビールが運ばれてくる。


「カンパーイ」「今回もお疲れさまでした。お手伝いありがとう。」


相方とグラスを合わせる。


 さすがにいっぱい汗をかいているので吸い込みが良い。中ジョッキを一気飲みして、追加を頼む。


明日も休暇を取ってある。明日しっかり休めると思うと、今日は少したくさん飲んでもいいかな。


 さて、反省会だ。


 今回のコミックマーケットの準備を振り返ってみよう。


休暇を含んだお休みは、コミックマーケット前週の土曜日から、本番の次の日までお休みにしている。


休みはしっかり取れたのだが、休む前の状況が悪かった。


 仕事はITエンジニアという事になっているが、言ってみればIT土方。サーバーやネットワークの設定から、ソフトの立ち上げまで何でもやる。


基本的には朝9時から夜6時までの勤務だけど、帰るのはだいたい夜10時くらい。


 ずっと無言でパソコンに向かう事は無い。ソフトの設定なんて、マニュアル通りには進まないので、うまくいかない事が起こるたびに、みんなでワイワイ話し合って、アイディアを出し合い解決していく感じ。


明るい職場だと思う。休む相談とかも気軽にできる。


7月は、大きな障害が続き泊まり込みで復旧にあたる日が3日あった。


8月に入り、休暇前までトラブルの処理は続き、家には帰れていたものの、終電くらいになってしまっていた。


 おかげでコミケに出す本の準備が全然できなかった。


オフセット本は諦めて、コピー本だけでもなんとか出したいと思い、休暇に入ってから準備を始める。


コミケまで残り10日。10日あれば間に合う。間に合わせる。


そこからは地獄の作業だった。寝るのは動けなくなってから。毎日20時間くらいは作業して、3時間くらい寝る感じ。


眠たいけど、寝ると完成しない。完成してから寝よう。


 そして、完成したのはコミケの2日前。


コピー屋さんに前日に持っていって、なんとかコピー誌を完成させた。


良かった間に合った! 「新刊落ちました」だけは、何とか避けることが出来た。SNSに告知を出す。意外と反応が良い。おめでとうの言葉をもらって嬉しくなる。


 そんな準備を終えて、コミケに出発することが出来た。


 反省会をした相方とは、楽しく飲むことが出来た。何とか頑張りきることが出来て達成感があった。



 はぁ……終わった~~~!!!

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