第80話 ロックバードからの贈り物
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今も初期の部分を見直しつつ、新しい話を書いています。
ロックバードが去った後もみんな興奮していて、あちらこちらでその話題で盛り上がっている。その中でもアリアやヴェイは話題の中心にいた。
「おい、アリア。あいつが話してたことが分かったのか?」
「ええ、少しだけでしたが意思疎通できましたわ。」
アリアは衛兵たちに囲まれ、一躍時の人となっていた。それらの質問に丁寧に答えるアリアの表情は輝いていて嬉しそうだ。そんなアリアを横目に俺たちもロックバードの話をしていた。
「びっくりしたよ、あんな大きな鳥が居るんだね。何て名前って言ったっけ?」
「ロックバードよ。」
何度も言わせるなとばかりのため息をつきながらもティアは教えてくれた。
「それにしてもやっぱりティアの火魔術は凄いね。僕の風魔術は簡単に跳ね返されたのに。」
「僕もティアさんの足元にも及びません。」
ショーンとイメールの言葉に気を良くしたティアはドヤ顔を見せながら胸を張って腰に手を当てている。
「本当にティアって凄いなって思ったよ。ちょっと尊敬した。」
俺もそれに乗っかっておいた。
「ちょっと?」
ティアは折角の良い気分を害されたとばかりに不満そうな目を俺に向けた。
「ううん、すごく尊敬したよ。ロックバードに近付いていく姿は本当にカッコ良かったよ。」と俺は言い直した。
「でしょ?」とティアは頷くと満足気な表情に戻った。
ティアは男性に持ち上げられるのは嫌いって言ってたけど、俺たちが褒めて喜ぶってことはティアの懐に入れてるってことなのかな。そう思うと俺もなんか嬉しくてニヤニヤしてしまった。
「何で2人でニヤニヤしてるの?」とシュリに訝しげな目を向けられた。
「おーい!まだ何が起きるか分からんし寝られるときに寝ておけよ。」とタイガーはふれ歩いていた。それを聞いた衛兵たちは少しずつ 少しずつ解散していき、それぞれの寝床や風呂など散っていった。俺たちも別れてそれぞれの寝床に移動した。
とは言え、あの大きな鳥を見た興奮は簡単には収まらない……と思ったが、気付いたら眠りに落ちていた。
―――
朝になってもロックバードの話題で持ちきりだった。俺もあの鳥のことをもう少し知りたかったけど、今日は南側の外壁を門付きて完成させるために、頭を切り替えていかないといけない。でも昨夜みたいに空から来られると壁の高さなんてなんの意味も持たないんだな。当たり前のことなんだけど今更気付いた。
作業に取り掛かった俺はまず南側の壁を作ってしまうと、イメールと一緒に人が通り抜けるために重厚感のある門を作っていった。
一度北側で門を作っているのでスムーズに作業を進める事ができて、昼食前には作業を終える事ができた。
「コーヅさん、終わりましたね!」とイメールは充実感に満たされた顔を見せた。プルスレ村に来てからのイメールはとても良い顔をするようになった。
「本当ならこれでアズライトに帰れたのにね。」
「僕はこういう作業の方があってるみたいで、楽しくなってきました。午後も何をするのか楽しみです。」
午後からはタイガーが村長と決めたものを作る事になっている。でもまだ何を作るのかは聞いていない。俺とイメールは壁の外で伐採を続けているショーンやティア、シュリに声をかけて食事に向かった。今日はテーブル席が空いてなかったので床の階段に並んで食べていた。
「食事中にすまんな。」
見上げるとタイガーと村長がいた。
「大丈夫ですよ。」
俺は食事を脇に置いて立ち上がった。
「この後は街道と集会所を作ってくれ。それが終わってから屋台と衛兵の待機所を頼む。」
中華料理屋で注文するのと訳が違うんだぞ、と言いたくなる量の作業を軽く言ってきた。それって数日で作れる量なのか?イメールはどんな思いで聞いてるか分からないけど、俺は既にげんなりとしてきた。
「すみません、俺は街道を作ったことが無いので作り方を教えてもらいたいです。」
俺は心の中ではため息を漏らしながら、作り笑顔を浮かべてお願いをした。
「村人の中に出稼ぎでアズライトの街道作りに携わっていたものがおります。後程連れてまいりましょう。」
「それは助かります。」
俺がそう答えた時だった。何かが真上を通り、空が一瞬暗くなった。何事かと上を見ると昨日と同じかは分からないが灰色がかったロックバードが飛んでいて「ギャア。」と一鳴きした。そして掴んでいた何かを離した。
何かが落ちてくる。なんだ?蛇……みたいなの?
それは近付くにつれて段々と大きくなってくる。段々と縮尺の感覚がおかしい事に気付いた。またこのパターンか!
ドウゥゥゥゥン!と大きな音を立てて村の外れに落ちたのは巨大な蛇だった。
「ラージサーペント!?」
すぐにファイアボールが打ちあがり、全員が戦闘態勢に入った。
「間違っても飲み込まれるんじゃねえぞ!」「おう!」
「後衛は魔術!前衛は距離を取って囲め!」
タイガーからの指示が矢継ぎ早に指示が飛ぶ。ラージサーペントから距離を取った衛兵たちから魔術が繰り出された。
魔術がラージサーペントに着弾すると、煙や土埃などでラージサーペントの様子がよく見えない。
「風だ!風で飛ばせ。他の者は一度下がれ!ラージサーペントの動きは早いぞ!」
俺は元々十分に距離を取っていたが、更に距離を取った。そして風魔術が煙を飛ばす前に緑色の液体が飛んできて地面を濡らした。
「毒よ!絶対に触れないで。」
ティアの叫びに、皆は更に下がった。
「魔術だ。狙いを絞らせるな!動きながらだ。」
タイガーの指示でラージサーペントを遠回りに囲むようにして魔術を繰り出すがなかなか傷をつける事はできていないようだ。そして時折ラージサーペントは口を大きく開けて毒液を振りまいてくる。衛兵たちも当たらないように巧みにかわす。
「なかなかしぶといわね。丸焼きにしてやろうかしら。」とティアが物騒な事を言う。ティアがやると炭化して何も残らないんじゃないか?
「ティア、すまんがここは連中にやらせてくれ。」とタイガーはラージサーペントから目を離さずに言う。
「仕方ないわね。良いけど、その代わり牙と皮を貰うわよ。」
ティアもラージサーペントから目を離さずに答えた。その間も衛兵たちから絶え間なく攻撃魔術がラージサーペントを襲い、ラージサーペントは狙いを定めた衛兵に向けて尻尾を振り回した。衛兵たちはその攻撃を大きく避けるとすぐに攻撃へ移る。
「まて。それは多い。牙はお前の好きな物を1本で皮は無しだ。」
「ちょっと、それなら私が狩るわよ。」
「お前さんがやると素材が焼け焦げて使えない部分が増える。」
2人は戦闘を見ながら素材交渉をしている。随分と余裕だなと思う。俺は怖くてジリジリと後ろに下がっているというのに。
「皮も少しは頂戴。バッグくらい作らせて。」「分かった、そのくらいならいいだろう。」と交渉は成立した。
「開けた口を狙え!」
「おう!」
「牙が折れるでしょ。」
ティアは俺の隣まで下がってきてブツブツ言っている。
衛兵達は敢えてラージサーペントの正面に立ち、誘うような動きを始めた。それに釣られるようにラージサーペントが大きく口を開けての威嚇の咆哮は、離れた場所にいる俺の腹にまで響いてきて体が強張ってしまった。しかしその瞬間を待っていたかのように衛兵達の狙いすましたファイアボールやアイスボールなどの魔術がラージサーペントの口の中に飛び込んだ。
口から魔力を捩じ込まれたラージサーペントは体を大きく捩りながら暴れ始めた。そしてそのまま正面の衛兵達に飛びかかった。するとその体が伸び切ったところを横からヴェイとジュラルが斬りかかり頭を落とした。口を全開に広げ牙を向いたままの頭が地面に転がった。
終わったと思う間もなく「ギャー!」というロックバードの声に皆の視線が向いた。
そうだ、ロックバードも居たんだ。すぐにみんなの視線が上空へ向いた。
ロックバードは空の高いところをゆっくりと旋回している。
「ロックバードと話をさせてください!」
アリアは走って昨夜のテイム場に向かっていき、上空に向けて手を振った。
「ギャー」
ロックバードは一鳴きするとゆっくりとアリアの元に降りてきた。そしてアリアに顔を近付けてそのまま擦り付けた。アリアも笑顔のまま両手でロックバードの顔を抱きかかえるように撫でている。そして耳元に顔を寄せて会話を始めた。声は小さくて何を言っているか分からないが時折笑っている様子が見える。
しばらく2人で過ごした後、アリアがゆっくりとロックバードから離れた。するとロックバードはゆっくりと飛び上がると、もう一度鳴いてから西の方へと飛び去った。
アリアがロックバードとコミュニケーションをとっている間にラージサーペントの解体が始まっていた。トーマスが指示を出しナイフを使って皮や肉などを綺麗に剥がしていく。骨と内蔵が残り後は空間収納袋にしまわれた。
「この毒袋は持って帰りたいわね。」
ティアはしゃがんで地面に置いてある毒袋を突っつきながら言った。
「それは危ないだろ。今回は諦めろ。」とトーマスは眉をひそめる。元々あまり期待をしていなかったのだろうか、感情がこもらない言い方で「仕方ないわね。」とティアは立ち上がった。
「ティア、皮はこれだ。あと、どの牙が良いんだ?」
タイガーがティアに皮を手渡しながら言った。そしてティアと牙を選んだ後、「トーマス、あとは頼んだぞ。」と言うと、タイガーは解体の場所から離れていった。
「おい!アリア。ちょっと来い。」
「はっ!」
アリアは切れの良い返事をするとタイガーの元に走り寄った。
「あのラージサーペントは何の冗談だって?」
「はい、あれは私への贈り物だそうですわ。」
タイガーは一瞬キョトンとした顔をした。
「ぷっ、あははは!」とタイガーは笑いだした。「随分と豪華な贈り物だな。そうか、あれはお前の物か。」
「いえ、ロックバードがそう言っていただけで。」とアリアは恐縮したように返した。
「せっかくだ。ラージサーペントの皮を少し分けてやろう。何か加工して記念にしておけ。」
「はい!ありがとうございます。」とアリアは嬉しそうに答えた。
「あいつは本当に贈り物を届けに来ただけか?」
「また来るとも申しておりました。」
一瞬間があり「また来るのか?」とタイガーが驚いた様子で聞き直した。
「ただ贈り物は仕留めたものにして欲しいと伝えましたわ。ご心配なく。」とアリアが微笑むとタイガーは頭をガシガシとかいた。
「本当に何なんだろうな、毎日毎日。アリア、ご苦労だった。行っていいぞ。」
「はっ!」と姿勢を正し一礼をしてラージサーペントの解体場所に近付いて来た。最初は颯爽と歩いていたが、段々とスキップのようになっていた。よっぽど嬉しいんだな。
「聞いてましたわよね?私にも皮をいただけますか?」と顔を紅潮させたアリアがトーマスにお願いした。
「ああ。聞こえていた。」
トーマスはティアと同じくらいの皮を切り出して渡した。アリアはそれを大事そうに抱え「ありがとうございます。」と鼻歌交じりに去っていった。
俺はアリアを見送りながら、自分がこれから街道を作らないといけない事を思い出した。ラージサーペントに対して別に何もしてないけど精神的に疲れ果てた。
気が重くなると足取りも重くなる。ふらふらと歩いて床の階段に座り込んだ。そしめ腰から取り出した携帯水道で喉を潤した。
「コーヅさーん!」
ゆっくりと顔を上げるとやる気に満ち満ちたイメールが小走りで近付いて来た。
「午後も頑張りましょうね!」
「そうだね。」
自分との気持ちの差に俺は苦笑いを浮かべた。
最後までお読みくださり本当にありがとうございました。
次回も1週間後の火曜日で2月1日を予定しています。




