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第79話 ロックバード襲来

ご訪問ありがとうございます。

ここまでお付き合い頂けている事をとても嬉しく思っています。ありがとうございます。


投稿を始めてから半年間ほぼ毎日何かしら小説を書いてきました。主にはこの小説ですが。最近振り返って1話目から見直して修正してます。表現が無駄に長いところとかすっきりさせています。

 風呂から上がると、いつもはそのまま寝るんだけど、今日はなぜだか眠くない。

 俺は誰も居ないテーブル席に座り、水を飲みながら何を考えるわけでもなく、ボケっと夏の虫の音を聴きながら、床を照らしている光を見つめていた。


「何してるの?」とシュリの声がした。

「何にもしてないよ。今日は眠くないだけ。」と俺はシュリの方に向き直って答えると、そこにはティアやアリアと他にも2人の友達も一緒にいた。ぼんやりとした灯りに照らされた濡れ髪が妙に艶っぽくて、変に緊張をしてしまう。

「ふーん、私たちも座っていい?」

「どうぞ。」

 俺は視線を外すようにして、努めて素っ気なく答えた。

「私は眠たいから寝るね。おやすみ。」

 ティアはあくびをしながら力無く手を振って去っていった。

「おやすみー」と俺たちは小さくなっていくティアの背中に声をかけた。


「珍しいね。早寝遅起きのコーヅくんなのに。」

 シュリが俺をからかうように言って笑った。

「たまにはこういう日もあるよ。」と俺は腕を組んで抗議の意を示した。

「コーヅさんは毎日朝から夕方までずっと魔術を使われてますものね。お疲れと思いますわ。」

 シュリの隣に座るアリアが優しい言葉でフォローしてくれた。そんなアリアのことは恥ずかしくて見ることはできなかったけど、嬉しさで頬を緩ませていた。


「あ、あの、なんであんなに魔術を使い続けられるんですか?」と、アリアの友達が聞いてきた。

「素質だよ。土魔術と生物魔術がAランクって嫉妬を通り越して呆れるレベルだよね。」と俺に代わってシュリは首を振りながら答えた。

「何かコツでもあればと思ったけど、素質かぁ。」とアリアの友達はため息をついた。


 素質があるってありがたい事だけど、無い側からするとやり切れないよね。努力じゃどうにもならないと言われてしまってるんだから。


 その時、突然上空にファイアボールが打ち上がった。一瞬でみんなは剣を取りファイアボールの方向に構えた。俺は皆が立ち上がったのを見てから、思い出したように立ち上がって同じように剣を構えた。


「どこ?」

「北の方だけど。分からない。」


 みんなも目を凝らして探している。その時「北側外壁の上だ!」という声がした。周りの衛兵たちも北の方に向って走り始めた。俺たちも走って見えるところに向かった。


「鳥?」


 衛兵たちの光魔術で照らされたところには、光で良く分からないけど、灰色っぽい大きな鳥が外壁の上で羽を休めていた。その大きさを把握するのに鳥と壁とのサイズ感が合わずに少し時間が必要だった。

「なんだよ、あれ……。」

 俺は思わず独り言ちた。

 その時、タイガーの「放て!」という号令で大きな鳥を目掛けて石や水、火などの魔術が放たれたが鳥の手前で全て弾かれた。そして大きな鳥は攻撃されたことを気にした様子も無い。


「なかなか厄介そうね。」

 いつの間にか隣りにいたティアがそう呟いた。そしてティアはそのまま大きな鳥の方に近付いていった。


 でも俺はこれ以上前に近付くことができなかった。俺はあの鳥のくちばしで一突きでもされたら多分死ぬ、そう思うと体が強張ってしまったのだ。


 数人の衛兵が外壁を駆け上り、斬りかかろうとするが大きな羽を一度羽ばたかせただけで風に煽られ大きく飛ばされてしまった。次の瞬間には「グワッハハハ!貰った!」とヴェイが一瞬で大きな鳥との距離を詰めて斬りつけた。その瞬間、大きな鳥も羽ばたいて飛び上がった。しかし剣は大きな鳥をかすめたようで羽が散った。そして大きな鳥がもう一度羽ばたきをすると無数の羽がヴェイに向かって放たれた。ヴェイは腕で体を守るようにしたが羽はヴェイを傷つける。


「グゥッ」とうめき声を上げて、地面に着地したヴェイが片膝を付く。


 次の瞬間、四方からあらゆる種類の攻撃魔術が大きな鳥を襲った。しかしそれらの魔術には何の反応も見せずに弾き返した。


「物理攻撃だ!」

「おう!」

 タイガー、そしてそれに呼応する衛兵たちの返す声が暗闇に響き渡った。衛兵たちは外壁を駆け上りそのままの勢いで飛び上がり大きな鳥へ斬りつける。しかし大きな鳥は大きく羽ばたかせて上空へと逃げていく。衛兵たちは鳥には届かず勢いを失い落ちていく。

 すかさずヴェイが持っている剣を空に向かって投げつけた。そして土魔術での石の矢が大きな鳥を襲う。しかし「ギエェェ」と鳥が一鳴きして羽ばたくと鋭い無数の羽が剣や石の矢を叩き落としそのままヴェイや衛兵たちに向かう。彼らもその羽を大きなステップで避けた。


「どいて!」


 そこへティアがいくつかの小さなファイアーボールを鳥に向けて撃ち込んだ。大きな鳥は羽を大きく羽ばたかせ、ファイアボールを落とそうとするがファイアボールは勢いを失うことなく大きな鳥に向かう。


 バンッ!バンッ!という音がし、大きな鳥に命中した。鳥からは白煙が上がっている。そして白煙の中から羽がティアに向かって放たれた。ティアは体の前にも火の盾を作り防いだ。俺はショーンに引っ張られて、戦いに巻き込まれないようにと後ろへ下がった。


「なかなかやるわね。これでどう?」

 ティアはそう言うと一本のファイアアローを大きな鳥に向けて放った。高速のファイアアローは次の瞬間には大きな鳥の羽に命中した。


「ギャアアオォォ!」というけたたましい声を上げて鳥が羽を逃げるかのように羽をバタつかせながら上昇していった。しかしバランスが崩れうまく飛べなくなっている。


「怪我した方の羽を狙え!」

「おう!」

 更に魔術が打ち込まれる。徐々に鳥の見えないガードを突破して、羽に当たるようになってきた。どれだけか当てた後、鳥は力尽きたかのように頭から村の敷地内に落ちてきた。


「待ってください!」

 アリアが突然大きな声で叫んだ。何事かと止を刺しにかかっていた衛兵たちの動きが止まった。

「私にテイムさせてください!」


 その声にタイガーの指示を待つかのようにその場が静寂に包まれた。


 少しの間があった後に「ヴェイ、ティア、それから救護班!アリアをサポートしろ。」とタイガーが指示をした。


「ありがとうございます!」とアリアは走って鳥の元に近付いた。


 俺は呼ばれていないけど、テイムというものに興味があるので邪魔にならないようにゆっくりとアリアの方に歩いて近付いた。


 アリアは鳥の顔の傍に膝をついて顔を撫でながら優しく話しかけている。


「ごめんね。痛い?どうしてここに来たの?」


 鳥は薄目を開けてアリアを見ている。そしてまた目を閉じた。苦しそうだ。


「誰か傷を治してあげて。」とアリアが言うと「私がやるよ。」とシュリが名乗り出た。


 シュリも鳥に向かって優しく語り掛けた。「ごめんね。痛かったよね。今から治すからね。」

 そして手を傷口に当てて魔力を流していく。あちこち痛んでいた羽の傷口が塞がってきて、苦しそうな鳥の顔も徐々に安らかな表情に変わっていった。鳥でも表情って分かるもんなんだな、と俺は変な関心をしながら見ていた。


 シュリが治療をしている間もアリアは鳥に話しかけ続けている。途中、体が動く様になった鳥が羽をばたつかせた。俺は巻き込まれないようにと2、3歩後ろに下がった。皆も身構えるが、すぐにアリアが「大丈夫だから。」と皆を制して鳥の首に抱きついた。そして鳥にも優しい声で「大丈夫だから。大丈夫よ。安心して。もう誰もあなたを傷つけないわ。」と話しかけ続けた。それでも鳥は暴れるような素振りを見せるがアリアは「大丈夫よ。いい子ね。」と言い続けながら鳥を落ち着かせようとする。


 アリアは顔を撫でながら優しい目で鳥を見つめている。そして小声で鳥に向かって色々話をしている。鳥も「ギャギ」とか何やら答えているように思える。しばらく何か話をしていたかと思うと突然鳥が起き上がった。そして羽を大きく広げた。


「皆様、ごめんなさい。ここに光が見えたから遊びに来ただけだそうですの。今日はこのまま帰してあげて欲しいです。」


「ギャー。」

 一鳴きすると羽ばたいて飛び上がった。そしてもう一度「ギャー。」と鳴いてから西の方に飛び去って行った。


 みんなも鳥が飛び去った方向をじっと見つめていた。


「申し訳ありません。テイムは失敗してしまいました。でも仲間を連れて報復に来るような事は無いと思います。」


「そんなに簡単にあのサイズの魔獣をテイムできるもんじゃないさ。今日は良い経験になったな。」とタイガーは軽く流した。確かに殆どの人が軽くあしらわれる様な強い魔獣だもんね。


「で、あれはロックバード……か?初めて見たな。」とタイガーはティアの方を見て聞いた。


「西に飛び去りましたし、色や大きさ的にも恐らくロックバードだと思います。私も挿絵でしか見た事無いのではっきりとは分かりませんが。」とティアはいつの間にか手に入れていたロックバードの灰色がかった羽をくるくる回しながら言った。


「それにしても光があんな魔獣を引き寄せる事もあるのか。これからは注意が必要だな。おーい、みんな引き上げるぞ!周辺警護の連中は引き続き頼むぞ。……あ、そういえば、ヴェイは大丈夫か?」


「おいおい、だいぶ後付けだったな。こんなもん何でもないし、後は風呂で血を流すだけだけどな。ガハハハ。」とヴェイは笑っている。既に治療は済んでいるようで、ヴェイの腕や顔にあった傷はもう無いように見える。

 

 ティアを見ると光魔石で地面を照らしながら突き刺さったロックバードの羽を集めている。


「何に使うの?」

「分からないわ。でもこういう珍しい魔獣の素材は集めておくものよ。」

「ふーん。」

 俺は鳥の羽が役に立つイメージが浮かばなかったが、ティアの手伝いをしようと地面に深々と突き刺さっている灰色がかった羽に手を伸ばそうとした。


「傷つけないでね。価値が無くなっちゃうんだから。」

「分かった。気をつけるよ。」


 素材だからそうなるか。俺は傷をつけないように丁寧に抜いていった。いつの間にか一緒になって羽集めをしていたシュリとイメールのものと合わせてティアに渡した。


「ありがとう。助かるわ。」


 羽は結構な本数になったようでティアは両手で大事に抱えるようにして、ホクホク顔をしている。


「それにしても光が見えたからってアズライトには来ないのにね。ロックバードが何でこんなところまで来たのかしらね。」

「ここからまた変な事が起きないと良いんだけど……。」とシュリが不安そうに言った。

 

 シュリ、それは言ってはいけないセリフだ。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

次も1週間後の1月25日(火)を目指します。

またお時間ある時にいらしていただけると嬉しいです。


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