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ショートストーリー③ シアンとルミネのコスプレ劇場

(シアンside)


 今日は久しぶりの休日ということでルミネとフラメアさんと魔国連邦(テンペスト)の町を楽しく回っている。

 この町は劇場など娯楽関係の施設も豊富にある。

 ついこの間までは、こんな楽しい日々が来るなんて思わなかったわ。


 今度お父さん達と親子三人でも回るつもり。



「クアーッハッハッハッ!! 娘達ではないか、どうだ我のタコ焼きを食べていかぬか?」


 屋台の方からそんな声をかけられた。

 あれは······人の姿をした暴風竜、なのよね?

 暴風竜が屋台で食べ物を作ってるって聞いたときはなんの冗談かと思ったけど。


「ヴェルドラ様······では三人分お願いします!」


 フラメアさんが暴風竜から食べ物を受け取る。

 中は火傷しそうなくらい熱かったけど美味しかった。



「······おいしい」


 ルミネも満足そうに言う。


「クアーッハッハッハッ!! 当然よ、我が作ったのだからな」


 あたし達の反応に暴風竜も得意気だった。


「そうだ娘達よ、お前達とはまだ決着がついていなかったな! 今度改めて勝負をしようではないか」


 暴風竜の言うことが一瞬なんのことかわからなかったけど、そういえば迷宮で戦って決着が着かずだったわね。

 もうあたし達に戦う理由なんてないから、出来れば遠慮したいんだけど······

 暴風竜の楽しそうな顔を見ると断りづらいわ。


「そうね······機会があったらやりましょう」

「ウム、楽しみにしているぞ! クアーッハッハッハッ!!」


 暴風竜の楽しそうな笑い声を後ろに、あたし達はこの場を離れた。

 しばらく歩いた所でフラメアさんが口を開いた。


「あの、シアンさん······ヴェルドラ様とまた戦うつもりなんですか?」


 正直に言えば戦いたくないわ······

 でもあの様子だとかなり期待してるわよね。


「······シアン、がんばって」

「ってなんでルミネが他人事みたいに言うのよ! あなたもに決まってるでしょ!?」

「······えー、わたしは戦いたくない。怖い······死にたくない」


 あたしだってそうよ!


「め、迷宮内なら復活の腕輪が使えますし······死ぬことはないと思いますけど」


 フラメアさんがあたし達を気遣うように言う。


「······復活の腕輪があっても嫌······シアンと違ってわたしは怖い······」

「あたしだって怖いわよ! 復活の腕輪があったって暴風竜と戦うなんて普通できないわ!」


 ええ、認めるわ!

 以前のあたしはどうかしてたのよ。

 復活の腕輪なしで迷宮攻略なんて、もう絶対できないわ!

 いえ、復活の腕輪があっても無理よ!



 ······でもあの様子を見る限り、いつかは再戦を覚悟しておいた方がよさそうね。

 せめて、まともな防具類とか用意した方がいいのかしら?



「フラメアさん、良い防具の売ってる店教えてくれないかしら?」


 以前は意地を張ってこの町の装備には手を出してなかったから、どこに何が売っているのか詳しくは知らないのよね。



 フラメアさんの案内であたし達は防具屋に向かう。

 着いたのは双子のドワーフの武具工房だった。


 ここでは防具類を中心に作っているらしく、特に女性向けの物が多く作られているとか。



「おう、色々置いてあるぜ。遠慮なく試着していけ」


 言っては悪いけど女性向けの防具を作ってるとは思えない豪快な人達だった。

 色々とオススメ装備を持ってきたので試着する。

 着方がわからないものもあるからフラメアさんに手伝ってもらった。


 ······なんだか鎧という割には身に付ける場所が少ない気がするんだけど。



「って、なんなのよコレ!?」


 着替え終わった自分の姿を見て、思わず叫んだ。

 だってどう見ても鎧には見えないんだもの!


「そいつはビキニアーマーという女戦士が装備する由緒正しき鎧だ」


 ドワーフの技師が得意気に言う。


「これのどこが鎧なのよ! おへそ丸出しだし、露出部分も多いし、全然身体を守れてないじゃない!」


「その点は心配ねえ。そいつには強力な防御魔法が付与されているからな。露出部分も含めて防御力はそこいらの鋼鉄の鎧よりも上だ」


「な、なんでこれにそんな凄い機能を付けたのよ! 普通の鎧に付ければいいじゃない!」


「「それだと浪漫がねえ」」


 双子のドワーフが声を揃えて答えた。

 なんなのこの人達······

 腕は確かかもしれないけど、なんかおかしいわ。

 嫌な予感がしてきた、というより嫌な予感しかしないわ······



 ルミネも別の防具を受け取り、着替えていた。

 着替え終えたルミネが出てくる。

 ルミネの姿はゴスロリ(?)と呼ばれるヒラヒラした衣装だった。


 まあ、さっきのビキニアーマーとかいうのよりはマシね。


「······我は悠久の時を生きる吸血鬼の真祖なり。者共、我を崇めよ、ひれ伏すが良い」


 双子のドワーフに吹き込まれて、ルミネがよくわからないセリフを口にした。


「ル、ルミネさん······なんだかルミナス様みたいです······」


 そんなルミネを見てフラメアさんが少し震え上がっていた。

 ルミナスってどこかで聞いたような気がするけど、誰のことだったかしら?

 まあ、今はそんなことはいいわ。


「もっと実用的な物はないの······?」

「どれも実用的なんだがな、ならコレはどうだ? 水の羽衣という魔法攻撃を軽減してくれる優れものだぞ」

「あたしにはただのスケスケのドレスにしか見えないんだけど······」


 それからあたし達は色々な装備を着せられた。

 巫女服だのメイド服だの、とても身を守る防具とは思えないものばかり。



「悲しみも、悪い夢も、終わらせて見せる······」


 今度は魔法少女とかいう衣装を着せられた。

 ドワーフの技師の言われるがままセリフを口にする。

 悪い夢は今がまさにそうなんだけど······


「······繰り返す、わたしは何度も繰り返す······同じ時間を何度も巡りたった一つの出口を探す、あなたを絶望の運命から救い出す道を···」


 ルミネも別の魔法少女の衣装でセリフを口にした。

 一体なんのセリフなのよコレ······

 意味が全然わからないわ。



 その後も色々な衣装を着させられ、訳もわからないセリフを言わされた。

 フラメアさん、そのカメラ(?)とかいうやつであたし達をパシャパシャ撮るのをやめてほしいんだけど······




「これがあたし達の······絶唱だぁあああああーー

ーーーーっ!!!」


 最後の方はあたしはやけっぱちになっていたわ。

 ······一体何しにここに来たんだったっけ?



 結局あたしはここでは何も買うことなく工房を出た。ルミネはメイド服だの猫耳衣装だの色々もらって満足そうだったけど。


 とんでもなく疲れたわ······

 防具はやっぱり闇魔法を使って自分で強化した方がいいかしら?





シアンとルミネの暴風竜との再戦は未定です。

書きたいとは思っていますが。

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