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ショートストーリー① ルミネの才能

ちょっとした小話です。

(リムルside)


「おう旦那、よく来てくれたな。歓迎するぜ」


 今日はヨシダ氏の店で新作の試食会があると聞いてきた。

 ヨシダ氏はガタイのでかいおっさんだが、お菓子作りのプロだ。



「リムルさ~ん、こっちこっち」


 すでに席に座っていたエレンが手を振ってきた。

 お菓子の新作ということで、女性陣が集まっている。エレンの他にフラメア、シアン、そしてアリスとクロエもいた。


 シュナとシオンも連れてきたかったが、二人はまだ仕事中だ。


「久々の新作だし楽しみにしてるぜ、ヨシダさん」

「そいつは嬉しい言葉だが、今回の新作は俺が作ったんじゃないんだ」


 ん? そうなのか。


「じゃあ誰の新作なんだ?」

「······わたし」


 奥からエプロン姿のルミネが出てきた。

 なかなか似合っていて可愛らしい姿だ。


「ルミネって料理とか出来るのか?」


 あまりそういうイメージがなかったが。


「······リムルさん、失礼······料理くらい作れる。······多分······人並みくらいは」

「ずいぶん自信無さげだな······」

「······人と比べたことなんてない······。でも孤児院ではよく作ってた」


 ちょっと不安になってきたぞ······

 まあ、シオン以上の料理は出ないだろう。


 ······今フラグが立ってないよな?


「ルミネの料理は孤児院では好評でしたよ。ただお菓子作りは初めてだと思いますけど」


 シアンが教えてくれる。


「······だからヨシダさんにお願いして教えてもらった。ハルトは甘いもの好きだから······手作りで喜んでもらいたい······」


 本当健気だな、この子。

 ハルト······あの幸せ者め。


「ねえ、お姉さん。早くお菓子食べたいわ」

「おなかすいちゃった······」


 アリスとクロエが言う。


「ルミネさんの手作り、楽しみです」


 フラメアも早く食べたそうた。


「······今持ってくる。味は自信ある······楽しみにしてていい······。けど見た目は······リムルさんは満足できないかも」


 そう言ってルミネが奥に戻る。

 俺が満足できない?

 見た目はシオンの料理で慣れている。

 ちょっと形が崩れていても文句はないが。



 ルミネが戻ってきてテーブルの上にはいくつもの皿が並ぶ。

 数が多いためヨシダさんも手伝っていた。

 ケーキにマフィン、プリンなど様々だ。


「これ、ルミネ一人で作ったのか?」

「······ん、自信作」


 ルミネが頷く。



「ルミちゃん、すご~い」   エレン

「美味しそうですっ」     フラメア

「これ全部食べていいの?」  アリス

「···おいしそう」       クロエ


 みんながそれぞれ喉を鳴らす。確かにうまそうだ。

 見た目に自信がないと言っていたが、どれもキレイな形に整っている。

 とても食欲をそそる感じだ。



 ······けど、ルミネには悪いが逆に不安になってきたな。

 まさかシオンと逆で見た目は良くて味が壊滅的······なんてことないよな?


「······じゃあリムルさんから······どうぞ」


 ルミネが少し不安そうに言う。

 やっぱり初めて作ったこともあって緊張しているようだ。

 俺も覚悟を決めよう。

 たとえ激マズだったとしても死にはしまい。

 俺は思い切って一口食べる。



「――――――――!!?」


 なんだ······これ?

 超うんっっっめえ!?

 見た目通り、いや、見た目以上にうまいぞ。

 口の中に甘さが広がり、それでいてしつこくない。

 二口目、三口目と手が止まらない。


「ちょっと先生!! 一人で全部食べないでよっ」


 アリスが慌てて俺の手を止める。

 どれもうますぎて、つい夢中になっていた。

 他の面々もそれぞれ食べ出す。


「ルミちゃん、これ最高よぉ!」

「本当、おいしいです~、ルミネさん」


 エレンとフラメアが幸せそうな顔で言う。

 アリス、クロエ、そしてシアンも笑顔で食べている。


「これ、ヨシダさんは手を出してないのか?」

「おう、嬢ちゃんに基本だけを教えたらもう完璧でな。ほんの数日で追いつかれちまったぜ」


 だとしたら本当にすごいな。

 もうすでにヨシダさんと同等の腕かもしれない。


「ルミネも店を出したら繁盛しそうだな」

「そうなったらライバル店の登場になっちまうな」


 ルミネは表情変化は乏しいが可愛らしく、町の住人に人気がある。

 そんなルミネが店を開いたら客が殺到しそうだ。


「······別にそういうのに興味はない······ハルトが喜んでくれたら······それだけでいい」


 このコ、本当にハルト以外の男にはなびかない。

 ルミネを狙っている男が結構いるって話を聞くんだがな。



「そういや、見た目に自信がないと言ってたがどうしてだ? 俺が見ても特に不満はないが」


 見た目も味も最高だった。

 これで文句言う奴いるのか?


「······シオンのようにはどうしても作れなかった。······あの見た目と食感で······あの味は出せない」


 ············ん?


「······リムルさんに満足してもらうため、色々がんばったけど······無理だった······」


 ······なんかおかしなことになってるぞ。

 もしかしてルミネ、シオンの料理のあの見た目······

 俺の好みだと思ってる?


「ちょっと待てルミネ······お前はとんでもない勘違いをしている」

「······?」


 俺は慌ててルミネの誤解を解いた。


「······そうだったんだ······わたし、てっきり······」


 てっきり······なんだ?

 まさかそんな勘違いされてるとは思わなかったぞ。

 色々がんばったとか言っていたが······ルミネ、お前はがんばるポイントを完全に間違えてる。



 ······ルミネ以外にそんな勘違いをしている奴はいないよな?

 今度確かめておこう。

 やはりシオンの料理は世に出しては駄目だな。



「それはそうとヨシダさん、これとこれ、以前材料が見つからなくて作るのを断念したとか言ってなかったか?」


 よく見るといくつか以前に作れずに諦めていたお菓子がいくつかある。


「おう、それも嬢ちゃんのおかげだ。俺も気づけなかった代用品とか色々見つけてくれたんだぜ。おかげでレパートリーがかなり増えたぜ」


 ルミネってそんな目利きまで出来るのか。


「ルミネ、ちょっと相談があるんだがいいか?」

「······ん」


 俺はルミネにお菓子以外にも断念していた料理の相談を持ち掛けた。

 ルミネはすぐに原料や代用品を見つけてくれた。

 おかげで魔国連邦(テンペスト)には一気に料理の種類が増えることになった。



 このコ、本当に凄い。有能すぎる。

 シオンの代わりに俺の秘書として欲しいと思ったのは内緒だ。






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