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戦争です

「いえ、まだまだ苦しい日が続いていますわ。理解に。」


完全にメイはこれまでなったことのないほど、燃えていた。


「ふふ…まぁ簡単なことですわ。」


一瞬止まった空気に、ミシェルの現婚約者が選ばれた余裕を見せた。


「そうですわね、簡単なことでしたわ。ミシェルもミシェルの婚約者様もお似合いですもの。」


メイは綺麗所をバックに私には似合わなかったと言わんばかりだ。


「メイ様もお遊びはほどほどに身を固めては?」

「とんでもない、私に遊ぶ時間などありませんわ。ミシェル様はお遊びはお辞めになったのですね。」

「以前と違って口がお上手ですね。圧倒されました。」

「教訓ですわ。言っても無駄だと無口を決めていた過去の。」

「まぁ、こわぁい!」


メイの気迫にミシェル現婚約者が声を上げる。


「あら、恥も外聞もお気にならない方に怖いものなんてあって?本当にお似合いですわ。癖のある方は結婚しても治らないようですが、お幸せに。」


二人して疑心暗鬼になればいいわ。


小言を言いながら去って行く二人にメイは背筋を正して見送った。

振り返ると、メイのあまりの応酬に男性三人が引いている。


「お騒がせしてすみません。しかし、スッキリしましたわ。私の両親を悲しませた分だけは取り返せたかしら?」


メイは笑って一歩動き出そうとしたが、バランスを崩した。

近くにいたディルに支えられる。


「ごめんなさい、ディル様。少し…緊張してしまいましたわ。」


ディルの手を離れ、ロベルトに手を貸してもらう。


「お二方におかれましては妹がお騒がせいたしました。兄として改めてお詫びします。」


ロベルトが兄としてディルとシオンに謝罪する。


「いえ、私はもっと修羅場を知っていますから。」

「私も大丈夫ですが…」


ディルとシオンは一応はそう言ってくれた。


「お騒がせしたので、皆様こちらを離れた方が良いかもしれないです。本当に申し訳ありません。」

「少し落ちついたらまたダンスに誘うから、それまで待っててくださいね。」


ディルがメイの手の甲にキスをしてその場を離れた。


「シオン様、私は誰かを思ったら勇気がでましたわ。シオン様も大切な方を思い出したら勇気が出るかもしれませんわ。それに、今の噂の主役は私ですし、お声をかけるには今ですわ。」


そう言ってシオンの背中を押して、女性陣がいる場所へ送り出した。

最後はロベルトだ。


「今日の我が家の主役様、いってらっしゃいませ。」

「でも、大丈夫か?」

「あの威勢を見ていましたか?」

「わかった。一緒に帰るから大人しくしておいてくれよ。」

「はい。」


ロベルトを送り出して、メイもその場を離れた。


シオン様、誘えたのね。


シオン様が女性と楽しそうに踊っている。

それを見ていると、急に視界が遮られた。


「ちょっとお顔貸していただけます?」


夜会の花たちがメイを取り囲む。

シオンと踊った時からそうなるだろうことはメイは予想できていた。

でも、忙しいのに自分に会いに来てくれるリオンのために、友人として何かしたかった。

だから、悔いはない。


パシャ


メイの頭に赤ワインがかかる。


相当な怒りようね。


普通ならドレスにかけるくらいなので、いかに自分がやったことが悪目立ちしたかわかる。

人気男性陣と踊って、しかも特別に。

そして騒ぎを起こして恥をかかせた。

それはお慕いする人をそんな目に合わせた女など、こうなる。


「あら、大変、ごめんあそばせ。」


メイの恥を見せつけるように、夜会の花たちは消えていった。

メイは袖で顔を拭う。

お気に入りのドレスはもうどうしようもないし、更に汚れてもいい。

視界を確保して、ハンカチを取り出すと顔に当てた。

気合いを入れたお化粧も跡形もないだろう。

メイに気づいた人たちが次々にため息のような声を出してたり、クスクスと笑ったりしている。

メイは唇を噛み締めた。


「メイ嬢!」


大きな影がメイに覆い被さる。


「ディル…様…」

「少し外に出よう。」


ディルは建物の構造を熟知しているように、誰もいない庭へメイを連れていく。


「可哀想に…もっと早くに気づいていれば…」


ディルがハンカチを取り出してメイに当ててくれる。


「お心遣いありがとうございます、ディル様。でもお気になさらないでください。私は大丈夫ですわ。」


笑顔でいると、突然ディルから抱きしめられる。


「ディル様、お洋服が汚れてしまいます。」

「男の服の汚れなど勲章なようなもの。貴女は強がり過ぎたと思いますよ。今日は特に。」

「そうかしら?」


メイは力を抜いてディルに体を預けた。

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