お兄様できました
オリエッタ家は本格的に養子を迎え入れることとなった。
メイは予定通りに事が進んでとても満足している。
しかし、少しだけ不安な事がある。
果たして、養子に来た方と仲良くできるでしょうか?
貴族の中には跡取り欲しさに妾を抱える人間もいるが、オリエッタ家は夫婦仲が大変良くメイもそんな父と母に沢山愛情を注いでもらった。
家を継げない身だからといって邪険にされたり、婿を取ってほしいというプレッシャーも感じたことはない。
ただ、付き合いでどうしても回避できなかった先の婚約、それくらいだ。
どんな人が来るのかしら。
今日、養子の方が家にやって来る。
探し始めで一日でみつかり、二日で承諾、三日目に屋敷に来るという、異例の速さである。
父はすぐに決まったとびっくりしていたが、その速さからメイは詳細を一切聞いていない。
「今日からお世話になります、元レスター家次男、ロベルトと申します。オリエッタ家においていただき、嬉しく思います。誠心誠意をもって仕えたいと思いますのでよろしくお願いいたします。」
まるで使用人のような挨拶に、私と母は目を丸くした。
「こちら、妻のミラと娘のメイです。」
母とメイがそれぞれ軽く挨拶をする。
「あと、折角家族になるんだからあまりかしこまらないでほしい。」
「そうね、私は母と呼んでほしいわ。」
父と母が気さくにロベルトに話しかける。
「ロベルト様はお歳は幾つになりますの?」
メイがロベルトに話しかけた。
「今年18になります。」
「なら、私の一つ上になりますわね。お兄様と呼んでよろしくて?私は気軽にメイとお呼びください。」
「…はい。」
ロベルトは少し戸惑っているようだ。
もしかしたら、もっとかしこまった家にお生まれなのかしら?
確かレスター家はかなり上の階級だったはずだ。
ロベルト・レスター…
あ、思い出しましたわ!
あまり夜会にはいらっしゃらないけれど、女性に密かに人気がある方ですわ。
確かに、ロベルトは涼やかな目元に整った目鼻立ちをしている。
性格を表すかのような真っ直ぐな黒髪に緑の瞳が星空のようにきらめく…元友人より引用。
同じ黒髪と言うことで軟派なルーカスと硬派なロベルトとで対のように語っていたと記憶している。
なんで私の家なのだろう。
かしこまった態度、不釣り合いな身分の高さ、疑問が少しずつ積み重なって行く。
「慣れない場所で疲れたでしょう?あなた、部屋にご案内しては?」
母が父に促す。
「お荷物お運び致します。」
メイドがロベルトの荷物を運ぶ。
ロベルトが持ってきた荷物は少し大きめのトランク一つだけだった。
え…あれだけ?
「お母様…お兄様大丈夫かしら…」
「ロベルトが少しでも早く慣れるように、私たちが頑張らないといけないわね。」
母がメイの肩を抱き寄せた。
「…お茶いたしませんか?」
メイは恐る恐る、ロベルトをお茶に誘う。
「はい、今行きます。」
早速、ロベルトをローズガーデンに連れていく。
「夜にみんなでお食事すると思いますが、ちょっと早めに子ども同士話せたら、と…大丈夫ですか?」
「構いません。」
ロベルトは一切表情が変わらない。
「この度はオリエッタ家に来ていただきありがとうございました。」
「いえ、こちらこそありがとうございます。」
「…いえ、私のワガママで来ていただいから…本当の妹だと思って気軽にお話しください。私、ずっとお兄様が欲しかったの。」
ロベルトの顔色が変わった。
「そういう訳にはいきません。貴女様の一言で私はここから追い出されるのですから。命令ならば、お聞きますけど。」
涼やかな目が冷たい目に変わった。
明らかにメイを軽蔑している。
「命令…では無いです…」
「それならば煩わせないでください。」
「もしかして…ロベルトお兄様自身は養子の件は納得してらっしゃらないのですか?」
「それは追い出すつもりですか?どうせ、私はワガママな令嬢の玩具ほどの価値しかありません。」
パシッ
メイはロベルトの頰を叩いた。
「私は絶対に追い出したりしません!貴方が必要だから、頼んだだけです!私なんて爵位も継げないし、ろくに結婚もできない不良品でしかない!私の価値などありません!」
メイはロベルトに言いたいだけ言った後、逃げるように自分の部屋に戻った。




