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第五十八話 写真

「交代時間だよー。休憩の人は仕事を引き継いでから休憩に入ってねー」

 石井が交代時間をわざわざ告げに来た。……嫌がらせか?俺は続けて接客し続けねばならんというのに。

「なおくん、まだ休憩じゃないの?」

 休憩に入らない俺を疑問に思ったのか、率直に尋ねてきた。新たに加わった執事の中にはタツミもいたようだ。

「俺は名ばかりの最高職だからな。サービス残業が多いんだよ」

「残業とは違うでしょ」

 素早く返してくるな。まあタダ働きさせられるのは一緒だ。さしたる違いはない。

「仕事頑張ろうね」

「言ってるそばから客が来てるんだ。さっさと対応するぞ」

「あっ!ごめん!」

 俺に謝られても困る。謝るくらいなら働けばいいじゃない。



「いらっしゃいませ、お嬢様、旦那様」

 この仕事にも大分慣れてきて、ピーク時の混雑も緩和されてきたからか、俺たちには余裕が生まれていた。やればできる子なのだな、俺たちは。

「ご注文はお決まりですか?」

「あ、あの、一緒に写真撮ってくれませんか?」

 空いている執事がいると、こんな注文も出てくるほどだ。忙しいと客も遠慮してくれるが、余裕があるように見えるとダメもとで言ってくるのだろう。物珍しさで記念に残したい気持ちはよくわかる。

「かしこまりました。その携帯でよろしいですか?」

「はい!」

 許可されるとは思っていなかったのか、若干驚きつつ携帯を渡してきた。余裕があれば無料でサービスをする。なんて良心的な店なのだろうかと自画自賛してみる。

「じゃあ夏目。俺が写真を撮るから一緒に写ってあげてくれ」

「了解」

 俺は写りたくないので、基本この<写真撮られる係>には夏目が就任している。適材適所はいいことだ。

「はい並んでー。はいチーズ」

 一仕事完了。喜んでもらえたようだしなによりだ。いい思い出になるだろ。

「ところで携帯のアドレス交換しない?」

 ……夏目、毎回毎回女の子にがっつきすぎだ。いい思い出が台無しになるから。店の評判が悪くなるから。

「なぜ写真係が俺じゃないんだー!」

 駄々をこねている、怪我人清水は無視。理由は顔(夏目はイケメン、清水は無骨)と体型(夏目はスラッとしてる。清水は筋骨隆々、執事に見えない。威圧感あり)とはっきりしているが言わないでおいてやろう。事実は残酷で人を傷つけるからな。

「……そうか、男子の連中が俺に人気が出るのを恐れているんだな……それなら仕方がない」

 ……ポジティブ思考は最強の武器になのだと俺は思う。

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