番外編の続き 遺憾の意
「よーし、このクラスの出し物に行こうか!」
「そうしましょうか。楽しければよいのですが」
見れば、〈北高劇場 〜本音と建前〜 〉と書いてあります。高校でもこのような出し物なのですね。中学と大して変わらない気がします。
「はーい、開場まであと五分でーす!押さないでくださーい!」
……なぜあの人はチンパンジーのお面をつけているのでしょうか?若干不安が生まれてきました……。
「総理!なぜあの国の側から情報が来た時点で国民に発表しなかったんですか!」
「えー、毒餃子事件の発表を遅らせたのは、捜査上支障をきたす可能性があったからでですね―――」
(あっち側からの要請があったからに決まってるだろうが。オリンピックが失敗したら困るあっちの事情と複雑な政治事情が絡んでんだよ。少し考えればわかるだろうが。馬鹿か)
「被害者に対して不誠実だとは思わないんですか!」
「えー、被害者には真実をはっきりさせることが一番重要だと考えておりましてですねー」
(たかが数人のためにあんなでっかい国の心証を悪くしろって?冗談じゃない。そんなことしたらお前らも困ったことになるとなぜ理解できんかな?これだから低能の人間は……)
「弱腰外交といわれていることに関して、何か一言を!」
「われわれとしては最善の対応をしておりましてですね、これは国民の皆さんに理解していただくより他はないかと」
(特に資産のない、食料自給率も低いこの国が生き残るために、他国と敵対関係になるわけにはいかんだろうが。この記者もわかってて聞いてるんじゃないだろうな?支持率下げて総理変えたところで、誰も改善なんかできやせんよ)
「年金問題について、総理のお考えは!?」
「厚労省の役員が全力で対応しております。ご理解いただきたい」
(あーもういい加減に会見終われよ。本音と建前が違うことくらい、少し知能があればわかるだろ?酒飲みてー)
……チンパンジーの仮面を付けた人の本音と建前を話しわける、黒い劇でした。劇と呼べるかどうかもわからない、登場人物の少ないものでしたが。……いいんでしょうか、こんなことして?教師も何か文句をつけましょうよ。あくまでフィクションと言い張ればいいんでしょうか?
「岬、面白かったねー」
そのブラックユーモアあふれる劇を面白いという、我が親友の感性も素晴らしいですね。ネジがどこかゆるんでいるのでしょうか?
「……確かに興味深いものではありましたが」
さすがはうちの能天気親が勤める環境です。この学校に来年通うかもしれないと思うと……楽しみで夜も眠れなくなりそうです。
「……ニヤリ」
「岬、不気味だからその笑い方はやめとこう」
失敬。無意識に顔に出てしまいましたか。