八話 小野原純の、手紙。2
『涼ちゃん、誕生日おめでとう。
去年もさ、こうやって祝ったよね、涼ちゃんの誕生日。
私の誕生日が四月二十一日だから、私の誕生日も一緒に祝ったっけ。
涼ちゃんの誕生日を祝うために家に呼んだのに、こっそり私の誕生日パーティーをママと組んでサプライズしてくれたよね。
とてもびっくりしたよ。
だから、今年は涼ちゃんの誕生日を祝う場所を変えて、時間も変えて。
そこまでして祝いたいのかよ、って言われそうだけど。
でも、口ではそう言ってても、涼ちゃんはいつも顔に出てるんだよ?
口元がニヤけてるの、気づいてない?
「俺はポーカーフェイスだ」とか言ってたけど、そんなことないからね?
ほんと、涼ちゃんは自分のこと知らないよね。
私のことだって、意外と知らないでしょ?
私が、何が好きで、何が嫌いで、何を思っているのか。
私は、涼ちゃんのことたくさん知ってるのに。
だって、涼ちゃんとはずっと一緒だもんね。
これからも、ずっと一緒にいた……』
「あああああっ!」
また、私は手紙を放り投げた。
「何でまた、そう書いちゃうの!?」
なんで、毎回こんなラブレターみたいになってるの。
涼ちゃんのことなんか、好きじゃないのに。
「ふー、はぁー」
大きく深呼吸する。…………よし、落ち着いた。
「なに書こう」
そうだ、今までの思い出とか、涼ちゃんの良いところとか。
去年涼ちゃんがくれた、可愛いシャープペンを握り直す。
でもさ、涼ちゃん。
好きじゃないけど、じゃないけどね?
ずっと一緒にいたいとは、本当に思ってるんだよ?