表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きみとあなただけの教室  作者: ぐれこりん。
45/76

第44話 理想の兄

華山は靴を憲助の顔に向かって放つ。憲助が拳でパシッと弾いたと同時に前蹴りを腹部に向かってお見舞いしようとする。しかし憲助はクイッと身体をずらして回避する。華山は前蹴りの後に距離を詰め飛び膝蹴りをお見舞いしようとする。憲助は距離を詰めてきたのを見ればクルッと回転し脇腹に肘打ちを入れる。肘打ちはドスッと脇腹に入ってしまう。


華山

「う、がっ!」


苦しそうに呻く。脇腹の筋肉はかなり薄い。鍛えていてもみぞおちに響いてしまう。華山は組み付こうとするもお腹ががら空きになり、ボディーブローを入れられる。サッと憲助は後退した。


華山

「…ぐふっ!」


憲助

「どうした? 喧嘩慣れしてないのか? そりゃそうか。自分より弱い奴をいじめるてるだけだもんな」


華山

「クソッタレめっ…! 手の内を読んでるだけだ」


憲助

「読むも何も、隙が出来たところに攻撃を入れてるだけだ。次はこっちから行くぞ」


憲助は両手を顎の下に構え、まるで身体でUの字を描く様に上体を振る。


華山

「クソっ、どうすりゃあいい!?」


間違いなくボクシングスタイルだ。顎を狙われないように構え、さらに上体を動かして攻撃を読まれないようにする。こいつ、本気で俺を倒しにかかってきている。体の動きに淀みがない。しっかり体幹も鍛え上げられており、瞬発力も十分だ。こいつが本当にあの法助の兄なのか?


憲助

「僕は兄として相応しい人間になれるように努力をした。法助に尊敬される兄になれるように。法助のお手本になれるように。法助の、頼りになれるように」


憲助は華山のお腹にアッパーカットを2発入れる。


華山

「がっ、は!」


華山は慌てて距離をとる。お腹を抑えれば歯を食いしばり耐えた。どうすればいい、どう戦えばいい。


憲助

「法助が僕を強くした。法助がいたから僕はここまで来れたんだ。その法助をお前は虐げた。あまりにも暴力的に、あまりにも無慈悲に」


華山

「く、はぁ、はぁ、人の話聞かねぇな…。俺がボコったんじゃねぇってのによ」


憲助

「やった本人はきっとそういうだろう。俺はやってない、俺は悪くないと。一方的に攻撃出来るものにしか攻撃できない弱虫の嘘つき野郎なんだからな」


華山

「グッ…!」


華山は歯を食いしばる。因果応報なのか? 法助を虐めたツケが回ってきたのか? 謝ったところでコイツは収まらないだろう。最も謝ることはプライドが許さないが。


華山

「クソ喰らえっ!」


華山はカバンの中身を投げつける。ばしばしと本や筆箱の中身が憲助に向かって当たる。華山はそのまま思いっきり駆ければ飛び蹴りをお見舞する。しかしその行動も読まれており、憲助の振りかぶった拳が華山の顎に命中する。グワン…と意識が混濁すれば世界が真っ白になり気絶してしまった。


華山

「…」


目覚めると保健室であった。授業中である為か辺りに誰もいない。


「おい」


急に呼びかけられれば壁にもたれかかっている憲助に気付く。ビクリと体を震わせれば憲助を凝視する。学校の中に入ってきやがった。【そこにいることに全く気づかなかった。】サーっと血の気が引いていくのがわかる。【勝てない。】こいつと100回戦っても恐らく勝てない。何かが違う。正面から挑んでもまず勝てない。不意打ちは恐らく期待出来ないだろう。先程の戦いを見れば武器を使っても難しいだろう。得たいのしれない恐ろしい存在に手が震えだした。


華山

「はぁ、はぁ、はぁ、何が、目的なんだ…?」


憲助

「お前が法助に二度と手を出さないことだ。もしまた同じような事になって帰ってきたら、もっと手酷くしめてやるからな…」


憲助はそのまま退室しようとする。


華山

「ま、まて!」


憲助

「…なんだ」


憲助はピタリととまり、振り向くことなく返事をする。


華山

「…恥を承知で頼む。協力して欲しい」


憲助

「…協力だと? 法助を虐めて傷めつけたやつのか?」


華山

「法助には謝る。土下座だってしてやる。だから俺を信じてほしい。法助をやったのは俺じゃない。生徒会長の常磐琥珀だ」


憲助

「…それは本当か?」


華山

「ああ、だがあんたが生徒会長に殴り込みをして倒した所で、法助は転校させられてしまう。それほど厄介なあいてなんだ。だから俺と、法助に協力して欲しい。頼む」


憲助

「お前と、法助だと?」


憲助は振り返った。


華山

「俺と法助は結託して生徒会長に報復しようと画策している。他にも仲間がいる。だがあんたの力が必要だ。この学校の生徒ではない、完全部外者のあんたのな」


憲助

「話を聞かせろ。裏取りをして、もし嘘だったなら承知しないぞ」


華山は憲助に話をする。まさか自分が虐めていた同級生の兄にこんなことを頼む日が来るとは思わなかった。まったく、人生何が起こるか分からない。


憲助

「…」


華山

「どうだ? 協力してくれるか?」


憲助

「下調べした後にまたお前の元に来る。その時に返事をしてやる」


華山

「…そうか」


憲助は一切挨拶はせず退室してしまった。バレずに侵入する事に余程自信があるのだろう。しかし法助にはどう説明しようか。


華山

「…」


華山はふと思う。あそこまで大事に想ってくれる兄であるならば、自分は歪まずに居られただろうか。あそこまで強くて頼もしい兄であるならば、兄の存在を誇りに思えたのではいだろうか。少し法助が羨ましく思う。あんな兄がいたならば、今の自分はどうなっていたのだろう。華山はカバンを待てば教室へ向かい、授業に途中参加をする。


休み時間。


桐邑

「どうしたの? その顔」


華山

「ん?」


顔と言われればさすってみる。頬が少し腫れてる気がする。


桐邑

「一時限目遅れてきたし、珍しいなぁって」


華山

「ああ、どうやら気絶してたみてぇだ。保健室で休んでたんだよ」


桐邑

「え? 気絶って…嘘でしょ?」


華山

「いいや、ボコられて気絶してたんだ」


桐邑

「この学校にあんたをボコれるやつなんているの? …信じらんない」


華山

「まぁ別にいいだろ。俺の事はよ」


桐邑

「それより、傀儡が1人見つかったんだって?」


華山

「ああ、法助が懐柔までやってくれたみたいだ。意外と侮れねぇよあいつ」


桐邑

「…最近なんか変わったね。法助」


華山

「そういう場で力を発揮するやつなのかもしれねぇ。偏見で見るのは良くないって言っただろ?」


桐邑

「愚図には変わらないよ。追い詰められてからやる気を出すようなやつなんて」


華山

「きっかけが必要だったんだろ。アイツの評価なんてどうでもいいさ。お前はどうだ? 何か進展はあったか?」


桐邑

「…後でチャットで話す」


桐邑は自身の席へ戻った。あいつは元傀儡と連絡を取り合っている。故にこういった事実があったことを知ることが出来た。俺は、深郁の姉に想いを寄せていた。仲も良かった。しかしあいつは俺に相談することなく勝手に計画を進めて転校させられる羽目になった。あまりにも愚かで哀れだ。1人で突っ走るなんて。生徒会長はそこまで強制力がない人物だと知らなかったからか。だがその事実があったからこその今だ。悠郁の無念を晴らすために被害者の会を募った。必ず成し遂げる。やつの、琥珀の腹を明かしてやる。


雲母

「…」


雲母は廊下でしゃがみこみ聞き耳を立てる。どうやら華山は誰かにやられて気絶していたらしい。本人はそこまでその事に気を掛けている訳ではなさそうだ。法助? 傀儡…? どう言った話しだ。華山は琥珀にやられたのでは無い? それを何故桐邑と華山が? クラスで何かあれば琥珀に連絡をするように言われている。しかしこの間のことがあってから至極強烈に琥珀に対して嫌悪感を抱いている。恐ろしい、おぞましい、気持ちが悪い。自身から接触したい気持ちは更々ない。正直法助を目の前で蹂躙して無理矢理接吻を行った琥珀に同じ以上の報復をしてやりたいと思っている。きっとこのことを琥珀に話すべきでは無いだろうし、私から首を突っ込んでいい話でも無いかもしれない。教室に入れば華山の元へ向かう。


雲母

「華山さん」


華山

「…うん?」


雲母

「一時限目、遅刻されたので遅刻理由を書いて職員室へ提出してください」


雲母は小さな用紙を渡す。


華山

「チッ、めんどくせぇな。…了解」


雲母は自分の席へ戻った。以前、私に執拗な嫌がらせを行ってきたクラスメイト2人が転校させられた。恐らくは先生か他の生徒が学級内アンケートで報告したのだろう。そう思っていたのだが、桐邑の姉、悠郁は私と誰かが関わるとその人に不幸が起こると言ってきた。何が何やら分からなかったが、一月もしない内に悠郁は転校してしまった。私は特に何かされたわけではなかったものの、その事があってから自分から桐邑深郁に接触することは控えている。もしかしたら自分の所為でそうなったのではないかと思っていたし、何かしらの感情を抱いているのは間違いないのだから。

自分と委員会のペアであったクラスメイトがいた。周囲からは仲良しカップルと囃し立てられたりもした。そこまでの関係ではなかったものの、何かあれば一緒に行動もしていた。暫くすれば家庭の事情という理由で転校してしまった。今ならわかる。【恐らくは裏で琥珀が糸を引いている。】それからは琥珀に自分は1人で作業をするように言われている。多すぎる雑務などは自分と他が分担して処理するから命じた仕事をするようにと。

考えてみればおかしいことだらけだ。このまま何事もなく生活していれば自分も法助も不幸になってしまう。それにこれ以上法助に辛い想いをさせる訳にはいかない。私は法助と一緒にいたい。お話して、ご飯を食べて、一緒に帰りたい。休みの日は一緒に遊んで、ダンスの練習して、絵をかいてもらいたい。…したいことは沢山ある。だが今の自分にはそれが叶わない。このままただ指をくわえている訳にはいかない…。


翌日。


華山が朝練を終えて校舎へ向かう途中突然声をかけられた。


「おい」


華山

「うおっ!あ、あんたか…」


憲助

「裏は取った。お前に協力してやる」


華山

「そうか! あんたが手伝ってくれりゃあきっと上手くいく。恩に着るぜ」


憲助

「僕の名前は水鳥憲助だ。それで、何をすればいい」


華山

「…憲助さんか。後程連絡する」


華山と憲助は連絡先を交換した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ