表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/146

エピローグ――時の封印

「ここよー!」


 車椅子のまま霞がカフェテリアに入ると、翔子が笑顔で手を振ってきた。相変わらずゴージャスな服装が目を引く。


 霞は手を振りかえすと、コーヒーカップを受け取って翔子のテーブルに向かった。



「びっくりしたわ」


 席に着いた霞の顔を、翔子が興味深そうにのぞき込む。


「何が?」


「あんな解決方法があったなんてね」


「ふふ」


 霞は笑った。



 あの後、霞たちは結局「時をつなぐ演算」の結果を確認しないことに決めた。データをそのまま消去する道を選択したのだ。


 その代わり、現代のアシュレイに「未来から来た二つのアシュレイの意志」を突き付けた。


 現代のアシュレイは将来、そのどちらも選ばないことに決めたらしい。

「人類の最大多数の最大幸福」を実現するためには今、決断を下すしかなかったからだ。


 こうして「アシュレイによるタイムマシン開発計画」そして「人類のリアルホロ移管計画」は将来にわたって封印され、未来は予定通り、人類自らの意志に委ねられることになった。



「だけど、いろいろとありがとうね」


 霞がカップに手を添え、翔子に穏やかなまなざしを向ける。


「今さら何言ってるの? お互い様でしょ?」


「本当は知ってたんでしょ? すべて」


「まあね。だけど――」


「なぁに?」


「あなたに出会えてよかったわ」


 名残惜しそうに翔子が言う。霞は笑顔で答えた。


「わたしは嫌だったけどねー」


「本当に天邪鬼ねー」


「まったくね。誰に似たのかしら?」


 うそぶきながら翔子を見る。彼女には霞の言葉の意味は通じなかったらしい。


(自分自身の未来のことは知らないのだろうな)


 そう思う霞の前で、翔子は席を立った。


「じゃあ私、そろそろ次に行くわね」


「まだ安定してない時代を監視する任務が残ってるんだ? また会えるといいね」


「そんなこと絶対ないってわかってるくせに」


「あら、意外とそうでもないかもよ?」


 霞はコーヒーを飲み干すと、立ち去る翔子に手を振った。心の中で


(わたしのこと、お願いね。お母さん)


とつぶやきながら。そして自分もカフェテリアから出て行く。庭では玲が待っているはずだ。



(さてと、なんて言ってやろうかしら)


 そんなことを考えながら、霞は玲の背後に忍び寄った。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ