表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/35

第33話 悪役令嬢、理解する。

 


 “改名“:“ホワイトアウト“



 白聖教、総本山(ソウホンザン)大聖堂(ダイセイドウ)内にある礼拝場(レイハイジョウ)

 そこは、大聖堂(ダイセイドウ)(オオ)うほどの吹雪(フブ)見舞(ミマ)われていた。


 その吹雪(フブキ)の中では、視界がすべて白で()()くされ、まさに"ホワイトアウト"の世界となっている。


 「・・・」


 その中心に、元凶(ゲンキョウ)である教祖ノーバスト・スノーホワイトが(タタズ)んでいた。



 「なん、で、 あり、得ない、」


 白い世界に、赤い絵の具が(アフ)れ、ぶち()けられる。


 ノーバストの(ムネ)には、長い針が4本生えていた。


 「残念だったな。

  ワシを殺せる可能性"は"あった。」


 針が抜かれ、ノーバストは地面に(クズ)れ落ちる。


 {嗚呼(アア)、ジャッチス様、申し訳ございません。

  先に、向こうで、待っています。}


 ホワイトアウトの中、なぜ人型の()、"キトス・ブラック"は、ノーバストの位置が分かったのか?


 それは、()特殊(トクシュ)索敵(サクテキ)能力(ノウリョク)にある。


 ()は、人が()き出す二酸化炭素や温度を察知(サッチ)することができるのだ。


 さらにその察知(サッチ)能力(ノウリョク)は、拡大(カクダイ)勘違(カンチガ)いによって強化され、サーモグラフィーカメラのように正確である。


 そのため、温度が(ヒク)かった分、逆に分かりやすかったと言える。



 しかし、


 「ち、眠い、

  まだ思考がぼやける、」


 ダメージは残っていた。


 ()もった雪が溶け、水になり、蒸発(ジョウハツ)して急激(キュウゲキ)消滅(ショウメツ)していき、

 キトスは、そんな地面に(ヒザ)をつく。



 まだ思考がボヤける、そのキトスの後ろに、

 急遽(キュウキョ)、人影が(アラワ)れた。


 "ザンッ!"


 コバルトグリーン色が(カガヤ)くフルアーマー、カルトである。


 カルトが剣を斜めに()り下ろし、キトスの細い体を分断(ブンダン)させていた。


 {手応(テゴタ)えが!、無い!、}


 しかし突如(トツジョ)、キトスの姿が再び消えていたのだ。



 キトスの改名の能力は、大きく分けて3つある。

 ・()と同じような能力

 ・動いている間、認識(ニンシキ)されない

 ・"意識された攻撃(コウゲキ)"を受けない



 カルトの攻撃の影響(エイキョウ)を受けなかったのは、3つ目の能力、"意識された攻撃"を受けないというものであった。



 {馬鹿者が!、

  たかが支部長クラスの小僧(コゾウ)が!、ワシに(カナ)うと思ったか!、

  死に(サラ)せぇぇえ!}


 カルトの改名:フルアーマーは、この世界最強の防御力(ボウギョリョク)(ホコ)っていると言っても過言(カゴン)ではなく、その改名を発動し、正面からまともに戦い、引き分け、()かれることはあれど、負けることはないほどである。


 しかし、完璧(カンペキ)に身を守れる(ヨロイ)というわけではない。

 そもそも、完璧(カンペキ)に身を(カク)(ヨロイ)は、身動きが取れなくなってしまうだろう。


 その為に、"隙間(スキマ)"が必ず存在していた。


 その中でも必ず存在しなければならない、

 視界を確保する為の頭部鎧の穴、


 そこへキトスの針が2本、深々と突き()さる。





 場所は変わり、王城の"王座(ギョクザ)の間"へ移る。


 そこは規模(キボ)異常(イジョウ)で、無駄(ムダ)に広大な空間だった。


 まるで初詣(ハツモウデ)連想(レンソウ)させる太い列が(チョウ)のように曲がりくねりながら、永遠に伸びていたが、

 "ブラック・ワスプ"の"4大黒元"が第1席、ハイヴ・ブラックが姿を現した事によって避難し、今では閑散(カンサン)としている。


 そして国王ジャッチス・ホワイトは、"改名":"時枝(トキエダ)(マサル)"によってハイヴを思考(シコウ)停止(テイシ)(オチイ)らせた。


 さらにジャッチスは、ハイヴの頭部を切断(セツダン)し、(ハチ)の化け物であったハイヴを倒したのだった。



 しかしそれでもジャッチスは油断せず、ハイヴの思考を止め続ける。


 やがて地面に倒れたハイヴの痙攣(ケイレン)が止まり、完全に動かなくなるまで思考を停止させ続けた。



 そして、もう良いだろうと、思考停止が解除した瞬間、ハイヴの体は(クズ)れた。


「「「「!?」」」」


 さらにそれは、ただ(クズ)れたわけではなかった。


 無数の黒く小さな生き物、それは黒い(ハチ)である。


 黒い(ハチ)たちとなったハイヴの体は、ジャッチスに向かって飛び、その途中で再び一塊(ヒトカタマリ)になっていく。


 その(カタマリ)は人型となり、再びハイヴを、人型の(ハチ)の化け物として再構成(サイコウセイ)した。


 「流石に強いね。」

 ハイヴは何が起こったのか理解できていなかったが、それでも爪をジャッチスへ向けた。


 "カッ!!"


 だが、再びのフラッシュ。

 ジャッチスは、自分に向かって来たハイヴの思考を再び止めた。


 ハイヴは(ウツロ)な表情で攻撃の手を止める。

 思考は止めても、無意識の行動はできるようで、飛んでいたハイヴは地面に降り立ち、ぼんやりと突っ立っていた。


 もし無意識な行動ができなければ、ジャッチスが能力を発動し続けているだけで、相手は呼吸ができず窒息死(チッソクシ)するだろう。


 「やはり、倒せていなかったか。」

 ジャッチスは想定していたようで、復活したハイヴを目の前に、そう(ツブヤ)いた。


 ミースたちは動揺が続いたが、ジャッチスは再び剣を(カマ)え、慎重(シンチョウ)にハイヴに(セマ)った。


 {私の能力は有効。

  "人"ではなく"(ハチ)(カタマリ)"、という"(アツカ)い"か、なるほど。

  まだマシの方だな、}


 何かに気付いたジャッチスは、再び剣を(ヒラメ)かせ、ハイヴを胴体(ドウタイ)で真っ二つにした。


 「・・・ぐふッ!?」


 しかし、再び倒れるハイヴと、圧倒的に優勢(ユウセイ)だったジャッチスも(ヒザ)をつく。

 それだけでなく、ジャッチスは血を()き、明らかに具合が悪い様子だった。


 「なんだと。」

 ジャッチスも想定外だったようで、自分が()き出した血を見て驚愕(キョウガク)する。


 「ジャッチス様!!」


 (タミ)たちを避難(ヒナン)させている王家(オウケ)直属(チョクゾク)近衛(コノエ)騎士(キシ)、“ホワイトホールナイツ”が、かなりの距離を置きながらジャッチスの異常に気付き、声を上げた。


 「来るな!

  前世待ちで対処(タイショ)する!」


 血を()きながらジャッチスは指示を出す。


 {今回の犠牲者(ギセイシャ)は、私一人だけで良い、}


 ジャッチスから(ハナ)たれる白い光が()らぎ、思考停止が解除(カイジョ)されたのか、再びハイヴは(ハチ)に分かれ、(ヒザ)をつくジャッチスの前で再構築される。


 「冷や冷やだよ、

  だけど!、

  私の勝ちだ!」

 ハイヴはジャッチスを見下ろし、そう言い切った。


 「なぜ、そう言い切れる?」

 ジャッチスは不服(フフク)そうにそれを見上げる。


 「ジャッチス王、私達の1番の脅威(キョウイ)は君だからだ!

  君がやられた以上、私に負ける要素は無い。

  冥土(メイド)土産(ミヤゲ)に教えてあげよう。


  私の血に触れた者は死ぬ。

  そして、2回“間接的”に触れても死ぬ。


  君なしで逆にどう勝つのか知りたいくらいだ。

  …最後の言葉があったら聞くが、どうする?」

 ハイヴは勝ちを確信し、ジャッチスが死ぬことを説明した。


 「ずるい能力だ。」


 「それはお互い様、」


 "カッ!!"

 フラッシュ、

 ハイヴの動きが止まる。


 「実質チート複数(フクスウ)()ちが何を言う。

  …と、言うことだ、ミース。

  “後は頼んだ”。」

 ジャッチスはここで唐突(トウトツ)にミースに()る。


 「ちょ、」

 ミースが何かを言う前に、ジャッチスは立ち上がりハイヴへ剣を振り上げた。


 {死ぬと言っても案外(アンガイ)猶予(ユウヨ)があるな。

  魔法で無理矢理動かしているせいもあるか。

  出来れば相打ちに持って行きたい。

  後輩にもかっこいい姿を見せたいしな。

  …すまんな、ノーバスト、先に行く。}


 そして、



 切る、切る、切る、切る!


 ジャッチスは剣を(ヒラメ)かせ続け、ハイヴを細切(コマギ)れにする勢いで斬り続けた。


 充血(ジュウケツ)吐血(トケツ)し、ハイヴを切り(キザ)むたびに筋肉が異様(イヨウ)(キシ)み、具合の悪さが増していく。


 常人ならば、3撃目の剣の攻撃で動けなくなり、死んでいた。


 だが、ジャッチスは無理矢理(ムリヤリ)魔法(マホウ)で体を動かし続ける。



 切る、切る、切る、切る!!



 もはやジャッチス自身の肉体は死んでいた。


 それでも、



 切る、切る、切る、切る!!!



 ハイヴの四肢(シシ)はもちろん、人体の関節(カンセツ)の数以上に切断(セツダン)され、地面に血と共に散らばり、触れれば死ぬ血の海を作り出した。



 ジャッチスは突如(トツジョ)として動きを止め、血濡(チヌ)れた地面に剣を突き()し、片膝(カタヒザ)をついた。


 その視線はまだハイヴを(トラ)えていたが、ジャッチスはそのまま動くことはなかった。


 ・・・


 そして、無情にも黒い(ハチ)()う。


 ハイヴは、まだ生きていた。

 {"改名"中でこんなに死を身近に感じたのは、初めてだ、}


 そのまま再びハイヴが再構成されると、


 思われた。



 (ハチ)が集まるその中心を、


 白い光の手が()()ける。



 {何!?ッ、}

 ハイヴは(オド)き、(ハチ)達が目に見えて動揺(ドウヨウ)する。


 その白い手はミースから伸びていた。

 「こういうことでしょう!」


 そして、その白い手の(ヒラ)には、1匹の(ハチ)(ニギ)られている。


 その(ハチ)は他の(ハチ)と違い、一回り大きい(ハチ)だった。

 女王蜂(ジョウオウバチ)だ。


 明らかな弱点である。

 そして女王蜂(ジョウオウバチ)(ニギ)(ツブ)され、女王蜂(ジョウオウバチ)に集まろうとした(ハチ)たちは霧散(ムサン)した。



 しかし、まだだった。


 行き場を失った(ハチ)たちは、ミースやアルマ、イノセスに殺到(サットウ)する。


 「ちょちょちょ!」

 「っ!」


 1度刺されれば死ぬ(ハチ)たちに、ミースとアルマは過剰(カジョウ)気味(ギミ)(アツ)結界(ケッカイ)()って(フセ)いだ。


 {最後の悪あがき、

  って、訳じゃないわよねー、}


 ミースたちが(ハチ)たちに気を取られている(スキ)に、ハイヴは再び人型を再形成していたのだ。

 「まさか、"(カク)の1つ"を的確(テキカク)(ツブ)してくるとは、恐ろしいよ。」


 {どの口が!}

 ハイヴはミースを警戒(ケイカイ)しながら言葉を続け、その言葉に思わずミースは、脳内でツッコミを入れる。


 「さて、私の前に、王ジャッチスは倒れた!

  これより、"ブラック・ワスプ"がこの地を支配する!

  まず黒髪を(ナイガシ)ろにした分、優遇(優遇)させる。

  白髪から黒髪を中心にした政治(セイジ)を変える。

  賛同(サンドウ)してくれるなら、君たちのことは見逃(ミノガ)しても良いぞ。」


 ハイヴは勝利宣言(ショウリセンゲン)し、ミースたちに降伏(コウフク)(ウナガ)した。



 その勝利宣言(ショウリセンゲン)(アキ)れながら聞いていたミースは、ふと思う。



 {・・・強すぎる、"黒髪全員"こうなのかしら?

  ・・・"黒髪全員"


  ・・・ッ!?}



 それは、現状を(フク)めた3度の黒髪との遭遇(ソウグウ)経験(ケイケン)から生まれた、ごく当然な推測(スイソク)だった。


 しかし、そのふっと()いた推測(スイソク)は、すべての物事を(ツナ)げ、

 ()み合わせ、

 ミースの頭の中で世の中の真の形を(ミチビ)き出した。


 「時間をください!」


 ミースは咄嗟(トッサ)に、ハイヴへ考える猶予(ユウヨ)を求めた。


 「良いよ、でも時間をかけ過ぎたら殺すから。」

 ハイヴは何故か、それを受け入れる。


 「ありがとうございます。」

 ミースは礼を言い、深く考え始めた。


 しかし、ミースが深い思考に(モグ)る前に、アルマの声が引き上げる。


 「聞きたいことだらけだが、ミース、お前は"前世の記憶"があるな?

  どうするつもりだ?」

 アルマはハイヴを警戒(ケイカイ)しながらも、状況についていけず、ジャッチスから後を(タク)されたミースの判断を聞いた。


 「お父様も、少し待ってください。」

 そんなアルマを雑にミースは手で制し、今度こそ深い思考へ(モグ)る。


 そしてミースは、ハイヴのことではなく、気付いてしまった真実について考えを(メグ)らせていた。


 {あり()ない、

  いや、(ミト)めるべき…ね。 }



◇◇◇


 一体なぜこの世界で黒髪が差別を受けていたのか?

 邪悪(ジャアク)だから?

 美醜(ビシュウ)国柄(クニガラ)宗教(シュウキョウ)歴史(レキシ)人種(ジンシュ)

 はたまた利権(リケン)


 実際の理由は、それほど複雑(フクザツ)ではない。

 むしろ(オソ)ろしく単純(タンジュン)である。


 "強すぎた"


 ただ、"強すぎた"のだ。


 ミースは、これまでに黒髪の3人と出会い、

 その3人全てが国を()るがすほどの力を持っていた。

 3人中、3人だ。


 全ての黒髪にそんな力があるわけではないにしろ、

 むしろ生まれてくる確率が低くても、

 人数差が意味を持たない化け物が定期的に生まれてくる。


 そして彼らは、その力を使わないでいるのか?


 そんな力があって使わない方がおかしいだろう?


 そして、人が大勢死ぬ。


 故に、黒髪を異端(イタン)とし、何の(ツミ)もなくとも処分(ショブン)しなければならなかった。


 そして1番の"問題"がここにある。


 平等(ビョウドウ)(ウタ)う"ミース"が、差別主義者(サベツシュギシャ)認識(ニンシキ)していた彼らと同じ"結論(ケツロン)"に(イタ)り、行動していたのだ。



 自分が他人を"差別"していた。



 その事実を受け入れるのに、彼女は時間がかかったのだ。


◇◇◇



 {はぁ、黒髪は異端(イタン)で"邪悪(ジャアク)"、ね。

  少なくとも"私"とハイヴはそうかもしれないわね。

  もう、"同じ間違い"はしないわ。

  "平等な世界"のために、}


 ミースは約2分ほどで考えを(アラタ)め、気を引き()めた。


 そして、ようやくハイヴのことに移った。


 「お父様、頼みたいことがあります。」

 ミースは、アルマに小声で声を()ける。


 「何でも言え、」

 アルマはハイヴを見据(ミス)え、耳を(カタム)けた。


 「私は?、 何かできない?」

 アルマへ指示を出す前に、今まで存在感(ソンザイカン)のなかったイノセスも声を上げた。


 「私とお父様を守って、」

 ミースは、イノセスに簡潔(カンケツ)に答える。


 「任せて!」

 イノセスはミースに(タヨ)られ、こんな状況でも(ウレ)しそうに了解(リョウカイ)(シメ)した。



 ・・・


 ミースは、アルマへも指示を終え、再度、ハイヴへ向き直る。


 {どんなに強い能力だろうが、対策できれば倒せる。

  それに本気も出すしね、}


※備考


 ジャッチス・ホワイト VS ハイヴ・ブラックについて


 結果としてジャッチスが敗北しましたが、この戦いは運勝負であり、ハイヴをあと少しで倒せていました。


 ハイヴは本文にある通り、女王蜂(ジョウオウバチ)を核として生きています。

 厄介な所として、その核が体内に複数あり、全て(ツブ)さなければハイヴを倒せない所です。

 そしてハイヴの武器である間接的に2回、直接1回触れれば死んでしまう血がそれを(ハバ)むのですが、即死はしません。

 

 ジャッチスの勝ち筋としては、ミースへ(アト)(タク)(ヒマ)(ケズ)り、試行回数をとにかく増やす事でした。


 もし核を(ツブ)し切れた場合、ハイヴは死に、能力が解除され、

 ジャッチスが最後に立っていた事でしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ