第三話
先生は階段を登っている時、所々シャッターを閉めていた。
そのお陰か、足音は下の階で止まっていた。
「みんなを入れてあげないんですか?」
「君はどう思う?」
「私は‥‥先生さえいれば‥‥」
「僕もだよ」
「えっ?」
「気付いていないとでも思った?」
「‥‥はい」
先生が私の頭をポンとした。
私の胸がキュンッと音を立てた。
先生が窓の外を見ている。
「あれってやっぱりゾンビですよね」
「そう見える?」
「はい」
明らかにゾンビだ。
バイオハザードだ。
逃げ遅れた生徒達が食べられている。
それを冷めた目で見る先生。
(先生の横顔かっこいい)
私はロッカーが校庭になければ、ちゃんと教室にあればと後悔していた。そうすれば今頃先生と焼き豚を食べていたのに。
「これから私たちどうなるんですか?」
「君は心配しなくて大丈夫だよ、僕が守るから」
(先生‥‥かっこよ)
外を見るのも飽きていた。
私と先生は床に座り、学校中に響き渡る悲鳴を静かに聞く。
先生は自分の着ていた上着を私にかけてくれた。
「私、寒くないですよ?」
「僕が暑くてね、持っていてくれる?」
「分かりました」
先生の匂い、温もり、なんて心地いいんだろう。
私はあまりの心地よさにうっかり眠ってしまっていた。
夢の中で私は先生とお花畑にいた。
お姫様抱っこをされ、おでこにキス。
夢なのに幸せだ。